【決定版】情報公開で入手した「新型コロナウイルス感染症の労災認定実務要領」(2021.5.11 厚生労働省労働基準局補償課職業病認定対策室長事務連絡)

令和3年5月11日付け都道府県労働局労働基準部労災補償課長殿宛て厚生労働省労働基準局補償課職業病認定対策室長事務連絡「新型コロナウイルス感染症の労災認定実務要領について」

新型コロナウイルス感染症事案の業務上外の判断に当たっては、これまで、令和2年5月1日付け事務連絡「新型コロナウイルス感染症の労災保険給付請求に係る調査等に当たっての留意点について」により、迅速適正な事務処理を図ってきたところであるが、今般、標記要領を作成したので、今後はこれに基づき適切に対応されたい。

目次

第1 新型コロナウイルス感染症とは

1 定義等

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)による感染症を「新型コロナウイルス感染症」(COVID-19)(以下「本感染症」という。)という。
なお、新型コロナウイルスの感染は確認されるが、症状の出現がない無症状病原体保有者で、あっても、原則として入院等による管理が行われることから、感染が確認された日をもって本感染症が発病したとするものである。
また、検査により新型コロナウイルスの感染は確認されないが、症状を有し本感染症が疑われる者であって、本感染症の疑似症患者と医師により診断された場合には、症状出現日をもって本感染症が発症したとするものである。

2 感染経路

飛沫感染が主体と考えられ、換気の悪い環境では、咳やくしゃみなどがなくても感染すると考えられている。また、飛沫などにより汚染された表面からの接触感染もあると考えられている。マスクの着用でも完全には感染を防ぐことはできず、マスクを外しての会話会食などは感染リスクが高くなる。
有症者が感染伝播の主体であるが、発症前の潜伏期にある感染者を含む無症状病原体保有者からの感染リスクもある。

3 潜伏期間

潜伏期は1~14日間であり、WHOによると曝露から5日程度で発症することが多いとされている。このように潜伏期間には幅があるため、感染した日から症状が出現するまでの間には個人差が生じることから、必ずしも発症した順に感染したものとは限らない。

4 感染可能期間

発症から間もない時期の感染性(感染力)が高いことが新型コロナウイルスの特徴であり、感染可能期間は発症2日前から発症後7~10日程度と考えられている。
重症例ではウイルス量が多く、排泄期間も長い傾向にあり、発症から3~4週間は病原体遺伝子が検出されることはまれではないとされている。ただし、この時期まで感染性があるということではない。

5 症状の経過

初期症状は、インフルエンザや感冒に似ている。頻度が高い症状としては発熱、咳や呼吸苦、倦怠感であり、味覚障害や嘆覚障害も確認されている。また、肺炎症状が増悪すると呼吸困難となり重症化すると人工呼吸管理やECMO(体外式模型人工肺)による集中治療を要することとなる。
約80%が発症から1週間程度で軽症のまま治ゆ、約20%が発症から1週間~10日程度で肺炎症状増悪で入院、約5%が発症から10日以降に人工呼吸管理などで集中治療となっている。
なお、発症から1週間程度で軽症のまま治ゆした者には無症状病原体保有者も含まれる。

6 検査の種類

ア 核酷検出検査(PCR法、LAMP法)又は抗原検査
これらの検査は、現在本感染症に感染しているかどうかを調べるものであり、診断に用いられる検査である。この検査で「陽性」と判定された場合は、新型コロナウイルスの感染が確定診断される。
また、検査をした時期や検体の採取方法などで、検査感度に限界があり必ずしも正確な結果が出るとは限らず、「陰性」と判定された場合で、あっても、ただちに新型コロナウイルスの感染が否定されるものではなく、症状や画像診断をもって総合的に感染の有無を判断することになる。

イ 抗体検査
この検査は、体内で新型コロナウイルスの抗体(igM抗体、igG抗体)を検出することにより、過去に本感染症に感染していたかどうかを調べるものであり、確定診断のための検査には指定されていない検査である。

7 病原体診断

核酸検出検査(PCR法、LAMP法)又は抗原検査で陽性と判定されれば、症状の有無に関わらず本感染症と確定診断され、陰性と判定された場合であっても、感染が疑われる患者のうち、臨床的に感染している蓋然性が高い場合は、疑似症患者と診断される。

