アスベスト被害者・中皮腫患者の「いのちの救済」を求める運動の画期的前進:「腹膜・心膜・精巣鞘膜中皮腫へのオプジーボ投与」~胸膜以外の中皮腫に対する初の標準治療~保険適用実現!さらなる中皮腫治療開発の推進を!

片岡明彦

(中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会全国事務局/NPO法人中皮腫サポートキャラバン隊事務局)

アスベストばく露による特異的、難治、希少がんである「中皮腫」。発症部位で多数をしめるの胸膜だが、それ以外の「腹膜・心膜・精巣鞘膜」の中皮腫に対しては初めての標準治療となる免疫チェックポイント阻害薬「オプジーボ」(一般名:デュピルマブ)保険適用が、ついに実現した。

今回の保険適用実現は、中皮腫患者やアスベスト被害者の団体、これを支援する組織が、治療困難でアスベスト被害の象徴的疾患としての中皮腫について、治療の飛躍的進展を求める活動を強化してきたことの成果である。

そして、この画期的進展は、「補償と救済」、「正義の実現」をつとに求めてきたアスベスト被害者運動において、「いのちの救済」が実現可能で運動の柱となるべき課題であることを示したともいうことができるだろう。

初の標準治療実現

2007年1月4日、胸膜中皮腫に対する初めての標準治療が国内承認された。

いわゆる白金製剤の抗がん剤「シスプラチン(CDDP)」と「ペメトレキセド(商品名:アリムタ、イーライリリー社製)」の2剤併用療法だ。以後、長く中皮腫に対する唯一の標準治療となり、胸膜以外の治療にも「準用」されることとなる。

この治療はその当時までに2004年2月にアメリカで初めて承認され、その後、EU、オーストラリアなど世界の84か国で承認されていた。(https://
medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/nmk/cr/report/200704/502862.html

日本国内では、2004年5月20日の石綿対策全国連絡会議の厚生労働省交渉において、同年2月7日に発足していた中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会(以下、患者と家族の会)の中皮腫患者が「アメリカで認可されているアリムタを国内で使用できるようにしてほしい」と訴えた。これが、中皮腫患者自身が中皮腫の治療開発について声をあげた、筆者の知る、記録にある最初のできごとである。

2005年1月24日、厚生労働省第1回未承認薬使用問題検討会において、悪性胸膜中皮腫の治療薬ペメトレキセド(日本イーライリリー社)の早急治験を要請することが決定された。当時すでに、企業治験が準備中であり、2004年11月10日に優先的治験相談品目に指定されていた。検討会の議事録には「ペメトレクスド、…これも患者団体、学会から要望のあったものです。」とあり、患者と家族の会の声が早期治験実施に寄与したと言えるだろう。

そして、この2年後に胸膜中皮腫の初めての標準治療が実現した。

第2の標準治療「オプジーボ」

2018年8月21日、「がん化学療法後に増悪した切除不能な進行・再発の悪性胸膜中皮腫に対するオプジーボ単独療法」が承認された。

「悪性胸膜中皮腫に対する初回薬物治療としては、ペメトレキセドとシスプラチンの併用療法が行われますが、この併用療法に不応又は不耐となった患者では標準的な治療法はなく、新たな治療法が切望されていました。今回の承認によって、がん化学療法後に増悪した切除不能な進行・再発の悪性胸膜中皮腫に対してもオプジーボの使用が世界で初めて可能となりました。」小野薬品工業プレスリリース 2018年8月21日

https://www.ono-pharma.com/sites/default/files/ja/news/press/n18_0821.pdf

CDDP+アリムタ2剤併用療法承認から実に11年7か月が経過していた。

初回治療に対しては認められないが、いわゆるセカンドライン以降についてに限定されるとはいえ、待望の標準治療の追加となった。

患者と家族の会は国に対する要望項目に、毎年、治療薬の開発促進を入れていたのであるが、2017年12月22日にオプジーボ承認申請が行われるまでは、治療開発促進を具体的、主体的にとらえ検討するというのではない、いわば「お題目を唱える状態」であったと思う。これが、患者と家族の会全国事務局の一員である筆者の反省をこめた総括的感想である。

