フリーランスユニオンが設立/東京●安心して働くことのできる社会へ
2022年5月26日、フリーランスとして働く人々の連帯と助け合い、そしてフリーランスの労働組合の設立・運営を支援することなどを目的として、全国団体「フリーランスユニオン」が発足した。
フリーランスユニオンでは、ウーバーイーツユニオンやヨギーインストラクターユニオン、ヤマハ音楽講師ユニオンのメンバーが有志として参加し、共同代表を努める。これらのユニオンは、近年広がってきたフリーランスの人々の労働組合である。ウーバーイーツユニオンやヨギーインストラクターユニオンはそれぞれ、「自分たちは労働組合法上の労働者である」として、会社側に労働条件に関する団体交渉を求め、労働委員会で争っている。
なお、フリーランスユニオンは、これらのユニオンの上部組織ではなく、任意団体として、フリーランスとして働く人々の連携の場を目指す、としている。
設立記者会見で発表された「フリーランスユニオン設立宣言」には、次のように書かれている。「現在、私たちフリーランスは、一律に自営業者とされ、法的保護がありません。他方で、雇用で働く場合には、社会保障を含む労働法上の保護がすべて及びます。しかし、現場で働く私たちは、独自の事業設備を有するわけでもなく、誰かを雇用しているわけでもありません。実際には、発注者や取引先の指示の下に労務を提供して対価を得ている場合がほとんどです。雇用の働き方と大きな違いはありません。それにもかかわらず、『自営業者』扱いされるだけで、雇用で働く場合に受けられる保護が全く受けられないのです。」(フリーランスユニオン設立宣言)
近年、政府は「多様な働き方」を掲げ、フリーランスとして企業から業務受託する働き方を推進している。その一方で、フリーランスに関する法的保護や社会保障はきわめて不十分なまま放置されている。社会保険料などの負担を回避するために、実態は雇用労働なのに業務委託の形式を偽装するといった企業も後をたたない。
フリーランスユニオンは、設立と同時に政策提言「フリーランスが安心して働くことのできる社会へ」を発表した。
このなかで、労災保検・失業保険・傷病手当などに相当する保護の実現、フリーランスに対するハラスメント防止措置、出産や介護に伴う休業制度の構築などを提言している。とくに労災補償については、特別加入制度では加入できる業種・職種が限定されており、労災保険料も全額自己負担のため、現状では不十分であると指摘している。また、フリーランスユニオンは、フリーランスが結成した労働組合が企業側から労働者性を否定されて団体交渉を拒否される現状を踏まえ、「労働組合法上の労働者性」(労働基準法の労働者よりも広い概念で、団体交渉権あり)について、次のように提言している。「労働者性の立証については、立証責任を『企業の側』に課し、企業の方で働き手が『自営業者であることを立証できた場合』にのみ、働き手を自営業者と扱うことを求めます。このような抜本的政策をとらない限り、契約形態の悪用の流れはなくなりません。」
今後、フリーランスユニオンでは、SNSやクラウドファンディングなどを活用しつつ、フリーランスとして働く人々が交流し、現場で抱えている問題な共有して、解決に向けた具体的な連携や政策提言などを進めていく予定である。
文/問合せ 東京労働安全衛生センター
安全センター情報2022年10月号