難治・希少がん「中皮腫」を治る病気に、新たなチャレンジ!~これからの中皮腫治療と希望~オンラインセミナー
アスベストによる健康被害、石綿関連疾病として代表的なものには、アスベストによるじん肺である「アスベスト肺」(石綿肺)、肺がんなどがあり、なかでも、極めて難治性であるとともに、発症数がきわめて少ない希少がんである「中皮腫」は、アスベスト被害が悲劇的な人災であることの象徴的疾患と言っても過言ではない。
患者は中皮腫と診断されると、「余命は1~2年」「根治はほとんど無理」「効果のある化学療法は限られており、効果は多くの患者で限定的」との説明を同時に聞かされ、家族と共に呆然とする。
こうした状況を劇的に変えるための新たな動きがはじまっている。
石綿救済基金活用で「命の救済」を!
一つは、石綿健康被害救済法を改正して、現在、約800億円に積み上がっている「石綿救済基金」を中皮腫等の治療研究推進に活用できるようにしようという運動である。
この声は、中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会(本部・東京都江東区)を中心に広がっており、同会によると政界でも150名を超える与野党国会議員が賛同署名を寄せているとのことだ。
石綿救済法改正への3つの緊急要求(中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会)
さらに、中皮腫治療の専門医等で構成する「日本石綿・中皮腫学会」は、「悪性中皮腫に対する既存の治療薬の適応拡大と、さらなる診断・治療法の開発研究に対する公的支援を要望いたします」との声明を出し、中皮腫研究への公的支援の必要性を強調している。
このような声を受けて、本年6月6日に開催された「中央環境審議会環境保健部会石綿健康被害救済小委員会」(以下、救済小委員会)の第一回オンライン会合でも、半数を超える委員が治療研究の推進の必要性に言及し、今後、今回の石綿救済法改正議論の大きな焦点となることが期待されている。
医療者・法律家・患者が力を合わせ「中皮腫治療推進基金」設立
石綿救済基金の活用による公的支援とともに、民間からも治療研究を積極的にサポートし、推進していこうではないか、という動きがはじまった。
「中皮腫治療推進基金」(以下、推進基金)である。
がん治療臨床試験推進の第一人者である中川 一彦氏(近畿大学医学部内科学教室腫瘍内科部門教授)を代表理事に、理事に長谷川 誠紀氏(兵庫医科大学呼吸器外科診療部長)、村松 昭夫氏(大阪アスベスト弁護団団長)、右田 孝雄(中皮腫サポートキャラバン隊理事長)、監事に位田 浩氏(アスベスト訴訟関西弁護団事務局長)という、治療研究、法律、患者運動のエキスパートが結集し、活動を開始した。
アスベスト被害者運動は新たな時代へ
アスベスト被害者運動はこれまで、被害の掘り起こし、労災認定、国と企業の責任追及と公正な補償・救済の実現を目指して大きな成果をあげてきており、今後さらに格差とすき間のない補償・救済を目指して力強く前進している。
そして、こうした運動目標に加えて、患者の命そのものを救い出すという大目標を掲げる新たな動きを創り出していこうというのである。そこには、がん治療をめぐる今日の大きな伸展が背景にある・
中皮腫について直近においては、免疫チェックポイント阻害剤のニボルマブ(商品名オプジーボ)の登場と胸膜中皮腫治療への適用拡大、さらには、胸膜中皮腫の第2の標準治療としてのニボルマブ+イピリムマブ併用療法の保険適用開始である。これらにより、中皮腫治療は徐々に生存期間の拡大が仄聞されるようになりつつある。
ただ、たいへん残念なことに、希少がんである中皮腫の治療研究は患者数が極端に少ないために薬品企業による開発ペースは非常に遅く、がん治療の今日的な飛躍的な伸展がなかなか及ばない、という患者にとってはまことに厳しい現実に直面していると言わざるを得ない。
そこを患者を先頭にして、医療者・法律家の力を結集し、推進基金に資金を集め、なんとしても打解しようというのが推進基金の目的なのである。
これからの中皮腫治療と希望~オンラインセミナー
今年で2年目となる「中皮腫啓発月間」の最後の取組として、オンライセミナー「これからの治療と希望」が行われる。
7月30日(土)13時30分~15時、オンラインで開催される。
講師は、推進基金代表理事の中川一彦氏、国立がん研究センター希少がんセンターの加藤陽子氏、国立がん研究センター中央病院呼吸器内科の吉田達雄氏。
「今後期待されてる治療法や「治る病気」に向けてどのような取組がされたえいるのか、現場の最前線で患者さんと向き合っておっれる専門家から解説」される。
お申し込みこちらから→みぎくりハウス(中皮腫サポートキャラバン隊HP)
「中皮腫を治る病気に」
アスベスト被害者運動におけるこれからの大切なキーワードだ。