【ロシア軍侵攻以前のウクライナにおけるアスベスト禁止をめぐる動き②】アスベスト政策をめぐるウクライナの主権をめぐる闘い-2021年9月20日 アスベスト禁止国際書記局(IBAS)
夏休みが終わり、ウクライナの国会議員らは国会に、そして、欧州連合加盟の条件のひとつとして禁止することを公約に掲げた、アスベストをどうするかという難題に戻ろうとしている。1年前(2020年9月20日)に、「公衆衛生制度について(第4142号)」と題した法案がまとまり、2021年2月24日に国会の第1読会で採択された。法案第27条は次のように言っている。
「その種類を問わずに、アスベスト及びアスベスト含有製品・物質の製造及び使用は、あらゆる施設における技術工程及び建設・設置作業の実施において禁止される。アスベスト及びアスベスト含有製品・物質の安全対策及び有害な影響に対する防護は、州の衛生規則で定められる。」
アスベストを禁止するウクライナの計画に対する反対は、カザフスタンの関係者がロシアの同盟者と緊密に連携して組織的に行われてきた。アスベスト擁護の攻撃の表の顔には、2021年8月6日にアップされた、アスベスト禁止がもたらす悲惨な経済的・社会的影響を警告した記事などがある。その内容には、以下のような、誤解を招く誤った記述が含まれていた。
・「…それ以下であれば(アスベスト)疾患の発生があり得ない閾値が存在する。」
・「…クリソタイル及びクリソタイルを含有した高密度物質については、労働者と公衆に対する大きなリスクなしに、管理された使用が可能である。」
・「このアプローチは…アスベスト訴訟を専門とする法律事務所の出現につながった。実際、彼らは、アスベスト禁止・除去政策の主な受益者の一人であり、メディアでアスベスト恐怖症を扇動・刺激している。」
・「不幸なことに(アスベストを禁止するという)ウクライナの意図した選択は、科学的アプローチ、データ分析、手順や基準に基づいていない。それは、スローガンとこの問題に対する不十分な理解に基づいたものである。」
ウクライナとカザフスタンの代表の間で過去数週間の間に行われたハイレベルな会議と議論の裏側で、アスベスト産業のロビイストたちに夏休みはなかった。2021年6月の二国間交渉には、ウクライナのデニス・シュミハル首相、カザフスタンのダルカン・カレタイエフ駐ウクライナ大使、カザフのバヒト・スルタノフ貿易・統合大臣が出席していた。
2021年6月18日にキエフで開催された第14回国際経済協力委員会に参加したスルタノフ大臣は、ウクライナがアスベストを禁止すれば、「われわれの(アスベスト)輸出業者『コスタナイ・ミネラルズ』が被害を受け」、カザフの石油のウクライナへの輸出の増加を妨げることになるだろうとはっきり言った。6月19日の投稿で、彼は、「ウクライナには[COVID-19]ワクチンを創る拠点がない」が、カザフの製薬会社にはあると指摘した。これは、カザフスタンからウクライナへのワクチンの輸出は、アスベスト禁止が撤回されるか、少なくとも延期されることが条件であるという暗黙の脅しだった。この件に関するスルタノフ大臣のフェイスブックの最後のコメントは、ウクライナ首相デニス・シュミハルとの広範囲な議論に言及して、これらの会議がハイレベルで実施されたことを補強するものだった。クリソタイルアスベストの問題については「二国間の専門家による協議を行う必要がある」と、スルタノフ大臣はウクライナ首相に話した。6月19日にアップされた同大臣のまとめの部分によると、キエフでの交渉は継続中とのことである。
先週金曜日(2021年9月17日)、テレビ・パーソナリティで作家のセルギ・イワノフは、ウクライナのフェイスブック・ユーザーに、ウクライナの国会議員にアスベスト禁止の延期を迫るカザフ-ロシアのアスベスト陰謀団による致命的な妨害に反撃するよう促した。産業界のロビーは、その目的を果たすために、ウクライナの現状維持と引き換えにカザフの石油を提供して、「国家の恐喝を使っている」と彼は言った。アスベストロビーが恐喝に訴えるのはこれが初めてのことではない。2017年にロシアは、スリランカ政府のアスベスト禁止計画を踏まえて、スリランカからのセイロン茶の全輸入を禁止し、スリランカのアスベスト禁止は無期限延期されて、茶の出荷が再開された。2018年にロシアは、ベトナムにおけるアスベスト含有建材の使用を違法とする2023年の期限を実施することへの報復として、ベトナムの下着の全輸入を禁止すると脅迫した。
イワノフ氏は、彼のフォロワーとウクライナの国会議員に、「ロシア-カザフのアスベストマフィアを容認するのをやめ」、禁止を貫徹するよう呼びかけた。彼の勧告が賢明であることのさらなる証拠が必要であるとすれば、世界保健機関と国際労働機関によって先週発表された92頁の報告書の中に見出すことができる。それは、2000年と2016年の間の職場アスベストがんによる死亡率の世界的な著しい上昇、気管・気管支がんでは30%、肺がんでは17%、卵巣がんでは21%、喉頭がんでは13%、そして中皮腫では82%、を立証している。職業曝露による死亡だけでなく、環境や家庭内での曝露による死亡もあることを考慮すれば、ウクライナがアスベストを早く禁止するほど、その市民がアスベストのない生活を送る権利を享受することができる。
http://www.ibasecretariat.org/lka-fight-for-ukraine-sovereignty-over-its-asbestos-policy.php