第2 通達の解説

本感染症の労災補償上の取扱いは、令和2年4月28日付け基補発0428第1号「新型コロナウイルス感染症の労災補償における取扱いについて」(以下「通達」という。[編注:後掲])により示されている。

1 労災補償の考え方(通達の記の1)

本感染症については、労働基準法施行規則別表(以下「別表」という。)第1の2の「六号 細菌、ウイルス等の病原体による次に掲げる疾病」に該当し、6号の1「患者の診療若しくは看護の業務、介護の業務又は研究その他の目的で病原体を取り扱う業務による伝染性疾患」又は6号の5「1から4までに掲げるもののほか、これらの疾病に付随する疾病その他細菌、ウイルス等の病原体にさらされる業務に起因することの明らかな疾病」として認定されるものであるが、通達はその取扱いを本感染症の特性に鑑みて明確にしたものである。
特に6号の5については、新型コロナウイルスは無症状でも感染を拡大させるリスクがあるため、調査により感染経路が特定されない場合であっても、業務により感染した蓋然性が高い場合は、業務起因性が認められるものとして、取扱いを明確にしたものである。

2 医療従事者等(通達の記の2(1)ア)

医療従事者等については、別表第1の2第6号1の取扱いとなり、業務外で感染したことが明らかである場合を除き、原則として労災保険給付の対象となる。
本感染症の感染者が確認される医療機関等に勤務している医師文は看護師等が感染した場合には、業務外で感染したことが明らかである場合を除き、原則として業務上となることはもちろんのこと、感染経路が特定されていない場合や、就労場所に本感染症の感染者が確認されない場合で、あっても、業務外で感染したことが明らかである場合を除き、原則として業務上となる。
また、医療従事者等で私生活での感染が明らかでない場合であっても、潜伏期間中に当該業務に従事していないなど、患者や利用者との接触がない場合等は、業務との関連性は認められないため、「原則として」を記述している。
なお、患者や利用者に本感染症の感染者が確認されない場合であって、患者や利用者との接触時聞が極めて短く、かつ、接触回数も極めて少ない場合は、慎重に判断すること。

3 医療従事者等以外の労働者であって感染経路が特定されたもの(通達の記の2(1)イ)

医療従事者等以外の労働者であって感染経路が特定されたものについては、別表第1の2第6号5の取扱いとなり、業務により本感染症の感染者との接触が明らかに認められる場合には、労災保険給付の対象となる。
ここでいう「感染経路が特定」とは、本感染症の感染者との接触を意味し、保健所が感染経路特定として認めるものだけでなく、保健所が感染経路を不明としている場合であっても、当該労働者と使用者又は関係者からの事実確認により、客観的に本感染症の感染者との接触が認められる場合も該当する。

4 医療従事者等以外の労働者であって感染経路が特定されないもの(通達の記の2(1)ウ)

医療従事者等以外の労働者であって感染経路が特定されない場合については、別表第1の2第6号5の取扱いとなり、本感染症の特性にかんがみ、業務による感染リスクが相対的に高いと考えられる労働環境下で業務に従事し、業務により感染した蓋然性が高く、業務に起因した疾病と認められる場合は、労災保険給付の対象となる。
そのため、業務従事状況や一般生活状況を調査し、医学専門家の意見を踏まえて、業務により感染した蓋然性が高く、業務に起因した疾病と認められるか個別に判断すること。
なお、感染リスクが相対的に高いと考えられる労働環境下での業務として、(ア)「複数(請求人を含む)の感染者が確認された労働環境下での業務」及び(イ)「顧客等との近接や接触の機会が多い労働環境下での業務」を例示している。

ア 複数(帽求人を含む)の感染者が確寵された労働環境下での業務
複数の本感染症の感染者が、同一労働環境下で近接した時期に発症文は発病したことにより、いずれが先に感染したか、または他に共通の感染原因があったかが判断できず、感染経路が明確でない場合を想定している。
このような場合であって、かつ、一般生活状況で感染リスクを伴う行動も評価し、業務による感染リスクが相対的に高いと考えられるときは、業務により感染した蓋然性が高いと認められ、労災保険給付の対象となる。

イ 顧客等との近接や接触の機会が多い労働環境下での業務
小売業の販売業務、バス・タクシーなどの旅客運送業務等、不特定多数の顧客と接する機会が多く、業務による感染リスクが高い場合を想定している。
例示した職種に限られず、顧客や取引先等との近接や接触の機会が多い場合であって、一般生活状況で感染リスクを伴う行動も評価し、業務による感染リスクが相対的に高いと考えられるときには、業務により感染した蓋然性が高いと認められ、労災保険給付の対象となる。