オプジーボ開発元である小野薬品工業は、2017年12月22日に承認申請をするとほぼ同時に、患者と家族の会に対して早期承認のための協力を要請してきた。これに対して、患者と家族の会は議論の後、組織として早期承認要請を行うことを決め、2018年1月18日、日本肺癌学会、日本肺がん患者連絡会と3団体連名で、厚生労働大臣に早期承認の要望書を提出した。(オプジーボ 早期承認要請:厚生労働省への提出(中皮腫患者の生き残り大作戦~中皮腫
サポートキャラバン隊~栗田英司ブログ 2018年年1月10日

患者と家族の会のなかにあって、早期承認要請の先頭になったのが、中皮腫サポートキャラバン隊の患者たちだった。

中皮腫サポートキャラバン隊(以下、キャラバン隊)」は、2017年9月頃から活動をはじめた、患者と家族の会の会員中皮腫患者などで構成されるグループで、「長期生存をはたしている全国の中皮腫患者をたずねてインタビューしてその声をとどけ、絶望のなかにいる中皮腫患者を励まそう」と全国行脚をはじめていた。腹膜中皮腫発症から約19年療養をつづけていた(長期生存を続けていた)故・栗田英司氏、胸膜中皮腫患者で現在「NPO法人中皮腫サポートキャラバン隊」の理事長である右田孝雄氏らを中心とし、患者と家族の会は、キャラバン隊活動の意義を重視し、全面的にバックアップした。キャラバン隊がNPO法人となった現在においても、変わらぬ協力関係にある。

こうした患者の組織的取り組みのなか、2018年8月21日にオプジーボは承認となった。通常では1年は要するとされる承認までの期間が3か月「短縮した」といわれている。「3か月」短縮でオプジーボ投与が早まることで、奏効、延命となった患者は現に存在している。

胸膜中皮腫以外の患者にもオプジーボを

キャラバン隊がはじまる大きなきっかけは、中皮腫患者の個人ブログの数が増え、SNSでの書き込みも少なからずみられるようになり、ブログやSNSをきっかけとした患者同士の交流が飛躍的に増えたことであった、ということは言えると思う。

そして、次第に盛んになっていく情報交換と交流のネットワークには、希少がんゆえの苦しさ、むずかしさに悩む中皮腫患者や家族がどんどん集まってきていた時期にオプジーボの登場が重なった。

2018年8月に胸膜中皮腫治療のセカンドラインにオプジーボ投与が標準治療として導入されると、奏効する方、奏効するもオプジーボの副作用により投与中止となる方、奏効せず増悪し他の治療方法に移行する方などのいろいろな話が、中皮腫患者の情報ネットワークにどんどん入ってくるようになった。

そのようななか、キャラバン隊の右田氏に「腹膜中皮腫にもオプジーボが使えるようにしてほしい」と訴えてきたのが、女性の腹膜中皮腫患者「優香」(ペンネーム)さんだった。

2019年6月4日、右田氏は優香さんに会い、発症4年、抗がん剤治療経験をもつ彼女が連絡してきた理由を聞いた。すると、“主治医に「腹膜中皮腫はオプジーボはできないのか?」と尋ねたところ、「一人で闘ってもできないよ」と言われて、中皮腫サポートキャラバン隊の存在を知った”というのだった。

キャラバン隊は6月17日から、「腹膜・心膜・精巣鞘膜中皮腫におけるニボルマブ(オプジーボ)使用についての要望書」への署名運動を開始。患者と家族の会や様々な支援団体、患者や家族、友人知人の協力を得て、11月25日に厚生労働省に8,392筆(11月20日現在)分12月25日に小野薬品工業に8,495筆分(12月24日現在)を直接手渡した

