輸入玩具・建材にアスベストがみつかりさらなる検査を求める声-オーストラリア・ABCニュース(2021年11月9日)

厳格な禁止にもかかわらず致死的な鉱物・アスベストがなおオーストラリアに輸入されていることが発覚したことを受けて、労働組合や反アスベスト・キャンペイナーらが、国境における一層の検査を要求している。

昨年の初めから、輸入された建材、[玩具の]リモコンカー、エンジンガスケット、ビリヤード台のアイロンや、シドニーの新しいフェリーなどからアスベストがみつかっている。

オーストラリアでは2003年以来、アスベストの製造、輸送及び輸入が禁止されている。石綿肺患者であり、 アスベスト被害者協会の会長のピーター・バクスター氏は、新しい世代のアスベストへの曝露と病気を恐れていると語った。

「削ったり、穴を開けたり、壊したりすると、繊維を飛散させてしまう」と、彼は7:30[テレビ番組名]に話した。

「子どもたちの物、玩具、いまやそれは間違っている、彼らは玩具を少しハンマーで叩き、バットで叩き、ばらばらにしてしまうのだから、本当に間違っている…だから彼らはリスクにさらされているし、私はそれを望まない」。

アスベスト調査者のアンドリュー・マントルは、アジアではアスベストが容易に入手でき、合法であり、その耐火性能から、とりわけ製造業の巨人である中国で、様々な製品に使用されていると述べた。

「ひとつの問題はアスベストが信じられないほど安いことだ」と彼は言う。

「中国からの方が安く買えるからと言って、価格破壊をねらってコンテナ10個分の石膏ボードを持ち込むのは、ロシアンルーレットをしているようなものだ」。

アスベストは建材でもみつかっている

もっとも最近の外国からのアスベストの発見は、9月に、建材メーカーのUSGボラル社が、石膏ボードをつくるために中国から輸入したバーミキュライトがアスベストに汚染されていることをみつけたことである。

恐慌状態から、ブリスベンのクイーンズ埠頭の建設現場を含め、石膏ボードは使用されている国中の現場で検査が行われた。その現場はアスベストは見つからなかった。

オーストラリア労働組合評議会(ACTU)のミッシェル・オニール会長は、禁止されてから20年たったいまでもアスベストが国内に入ってきていることは受け入れられないと語った。

「われわれは、毎日みつけられないまま入ってくる製品があり、それがすべての人を危険にさらしていることを知っている。だから、われわれは、このことの長期的な健康への影響を非常に懸念している」と、彼女は7:30に話した。

「アスベスト曝露に安全なレベルはまったくない。文字どおり、1本の繊維が結果的に死につながる可能性がある。これが、この製品がいかに危険かということである」。

USGボラル社は、7:30のインタビューの要請を拒否したが、声明のなかで、シドニー、メルボルン、ブリスベンの各製造現場で低レベルのアスベストが検出されたと言っている。また、製品は取り除かれ、現場は徹底的に清掃されたとも言っている。

「われわれは、中国原産のこのバーミキュライトの使用を中止した」と、声明は言う。

「USGボラル社は、すべての関係者がわが社の品質システムと確認されたあらゆる問題への対応を信頼してくれることを望んでいる」。

「USGボラル社では、労働者と消費者の安全は、われわれが行うすべてのことにおいて、ナンバー1の優先事項である」。

全コンテナの検査は「非現実的」

2016年にABCは、中国製のアスベストに汚染された建材が、ポータブル構造物、ブリスベンの高層ビルや、パースの新しい小児病院に使用されたことを明らかにした。

当時、オーストラリア国境警備隊は、厳格な取り締まりを約束した。

検査の強化を求める声にもかかわらず、国境警備隊の統計によると、今年3月に検査を受けた貨物はわずか4件だった。

2021年6月-検査件数7件、検出件数5件
2021年5月-検査件数13件、検出件数4件
2021年4月-検査件数16件、検出件数2件
2021年3月-検査件数4件、検出件数4件
2021年2月-検査件数9件、検出件数3件
2021年1月-検査件数16件、検出件数0件

国境警備隊は、7:30のインタビューの要請を拒否したが、アスベスト含有のリスクのある物品を標的にし続けているし、標的にする方法を定期的にレビュー及び洗練していると述べた。

オニール氏は、2016年にこの問題が見出しに登場し続けて以降、アスベストを止めるためになされた進展はわずかであり、上院からの問い合わせによって検査されていると考えている。