5 海外出張労働者(通達の記の2(2)ア)

感染が流行している国に出張することそのものに感染リスクがあり、出張業務に内在する危険が具現化したものと考えられる場合は、労災保険給付の対象となる。出張先国の感染者数や出張先での業務内容を確認し、業務起因性を判断する必要がある。
なお、感染経路が特定される場合は、通達の記の2(1)イの取扱いとなる。

6 海外派遣特別加入者(通達の記の2(2)イ)

宿泊、食事等も含め積極的私的行為を除いた出張中の行為全体が事業主の支配下にあって業務遂行性が認められる海外出張労働者とは異なり、海外派遣特別加入者については、業務遂行性の範囲は国内労働者と同様であることから、国内労働者に準じて通達の記の2(1)のア~ウの取扱いとなる。

第3 調査事項等

本感染症の業務上外の認定に当たっては、下記調査事項及び「新型コロナウイルス感染症事案(業務災害)の決定の流れ(フロー図1)」を参考にすること。なお、下記調査事項は、原則的な調査事項を示したものであるため、業務上外の判断に当たっては、事案の内容に応じて適宜修正して差し支えない。

1 感染の有無

診療費請求内訳書(5号レセプト)、保健所照会、主治医意見書、保健所が発行する就業制限通知書、宿泊自宅療養証明書、行政機関報道資料等により感染の有無を確認すること。
また、感染の確定診断はないが、感染が疑われる事案については、「新型コロナウイルス感染症の労災補償における取扱いに関する質疑応答集」参考「新型コロナウイルス感染症疑い(検査陰性)事案の当面の取扱いについて」に基づき総合的に感染の有無を判断すること。

2 発症経過

請求書、申立書、主治医意見書等により発症(自覚症状の有無及び内容、症状出現日)及びその後の経過を確認すること。

3 感染経路

保健所又は事業場等が調査した感染経路を確認すること。
また、感染者との接触状況について確認すること。

4 当該労働者の職種

請求書等により当該労働者の職種及び国外の労働者に該当するか確認すること。

5 職種ごとの間査内容

上記4により確認した職種ごとの具体的な調査内容は下記(1)~(3)によること。ここで、本感染症の潜伏期間は1日~14日間とされていることから、発症前の業務内容、行動等の調査については、症状の出現日を発症日とし、発症日を起点として遡った14日間について行動履歴を調査すること。
なお、無症状の場合は、陽性と判定されたPCR検査等の検査日(検体採取日)を起点として遡った14日について調査すること。

(1)医療従事者等(通達の記の2(1)ア関係)

調査に当たっては、請求書、申立書、使用者報告書等により、発症前14日間において、労働基準法施行規則別表第1の2第6号の1の業務に従事しているか否かをまず確認すること。当該業務に従事している場合は、業務において感染者との接触が確認されなくとも、業務外で感染したことが明らかな場合を除き、業務災害として認定されるため、発症前の一般生活状況については、請求書、申立書、使用者報告書の内容から業務以外で感染経路が特定されるか否かを確認することで足りること。
なお、請求書、申立書、使用者報告書等の内容から一般生活において感染者との接触が確認されない場合には、保健所への照会は省略して差し支えない。
一方、請求書、申立書、使用者報告書等の内容から一般生活での感染者との接触が認められ、これによる感染が疑われる場合は、特に、下記イ(イ)の事項について調査し、業務外で感染したことが明らかと判断されるか否かを確認すること。その際、業務上外の判断に当たっては、「医療従事者等の家庭内感染者がいる場合の決定の流れ(フロー図2)」を参考にすること。
クラスター等により複数の感染者が確認された場合の復命書の取りまとめにおいては、様式5-2を活用する等により複数の請求を1つの復命書に取りまとめて復命して差し支えない。

ア 業務に関する事項
① 業務での感染者(疑い含む)との接触等の状況
・接触時期、人数、時間、回数、期間、距離、接触の態様など
・他の労働者や事業場施設の利用者等の感染状況
② 業務内容労働環境等
・当該労働者の業務内容、労働環境
・発症前14日間の業務における行動内容
・事業場施設の利用者等(本感染症患者に限らない)との接触状況