左:小野薬品、右:キャラバン隊と患者・家族、@小野薬品工業本社 2019年12月25日

そして2020年9月30日、いよいよ「胸膜中皮腫以外の腹膜・心膜・精巣鞘膜に対する医師主導治験」が兵庫医科大学病院と国立がん研究センター中央病院ではじまった。治験費用は、患者団体からの要望を真摯に受け止めた小野薬品工業が負担したのだった。

この医師主導治験のもうひとつの原動力は、優香さんの主治医であった兵庫医大の医師たちであったことを忘れてはならない。

患者団体と患者の願いに真摯に向き合った医師、薬品会社の協力連携によって実現した治験だった。

承認申請から早期承認へ

2023年2月28日、医師主導治験開始から2年4か月、小野薬品工業は、胸膜中皮腫以外の中皮腫へのオプジーボの保険適用を求め、「悪性中皮腫(悪性胸膜中皮腫を除く)に対する効能又は効果の追加に係る国内製造販売承認事項一部変更承認申請」を厚生労働省に提出した。

これを受けて、キャラバン隊と患者と家族の会は連名で、「早期承認」とともに「胸膜中皮腫を含め、「中皮腫を治る病気」にするために、①中皮腫独自の臨床試験及び基礎研究への研究支援、②国と関係学会等が連携した中皮腫登録事業の確立、に向けた支援をすること」を要請することへの賛同署名運動を開始、3月29日に要請団体に「日本石綿・中皮腫学会」も加わって、厚生労働大臣と環境大臣宛てに賛同署名と同趣旨の要望書を提出した。

そしてついに、申請から9か月、11月24日に承認となった。

これにより、胸膜以外の腹膜・心膜・精巣鞘膜中皮腫に対するオプジーボ療法については投与時期(初回かどうか、など)にかかわらず、保険適用のもとでの治療に道が開かれた。

繰り返しになるが、患者団体と患者の願いに真摯に向き合った医師、薬品会社の協力連携によって実現した「胸膜中皮腫以外の中皮腫に対する初めての標準治療」なのである。

デュピルマブとイピリムマブ2剤併用療法の登場

これまで胸膜中皮腫以外の中皮腫へのオプジーボ療法実現の経緯を紹介してきたが、2021年5月27日に胸膜中皮腫について、新たな標準治療が承認された。

化学療法未治療の切除不能・再発の胸膜中皮腫に対するニボルマブ(商品名:オプジーボ)とイピリムマブ(商品名:ヤーボイ)の併用療法である。2つとも免疫チェックポイント阻害薬であるが、オプジーボはPD-1阻害薬、ヤーボイはCTLA-4阻害薬とタイプが違う薬だ。

中皮腫治療の選択肢が増えたことは大きな前進である。胸膜中皮腫の初回化学療法の主流になってきているが、免疫チェックポイント阻害薬特有の副作用という点では、オプジーボ単独の場合よりも多めに出るといわれているので、より注意が必要とされている。

中皮腫を治せる病気に

根治が期待できる外科手術が可能な胸膜中皮腫は、全体の10%程度とされている。

そのため、中皮腫に対する治療薬開発をいかに推進していくのか。

既存薬剤の中皮腫への適用拡大、さらに、分子標的薬を含む画期的治療薬の開発につながる中皮腫という病気そのものの基礎研究が重要となる。

そのためには、研究開発のための資金を増やすことがなによりも必要である。

アスベスト被害に対する国や企業の賠償責任や社会的道義的責任が認知されてきた経緯と現状を踏まえるならば、アスベスト被害としての石綿関連疾患、とりわけアスベストばく露と特異的関連を有する中皮腫については、治療開発の遅れを抜本的に挽回する、国家的資金投入が認められるべきである。

治療開発の遅れは、治療に使用される薬剤の種類と数を比較すれば歴然としている。

中皮腫の標準治療は本稿で紹介したように3つ、保険適用のもと使える薬剤としては抗がん剤3~4種類程度、免疫チェックポイント阻害薬2種類だが、肺がん治療で使用される薬剤は、抗がん剤15種類、分子標的薬15種類、免疫チェックポイント阻害薬4種類である(日本肺癌学会 https://www.haigan.gr.jp/guidebook2019/2020/yakuzai.html)。

