「突然手を握った老人に怒ることもできませんでした」2019年5月14日

「受給資格がないと言ったら、執拗に食い下がり始めました。『君は私を無視するのか』と言って…そんな時は本当に傷つきます」。(50代の福祉プランナーAさん)
「72才の男性が『看護師様』と言いながら手を握ってきたことがあります。止めなさいと言うとその方の機嫌を損ねるかと思って、やさしく話すしかありませんでした」。(40代の訪問看護師Bさん)
ソウル市感情労働従事者権利保護センターが最近発刊した「訪ねて行く洞住民センター(チャットン)の訪問労働者の感情労働研究」報告書に登場した事例だ。福祉プランナーと訪問看護師は、住民の過度な要求や暴言・暴力・セクハラといった危険に遭うと訴えた。福祉を担当する労働者が不当な待遇を受ければ、サービスの質の低下に繋がるだけに、これらを保護する対策が必要だ。昨年11月から2ヶ月続けた調査を、権利保護センター感情労働事業チームが総括し、又松大の社会福祉学教授など4人が参加した。研究陣は、福祉プランナー8人、訪問看護師10人、市民3人を深層面接方式で調査した。センター所長は「深層面接調査で訪問労働者の深みのある話を立体的に聴いた」と説明した。
訪問労働者が共通して打ち明ける困難は、△住民の過度な要求による感情労働、△住民の暴言・暴力、△ジェンダー基盤の暴力、△孤独死と自殺事件の経験だ。訪問労働者が感情労働と物理的暴力に遭う理由は、私的な空間でサービスが行われることに原因がある。家庭を訪問してサービスをしながら安全を守るには、装置が足りないためだ。研究陣が会った訪問労働者は「訪問安全マニュアルでは、二人同行訪問を奨励しているが、人員不足で、同行訪問の原則が守られないケースがほとんどだ」と証言した。
訪問労働者は危機的状況には112と119を呼び出せるスマートウォッチを持っている。しかし訪問労働者も住民センターの事業担当者も、スマートウォッチの実効性を疑っている。事業担当者のCさんは「(事故は)突然、起きて、対応は難しい」と話した。
訪問労働者の多くは女性だ。昨年は福祉プランナー2768人中71.6%(1982人)、訪問看護師464人中98.9%(459人)が女性で住民・請願人のセクハラに遭う危険が一層高い。
訪問労働者は感情労働を甘受すべきだという考えがある。研究陣はその理由を「福祉対象者の気持ちにどこまで合わせなければならないかの基準がなく、次にまた会う人なので、どう問題を提起すべきか、という感情が複合的に作用する」と分析した。
チーム長は「数値で把握されないだけに、訪問労働者の感情労働は深刻な状態」とし、「福祉サービスを提供する公務員を『公僕』と見る認識のせいで、感情労働に耐える場合が多い」と説明した。「マニュアルを、状況別に具体的に作って、訪問労働者を対象に教育しなければならない」。

2019年5月14日 毎日労働ニュース カン・イェスル記者