イ 一般生活に関する事項
(ア)通常の闘査事項
① 家族等同居人の感染者の有無
② 一般生活での感染者との接触の有無
(イ)一般生活での感染者との接触により感染が疑われる場合の餌査事項
① 保健所による感染経路特定の状況
② 家族等同居人の感染者の有無
・当該労働者より先又は近接した時期に症状が出現した又は陽性となった家族等がいる場合、感染した家族等の発症時期、感染した家族等の感染経路の特定の有無、感染した家族等との発症前後の家庭内での接触設備の共同使用状況など
③ 一般生活での感染者との接触
・感染者の症状出現日、出現した症状、接触の状況、接触時間、距離、接触時のマスク着用状況など

ウ 医学的事項(主治医)
感染の有無、症状の出現状況、症状経過等の確認を要する場合には意見依頼すること。診療費請求内訳書(5号レセプト)等で感染の有無が確認できる場合には、主治医への意見依頼を省略して差し支えないこと。
① 初診日
② 受診の端緒及び感染経路
③ 自覚症状及び自覚症状の出現日
④ 受診時における他覚所見
⑤ 疾患名及びPCR検査等の検査成績などその診断根拠
⑥治療経過及び治療内容、現在の病状

エ 医学的事項(専門医)
感染の有無の確認を要する場合、感染経路に関して補足を要する場合等には、必要に応じて地方労災医員等専門医から意見を徴すること。新型コロナウイルス感染症疑い(検査陰性)事案について意見依頼する際は、「新型コロナウイルス感染症疑い(検査陰性)事案の当面の取扱いについて」の2(3)を参照すること。

(2)医療従事者等以外
ア 医療従事者等以外の労働者であって、感染経路が特定されたもの(通達の記の2(1)イ関係)

感染経路が特定されたものとは、上記第2の3によること。
したがって、請求書、申立書、使用者報告書等により、労働基準監督署長が、感染経路が業務によるものと客観的に特定できる場合には、業務災害として認定すること。この際、下記(イ)の事項については、請求書、申立書、使用者報告書等の内容から確認することで足りること。
ただし、下記(イ)の事項について、感染者との接触が確認される場合、感染経路の特定については、慎重に判断すること。
また、請求書、申立書、使用者報告書等の内容から、クラスターの発生等により複数の感染者が発生した場合には、発生したクラスター等や感染者との接触の状況を確認し、業務外での感染者との接触がなく、発症前14日間においてクラスター等や感染者との接触が確認されている場合には、保健所が感染経路を特定していなくても、労働基準監督署長の判断により感染経路が特定されたものとして業務災害と認定して差し支えない。この場合、復命書の取りまとめにおいては、様式5-2を活用する等により複数の請求を1つの復命書に取りまとめて復命して差し支えない。
一方、クラスターの発生等により複数の感染者が確認された場合であっても、同一労働環境下で、近接した時期に感染した労働者が複数存在し、当該感染した複数の労働者以外に感染源がなく、誰が最初に感染したのか判明しない等具体的な感染経路を特定することができない場合には、通達の記の2(1)ウ(ア)に該当するか検討すること。

(ア)業務に関する事項
① 業務での感染者との接触等の状況
・時期、人数、時間、回数、期間、距離、接触の態様など
・他の労働者や事業場施設の利用者等の感染者の状況
② 業務内容労働環境等
・当該労働者の業務内容、労働環境
・発症前14日間の業務における行動内容

(イ)一般生活に関する事項
① 家族等同居人の感染者の有無
・有の場合、家族等の発症時期、接触時期、接触時間(期間)、その態様など
② 一般生活での感染者との接触、人との近接や接触等の状況
・一般生活での感染者(疑い含む)との接触がある場合は、感染者の発症時期、接触時期、接触時間(期間)、接触機会、その態様など
・流行地域への渡航歴
・発症前14日間の一般生活における行動内容

(ウ)医学的事項(主治医)
感染の有無、症状の出現状況、症状経過等の確認を要する場合に意見依頼すること。診療費請求内訳書(5号レセプト)等で感染の有無が確認できる場合等には、主治医への意見依頼を省略して差し支えないこと。
① 初診日
② 受診の端緒及び感染経路
③ 自覚症状及び自覚症状の出現日
④ 受診時における他覚所見
⑤ 疾患名及びPCR検査等の検査成績などその診断根拠
⑤ 治療経過及び治療内容、現在の病状