中皮腫が症例数の少ない「希少がん」であること。これが、治療開発が極端に遅れる原因だが、この点はすべての希少がんに共通している。

こうした認識に基づいて、患者と家族の会やキャラバン隊は(前述のとおり)、①中皮腫独自の臨床試験及び基礎研究への研究支援、②国と関係学会等が連携した中皮腫登録事業の確立、を国に要望しているのである。

2023年に行われた環境省の中央環境審議会石綿健康被害救済小委員会においても、中皮腫等の治療開発推進を石綿救済法の目的に加える法改正と石綿救済基金800億円のこれへの活用を強く訴えた。目的そのものは実現できなかったが、このことが必要であり実現可能であることについては、各方面の共感と賛同を得ることができたと考えている。詳細は、患者と家族の会が公表しているカウンターレポートをぜひ参照していただきたい。

石綿健康被害救済法の抜本改正に向けて-石綿健康被害救済小委員会報告書カウンターレポート-(患者と家族の会)

アスベスト被害においては中皮腫に端的なごとく、進行性で難治、致死的な結末に至る疾患をもたらす。患者・被害者の苦境の根源たる疾患からの脱却が患者・被害者の第一の願いなのであるから、治療開発の推進はまずもって運動の柱にならなければならないと思う。このことを筆者がはっきりと意識したのは、キャラバン隊の活動に触れて、療養しながらも人生を自分らしく生きようとしている多くの中皮腫の方たちに直に接することができて、生の声を聞けたことによるものだと感じている。

現在、治療開発の今日的な重要性は着実に意識されるようになり、アスベスト被害にかかわる人たちのなかに前向きな理解がひろがってきているように思う。

例えば、大阪府議会が2023年3月17日に採択した「アスベスト被害を抑える対策の強化を求める意見書」では、「国においては、今後のアスベストによる健康被害者の治療法の一日も早い確立と、アスベスト被害の発生防止に向け、以下の事項に全力で取り組むことを強く求める。」として、第1項目で「1.アスベストによる健康被害者の治療や進行抑制に効果のある研究・開発を促進し、そのための安定的な予算を確保すること。」を要請している。同様の内容の意見書は各地の自治体で採択されている。

治療研究開発のための石綿健康被害救済法改正を打ち出すには至らなかったものの、その救済小委員会での激しい攻防の触発されたかたちで、2023年9月11日、自民・公明両党の与党建設アスベスト対策プロジェクトチームが、治療研究費の予算増額を厚生労働大臣に申し入れ、一定の予算増額が決まった。抜本的な治療推進のための施策とはとても言えないながら、注目すべき動きだ。

中皮腫治療推進基金の「挑戦」

中皮腫の治療開発を推進するためには公的資金が投入されるべきであるが、有志の代表たる市民、患者と家族、企業など民間の力で基礎研究と臨床治験を加速しようと2022年1月28日に設立されたのが「中皮腫治療推進基金」ある。終わりが見えない中皮腫患者の発生を前に手をこまねいていることはできない。

基金の中川和彦理事長は講演で、「お金を蓄積しまして、そして基礎の助成金をお配りして、そして生物学的な特徴を研究してもらう。そしてそれに関連づけて、臨床試験を日本でたくさん行っていただくといったところに注力を注いでいきたい」「たくさんの薬剤開発の治験でありますとか臨床試験、医師主導治験なんかも、たくさん行われているんですが、それに中皮腫のコホートを追加するというようなことが、やはり重要ではないかといふうに思っています。
そのためには製薬企業にお願いしないといけないですし、臨床試験グループの人たちにも協力をして考えていただけねばならないというふうに思っております。これらを推進するために、私たちとしては臨床試験、研究グループと、非常に近い関係を、結びつきを発展させたいし、基礎の研究者との懇話会等も今後、やっていく必要があるというふうに思っているところです。
ぜひ、この一歩一歩を、この基金を通じまして、中皮腫に対する薬剤開発の一足一足を確かめながら、頂上に向かって、皆さんたちと一緒に進んでいきたいと思っております。」(2023年6月24日中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会総会)と述べられている。ドンキホーテのような「挑戦」かもしれないけれど、筆者は、中皮腫開発推進の起爆剤、触媒になるのではないかと感じている。

