2022年国際労働会議に向けた国際労働衛生委員会(ICOH)声明:安全衛生は労働における基本的原則である-2022年5月27日
国際労働機関(ILO)と国際労働衛生委員会(ICOH)は、2017年に労働関連傷病によって280万の人々が死亡したと推定している。2022年2月のICOH会議で発表された最新のデータと推計は、労働関連疾病によって引き起こされる犠牲は年間230万の死亡事例から260万近くに、合計損失は290万に増加していることを示している。
また、年間推計では、2020年に約6万のCOVID-19労働関連死亡が発生し、2021年にはその数が3倍に増加すると予測された。イタリアの補償データによると、職場で感染したCOVID-19の割合は、報告された感染者数の20%近い。これらのCOVID-19感染は、曝露の高い医療労働者のみで発生したわけではなく、この数字には、建設現場の塗装工や清掃員、運転手、鉱業・製造業・食品産業のいくつかの産業部門労働者、教師やデイケア労働者、サービス部門労働者など、COVID-19感染に曝露するリスクが著しく増加した、多くの職務・職業が含まれている。
負傷者数も減少しておらず、とりわけ、ヨーロッパで明らかに示されたように、災害によって引き起こされる世界の永久及び一時的障害の数は、これまで推計されたよりもはるかに多いと予測されている。
こうした否定的な影響は、膨大な社会的・経済的負荷を生み出す。ICOHは、労働安全衛生(OSH)慣行の不備による経済的負荷は、世界の国内総生産(GDP)の5.4%、毎年4千億米ドル近く相当に上昇したと推計している。この回避可能な生産損失-またはGDP損失-は、世界の最貧国130か国のGDPをカバーすることができる。
その社会的価値と影響は測り知れない。
倫理的かつ持続可能な開発目標(SDGs)の観点から、食料、住宅やインフラ、学校、医療提供者、社会保障など、われわれが自由に使える事実上すべてのものは労働力によって生産されていることを肝に銘じる必要がある。社会的正義とディーセントで安全な労働を促進する必要性は、国連(UN)のSDGsにも反映されており、また、SDGs3(良好な健康と福祉)とSDGs8(ディーセントワークと経済成長)に限られているわけではない。労働力は、事実上、すべてのUNのSDGsと関わりがある。
「労働における安全と健康は健全な経済方針であるだけでなく、基本的人権のひとつである…」(コフィ・アマン前UN事務総長)
2020年の[第110回]国際労働総会の、ILOの労働における基本的原則及び権利の枠組みへの労働における安全と健康の包含に関する報告書VIIで示された決議案に対する主なコメント:
- ICOHは、ILO条約C155及びILO条約C187を基本的なものとして言及することを非常にうれしく思う。
- ICOHは、労働衛生サービスに関するILO条約C161も基本的なものとして掲げることを強く助言する。また、労働安全衛生に関する30のILO条約すべてを、全体として強力に推進することが検討されるべきである。
理由:
- 健康リスクは、労働者の生活と福利に対する脅威-死亡、疾病と障害-の主要かつ増加しつつある構成要素である。
- 安全衛生に関する要求事項や勧告は、対応するサービスやフォローアップ活動がなければ、労働者と使用者双方の関連する措置の実施を支援する仕組みがない場合には、しばしば「死文化」したままとなる。
- ILO条約C161に規定される労働衛生サービスは、最初は控えめで基本的な労働衛生サービスからはじめ、その後、段階的に改善することによって、徐々に確立することができるだろう。普遍的な労働衛生の適用が、世界の労働者にとって緊急に必要である。
- 決議の文言は、労働における安全と健康のすべての主要な構成要素-リスクにさらされている者の保護、ハザーズとリスクの予防と準備、健康と安全の促進、すべてのレベルにおける実行可能性-を網羅すべきである。