(エ)医学的事項(尊門医)
感染の有無の確認を要する場合等には、必要に応じて地方労災医員等専門医から意見を徴すること。新型コロナウイルス感染症疑い(検査陰性)事案について、意見依頼する際は、「新型コロナウイルス感染症疑い(検査陰性)事案の当面の取扱いについて」の2(3)を参照すること。

イ 医療従事者等以外の労働者であって、感染経路が特定されていないもの(週連の記の2(1)ウ関係)

通達の記2(1)ウの(ア)及び(イ)は、感染リスクが相対的に高いと考えられる労働環境下での業務を例示したものであることに留意すること。
また、業務における感染リスクと一般生活における感染リスクを相対的に評価する際、一般生活における感染リスクが高い行動としては、飲酒を伴う懇親会等、大人数や長時間に及ぶ飲食、カラオケ等遊興施設の利用等、狭い空間での共同生活などが挙げられること。
なお、家族等同居人が感染し、家庭内の感染が疑われる事案の業務上外の判断に当たっては、「医療従事者等以外の感染経路不明事案で家庭内感染者がいる場合の決定の流れ(フロー図3)」を参考にすること。

(ア)業務に関する事項
① 労働環境下での感染者の有無(通達の記の2(1)ウ(ア)の観点)
・有の場合、感染者等との接触状況(感染人数、就業場所での接触の有無、接触時期、接触回数、接触時間、接触の具体的状況、事業場設備空間の共同使用状況など)、感染者の症状出現日、事業場内の感染防止状況(マスク着用の有無、消毒、飛沫感染防止など)
② 業務における顧客等人との接触状況等(通達の記の2(1)ウ(イ)の観点)
・業務内容、業務における顧客等人との接触状況(人数、時間、回数、期間、距離、接触の態様、会話の状況など)、事業場内の感染防止状況(マスク着用の有無、消毒、飛沫感染防止など)
③ 感染者(疑い含む)との接触の有無
・有の場合、接触状況(感染者の症状出現目、出現した症状、接触の状況、接触時間、距離、マスク着用の有無など)
④ 国内の感染者が多い地域への移動の有無
・有の場合、感染流行地域での行動(滞在時の行動調査、滞在時の人との接触の状況など)感染者の推移の比較

(イ)一般生活に関する事項
① 保健所照会による発症前14日間の行動調査
・感染者との接触、感染リスクが高い行動、感染者が多い地域への移動等の有無など
② 家族等同居人の感染者の有無
・有の場合、感染した家族等の発症時期、感染した家族等の発症前14日間の行動調査(飲酒を伴う懇親会等、大人数や長時間に及ぶ飲食、カラオケ等遊興施設の利用等感染リスクが高い行動の有無)、感染した家族等との発症前後の家庭内での接触設備の共同使用状況
③ 一般生活での感染者(疑い含む)との接触の有無
・有の場合、感染者の症状出現日、出現した症状、接触の状況、接触時間、距離、接触時のマスク着用状況など
④ 感染リスクが高い行動の有無
・飲酒を伴う懇親会等、大人数や長時間に及ぶ飲食、カラオケ等遊興施設の利用等の状況(実施日、回数、時間、距離、人数、参加者のうち感染者の有無、感染者有の場合、感染者との接触状況、飲酒の有無、マスク着用の有無、店の混雑状況及び感染防止対策など)
⑤ 感染者が多い地域への移動の有無
・感染流行地域での行動(滞在時の行動調査、滞在時の人との接触の状況など)、感染者の推移の比較

(ウ)医学的事項(主治医)
感染の有無、症状の出現状況、症状経過等の確認を要する場合に意見依頼すること。診療費請求内訳書(5号レセプト)等で感染の有無が確認できる場合等には、主治医への意見依頼を省略して差し支えないこと。
① 初診日
② 受診の端緒及び感染経路
③ 自覚症状及び自覚症状の出現日
④ 受診時における他覚所見
⑤ 疾患名及びPCR検査等の検査成績などその診断根拠
⑤ 治療経過及び治療内容、現在の病状

(エ)医学的事項(専門医)
支給決定、不支給決定いずれの場合も次により地方労災医員等専門医から意見を徴すること。
① これまでの調査結果から、業務、一般生活における感染リスクを相対的に評価し、業務により感染した蓋然性が高いか否か。
② 発症までの時間的経過が、医学的に業務における感染機会との因果関係を認められるか否か。

