フリーランス俳優の安全対策/芸能従事者協会●精力的なアンケート調査

一般社団法人日本芸能従事者協会は精力的に芸能従事者実態調査アンケートを実施しており、③「労災と安全衛生」(2022年4月4日公表)、⑥「安全衛生の取組み」(8月3日)も含まれている(https://artsworkers.jp/category/questionnaire/)。

③「労災と安全衛生」にはオンラインで267件の回答があり、仕事の現場で事故に遭いケガをしたことが「ある」が実演家で25.9%、スタッフで25.4%。コロナ感染事例も多かったようだ。仕事の現場への行き来の間に事故(通勤災害)に遭いケガをしたことが「ある」が実演家で7.9%、スタッフで10.9%であった。

治療費を払ったのは、自分が38.5%、所属事務所3.4%、制作会社7.2%、保険会社12.5%、特別加入保険2.9%、わからないが47.6%。万一に備えての対策としては、特別加入が11.7%、民間保険51.1%、貯金25.8%、何もしていない32.6%、その他5.3%。

仕事上安全に関して不安に思ったことが「ある」が88.5%で、その内容は労働時間が73%、食べ物25.3%、人間関係45.1%、ハラスメント45.9%、居場所の環境52.4%、危険な作業57.5%。

仕事場に更衣室が「ないことがある」が12.3%、専用のトイレが「ないことがある」が38.4%。膀胱炎になったことが「ある」が19.1%。仕事の現場の食事が「いつも規則的」は5.3%にすぎず、で食中毒になったことが「ある」が9.1%。

仕事中に寝不足で困ったことが「ある」が19.8%。徹夜で仕事をしたことが「ある」が77%。寝不足が原因で事故やケガをしたことが「ある」も6%あった。

仕事中にハラスメントを受けたことが「ある」が48.3%。仕事が原因でこのままでは生きていけないと思ったことが「ある」が36.8%。
ケガや事故防止のため注意を受けたことが「ある」が52.7%。安全衛生の教育(勉強会等)を受けたことが「ある」が35.1%。

芸能の仕事での事故の原因はなんだと思うか、安全衛生について思うこと、国への要望等という問いにも多くの回答が寄せられていて興味深い。

⑥「安全衛生の取組み」にはオンラインで214件の回答があり、健康診断の受診(受けてないが37.9%)、健康診断助成金、ストレスチェック(同前93%)、就業時間の把握(同前65.9%)、長時間就業にならないルール(同前79.6%)等の状況に関する結果と、文化芸術・芸能業界を快適な職場にする取り組みについて思うこととして寄せられた意見が報告されている。

日本芸能従事者協会は、これらのアンケート調査結果に基づき、フリーランスの労働現場は長時間労働を防ぐ仕組みが整っておらず、寝不足によるけがや精神疾患にかかるなどの労災につながりかねないとして、結果を厚生労働省に報告し、対策を求めたと言う(8月9日NHK報道)。

この報道は、「現場の状況をしっかり把握しながら、安全衛生の問題などで芸能従事者の方たちが職を離れるようなことがないようにしていきたい」という同協会の森崎めぐみ代表理事の話も伝えている。

安全センター情報2022年10月号