基金は、さらに多くの個人と団体からのご協力を求めているので、本稿を読まれ関心を持たれた方はぜひ、基金のホームページをのぞいていただきたい。

職業がん患者を救う医師主導治験

最後に、筆者個人のオプジーボについての体験を述べたい。

2012年5月、大阪市内の校正印刷会社「SANYO-CYP」での胆管がん患者が多発していることが報道を通して広く知られるところとなった。その約1年前に被害者知人から相談を受けて、熊谷信二産業医科大学准教授(当時)の疫学調査に協力したことから、いわゆる職業性胆管がん事件にその後かかわることになった。

普通は高齢男性に多い胆管がんを発症したのが若い男性ばかりだったのが事件の特徴であったが、それは患者自身にとっては発症後の人生をどう生きていけるのかという大問題であった。胆管がんの治療は難しく、手術するが再発を繰り返す一方、効く抗がん剤が効かなくなり、次第に選択肢がなくなっていく方が多い。被害者の会はSANYO-CYPと交渉の末、2014年10月22日に和解したのだが、患者は、その「胆管がん」をかかえながら生きていかなければならなかった。

そんななかSANYO-CYPの患者たちの主治医であった久保正二教授(大阪公立大学(当時、大阪市立大学)医学部附属病院肝胆膵外科)らが主導するオプジーボを使った「印刷事業などで使用する化学物質が原因で発生した職業関連性胆道がんを対象にした免疫療法の医師主導治験」が大阪公立大病院と国立がんセンター東病院の東西2箇所ではじまった。

久保教授らは、「職業関連性胆道がんは通常の胆道がんと比べて、遺伝子変異が多い、またPD-L1の発現が多くみられることが特徴」であることをつきとめ、「近年、遺伝子変異が多い症例や、PD-L1の発現が多くみられる症例において、海外の臨床試験で免疫チェックポイント阻害剤のより高い有効性が示されている」という情報や抗がん剤治療に行き詰まった患者にオプジーボを試験的に投与したところ著効を示した経験をもとに、オプジーボを製造する小野薬品工業の協力をとりつけて、治験を開始したのだった。

職業性胆管がん患者のいのちを救うため(治療のため)の医師主導治験である。当時、久保正二教授から治験開始の連絡を受けて、筆者らはウエブサイト上に治験情報を掲載した。

現在、オプジーボ治験は中止されたが、切除不能な胆道がんに対してイミフィンジ(一般名:デュルバルマブ、アストラゼネカ社)の投与が2022年12月23日付で承認されており、オプジーボにかわりタイプが違う免疫チェックポイント阻害薬イミフィンジを使った治療が可能となっているということだ。

オプジーボが職業性胆管がん患者によく効くんだということ、患者を助けたいという久保教授らの熱意によって医師主導治験がはじまるということを知った2019年6月頃は、胸膜中皮腫のセカンドラインとしてオプジーボ単独療法が承認されて10か月たったころだった。

2019年6月19日にキャラバン隊の栗田英治氏が亡くなったことも重なり、治療開発、いのちの救済にかかわる活動の大切さ、リアリティを強烈に意識することになった。

希少がん患者にとって、臨床試験の実施自体が治療の選択肢を増やすということを意味する。さらに、肺がんの治療状況に追いつくためには、画期的な治療薬実現のベースとなる中皮腫という病気そのものの基礎研究、遺伝子解析研究が欠かせない。

アスベスト被害にかかわる方々には、ぜひ治療開発について関心をもっていただき、公的資金投入のための石綿健康被害救済法改正実現、中皮腫治療推進基金の盛り上げに絶大なるご協力をお願いしたい。

安全センター情報2024年1・2月号