(3)国外の労働者
ア 海外出張労働者

発症前14日間において、国内に滞在していた期間がある場合には、下記(ア)④、⑤、(イ)①、②についても確認すること。

(ア)業務に関する事項
① 渡航又は出張先での感染状況、流行状況
・渡航又は出張先(経由地等も含む)と国内の感染状況の比較
② 渡航又は出張先での業務での感染者(疑い含む)との接触等の状況
・接触時期、人数、時間、回数、期間、距離、接触の態様など
・他の労働者や事業場施設の利用者等の感染者の状況
③ 渡航文は出張先での業務内容労働環境等
当該労働者の渡航又は出張先での業務内容、労働環境
・発症前14日間の業務における行動内容
④ 国内での業務での感染者(疑い含む)との接触等の状況
・接触時期、人数、時問、回数、期間、距離、接触の態様など
・他の労働者や事業場施設の利用者等の感染者の状況
⑤ 国内での業務内容労働環境など
・当該労働者の渡航又は出張先での業務内容、労働環境
・発症前14日間の業務における行動内容

(イ)一般生活に関する事項
① 家族等同居人の感染者の有無
・有の場合、家族等の発症時期、接触時期、接触時間(期間)、その態様など
② 一般生活での感染者との接触、人との近接や接触等の状況
・一般生活での感染者(疑い含む)との接触がある場合、感染者の発症時期、接触時期、接触時間(期間)、接触機会、その態様など
・業務外の流行地域への渡航歴
・発症前14日間の一般生活における行動内容

(ウ)医学的事項(主治医)
感染の有無、症状の出現状況、症状経過等の確認を要する場合に意見依頼すること。診療費請求内訳書(5号レセプト)等で感染の有無が確認できる場合等には、主治医への意見依頼を省略して差し支えないこと。
① 初診日
② 受診の端緒及び感染経路
③ 自覚症状及び自覚症状の出現日
④ 受診時における他覚所見
⑤ 疾患名及びPCR検査等の検査成績などその診断根拠
⑥ 治療経過及び治療内容、現在の病状

(エ)医学的事項(専門医)
感染の有無の確認を要する場合、感染経路に関して医学的な補足を要する場合等には、必要に応じて地方労災医員等専門医から意見を徴すること。新型コロナウイルス感染症疑い(検査陰性)事案について、意見依頼する際は、「新型コロナウイルス感染症疑い(検査陰性)事案の当面の取扱いについて」の2(3)を参照すること。

イ 海外派遣特別加入者

国内の労働者に準じて判断することから、調査に当たっては、上記1~4の事項とともに、当該労働者の職種を確認し、職種に応じて上記(1)及び(2)の各事項について調査すること。

6 調査手法等

(1)関係資料の収集

調査に当たっては、原則以下の関係資料を収集すること。なお、全ての関係資料を収集する必要はなく、事案の内容に応じて業務上外の判断に必要な資料を収集することで差し支えない。

① 業務内容や作業内容等、業務の実情が分かる資料
・請求人(様式2、2-2「申立書」により照会)
・事業場(様式1、1-2「使用者報告書」により照会)
 出勤簿、作業日報、社内の感染経路を調査した関係書類など

② 医学情報、感染状況が分かる資料
・医療機関、主治医等(様式3「医学的依頼事項」により照会)
 意見書、専門医に意見依頼するものは、診療録、看護記録など
・保健所等(都道府県、市区町村など)(様式4「保健所照会」により照会)
 検査結果、積極的疫学調査結果、推定感染源など

(2)調査聴取等(上記1では調査が不足する場合)

① 請求人
上記1~5を網羅的に聴取

② 事業主、同僚等事業場関係者
上記1~5の状況について、分かる者に聴取等の調査を行う。(対象者は可能な限り厳選すること)

③ 家族、友人等
主に一般生活の状況について聴取等の調査を行う。当該労働者の一般生活の状況を知る者に対し調査を行うこと。

(3)調査の留意点

ア 上記(1)②に掲げる「積極的疫学調査」は、感染症法第15条に基づき、都道府県や政令市、特別区に設置している保健所が実施することとなっており、国立感染症研究所が公表している「新型コロナウイルス感染症患者に対する積極的疫学調査実施要領」(第8 参考資料参照)のとおり、調査対象者(感染者)の症状の経過や治療内容、検査結果、発症前概ね2週間の行動調査結果、推定感染源等、調査事項の多くの項目を網羅している。
そのため、個々の事案に応じ必要がある場合は、保健所等に対して、令和2年7月7日付け健感発0707第1号、基補発0707第2号「新型コロナウイルス感染症の労災補償のための保健所における情報提供等の協力依頼について」(以下「連名通知」という。)に基づき、連名通知別添2(様式4と同一)により情報提供の依頼をすること。