「政府は、2018年のアスベスト関連製品の輸入に対する上院の調査から引き出された勧告を無視している。26の勧告がなされたが、これまでに実施されたのは6つだけである」と、彼女は述べた。

「オーストラリア国境警備隊のなかに、アスベスト関連製品を探し、その輸入を阻止するために本格的な行動をとる専門ユニットが必要である」。

「われわは効果的なシステムをもっておらず、このことは、製品を取り扱う労働者だけでなく、社会のすべての者を危険にさらす製品の輸入をつ透けている企業に対して、十分な検査も、十分な処罰もないことを意味している」。

マントル氏は、国に入ってくるすべてのアスベストを見つけることは不可能と考えている。

「メルボルンやシドニーなどの港に入ってくるコンテナの数を覚えてはいないが、1日に何千という多さだ。だから、国境警備隊が、入ってくるすべてのコンテナを検査して、中身を確認するための設備とスタッフをもっていると考えるのは現実的でない」と、彼は言う。

「オーストラリア政府は中国政府に話す必要がある」

シンガポールを本拠とするマントル氏は、企業から支払を受けてオーストラリアに輸入される前に物品のアスベストを検査している。彼は、供給業者はアスベストは含まれていないと断言したにもかかわらず、検査の結果アスベストを検出した機材の多くの事例を知っている。

「明確にオーストラリア向けに用意された機材があり、大きなオーストラリアの旗が掲げられていて、私たちがそこに行ったときには素敵に見えたが、そのすぐ隣には他の機材もあり…どちらもアスベストを含有しているものとして送り返された」と、彼は言う。

「わかりますか。『いやいや、それは国内向けだから』と彼らは言う。こちらはオーストラリア向けだと。しかし、どちらもアスベストを含有していた」。

「一般的に、製品を安く買えば買うほど、部品が安くなり、基準を満たすことに厳しくなくなる。」

オーストラリア国境警備隊は、輸入書類の信憑性が疑われる場合には、その有効性を確認するための調査を行うとしている。しかし、通関業者のコリン・ブレーム氏によると、オーストラリアには海外のメーカーにコンプライアンスを強制する力はほとんどないと言う。

「中国が世界に持っている貿易レベルは相当なものだ」と彼は言う。

「われわれは、彼らの貿易全体の非常に小さな一部でしかない。だから、彼らにとって、れわれの規制に対応するためにサプライチェーン全体を変えようと望む理由はない」。

「おそらく彼らは、ゼロ・トレランス[不認容]にあまり注目しようとはしないだろう」。

「アメリカがアスベストに対してゼロ・トレランス・アプローチをとっていないことが、世界レベルでの貿易ビジネスを複雑にしていることは確かだ」。

ブレーム氏は、中国では、アスベスト含有率5%のものはアスベスト・フリーとみなされると言う。彼は、連邦政府が介入する必要があると述べた。

「政府対政府の問題だ。オーストラリア政府は中国政府に話す必要がある。トップレベルで開始しなければならない」と、彼は7:30に話した。

オニール氏は、多面的戦略が必要だと言う。

「これに対するひとつの答えは、必要な製品をよりうまく、より地元で製造できるようになることだ」と、彼女は述べた。
「われわれはまた、世界中でアスベストの生産と使用をやめる世界的禁止の一部である必要がある」と、彼女は7:30に話した。

ジェイソン・ウッド財務副大臣は、インタビューを拒否した。

https://www.abc.net.au/news/2021-11-09/asbestos-found-in-imported-toys-and-building-materials/100604278

編注:オーストラリアとは違って日本では輸入禁止措置が遵守されていると考える根拠はまったくない。実際に、アスベスト検査に係る規制も、その執行も、日本はオーストラリアと比較すれば、ないに等しいと言わざるを得ない。

なぜ日本では違法輸入・販売業者が処罰されない? オーストラリアの国境警備隊は輸入建材のアスベストに狙いを絞っている(2021年6月4日)

違法な石綿(アスベスト)含有品の流通・輸入は珪藻土バスマットだけの問題ではない、全面禁止の履行確保は未解決の課題(2020.12.22、2021.1.25更新)

中国のアスベスト(石綿)事情-生産しながら輸入もして世界最大の消費国、中国産品の石綿含有チェックは必須(2020.12.27、2021年2月3日更新)

2016年のオーストラリアのアスベスト・スキャンダル関連情報