イ 関係者からの聴取等の調査に当たっては、「「新型コロナウイルス感染症防止等のための対応について」に係る労災部署における対応について」(令和2年3月11日付け基補発0311第1号)に基づき、文書照会、電話録取等の手法で行うこととし、感染症予防対策を徹底すること。
感染が疑われる者に対し、やむを得ず面談による聴取調査を実施する必要がある場合にも、面談時にはマスクの着用や咳エチケット、手洗い等の感染予防策を徹底すること。
ウ 様式5として調査復命書のひな形を示すので参考とすること。なお、様式1~5は、調査に当たって十分に活用するとともに、これらの様式を参考に事案ごとに工夫して差し支えないものであること。

7 本省協議・報告

(1)本省協議

通達の記の2(1)ウ、2(2)及び不支給の決定を行う事案のほか、新型コロナウイルス感染症疑い(検査陰性)事案(疑い患者の要件に該当しない場合又は疑似症患者に該当しない場合)、通勤災害に関する事案は、決定前に本省に協議を行うこと。この際、専門医の意見を要する事案は、専門医に意見を依頼する前に本省に協議すること。

(2)報告
ア 労災請求受付時

労災保険給付の請求書を受け付けた場合、指定の方法により本省補償課業務係及び企画調整係あてに報告すること。

イ 労災決定時

支給決定不支給決定を行った場合、指定の方法により本省補償課業務係及び企画調整係あてに報告すること。

参考 新型コロナウイルス感染症事案(業務災害)の決定の流れ(フロー図1)
参考医療従事者等の家庭内感染者がいる場合の決定の流れ(フロー図2)
参考 医療従事者等以外の感染経路不明事案で家庭内感染者がいる場合の決定の流れ(フロー図3)

第4 取りまとめ様式

様式1 使用者報告書
4-1

様式1-2 使用者報告書(医療機関介護施設専用)
4-1-2

様式2 請求人申立書
4-2

様式2-2 請求人申立書(医療機関介護施設専用)
4-2-2

様式3 主治医意見依頼事項
4-3

様式4 保健所情報提供依頼書
4-4

様式5 新型コロナウイルス感染症の業務起因性の判断のための調査復命書
4-5

様式5-2 新型コロナウイルス感染症の業務起因性の判断のための調査復命書(感染経路不明事案以外)
4-5-2

第5 調査復命書記入例

事例1 医療従事者が感染した事例
5-1

事例2 同一事業場で複数の医療関係者が感染し一括して調査した事例
5-2

事例3 複数の感染者が確認された労働環境下での業務により感染した事例
5-3

事例4 顧客等との近接や接触機会が多い労働環境下での業務により感染した事例
5-4

事例5 業務外で感染経路特定とした事例
5-5

事例6 業務外で感染した蓋然性が高いと判断した事例
5-6

第6 質疑応答集

参考 新型コロナウイルス感染症疑い(検査陰性)事案の当面の取扱いについて

[編注:別稿「情報公開で明らかになった「新型コロナウイルス感染症の労災補償における取扱いに関する質疑応答集について」(令和3(2021)年2月16日付け職業病認定対策室長補佐事務連絡)」と同内容]

6-1

参考 新型コロナウイルス感染症陰性事案の決定の流れ(陰性フロー図)

第7 関係通達等

「新型コロナウイルス感染症の労災補償における取扱いについて」(令和2年4月28日付け基補発0428第1号)
7-1

「新型コロナウイルス感染症の労災補償のための保健所における情報提供等の協力依頼について」(令和2年7月7日付け健感発0707第1号、基補発0707第2号)
7-2

「「新型コロナウイルス感染症防止等のための対応について」に係る労災部署における対応について」(令和2年3月11日付け基補発0311第1号)
7-3

第8 参考資料

新型コロナウイルス感染症診療の手引き(第4.2版)
新型コロナウイルス感染症患者に対する積極的疲学調査実施要領(令和3年1月8日版)
8-2

宿泊・自宅療養証明書(新型コロナウイルス感染症専用)
8-3

[関連情報の御案内]コロナ労災:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の労災補償