カウザルギーで障害補償ー菓子工場で指の先端切断労災の後遺症/東京
日系ブラジル人女性のBさん(42歳)は、派遣労働者として菓子工場で働いていた。昨年8月の深夜、洗浄のために作動中だったアイスクリーム製造機械に手を巻き込まれ、右手の人差し指と中指を負傷した。人差し指は、先端部の骨の一部も含めた切断だった。会社を通じて労災を申請し、利き手の負傷のため、家事もままならない状況での休業がはじまった。
10月、主治医は「そろそろ治療は終わりです」とBさんに言い渡した。傷の抜糸を終えてはいたものの、指の先端は肉が紫色に盛り上がり、常にびりびりとした痛みが続いていた。主治医の言葉に、もう労災の補償も終わりだと思ったBさんは、派遣会社が紹介してくれた紙箱を組み立てる仕事をしてみることにした。少しでも硬いものに触れるだけで激痛が走るので不安だったが、生活のためには仕方ないと思った。しかし、その仕事も指がどうにも痛くて、3日で辞めることになった。
高校生の息子と二人暮らしのBさんは、「このまま指が使えず働けなくなったらどうしよう…」と、不安で夜も眠れなくなってしまった。
そんなとき、友達が「労災には障害補償請求という手続きがある」と教えてくれた。主治医に相談すると、「あなたは(大したケガではないから)障害等級なんか取れない」と一蹴されてしまった。
12月、Bさんは東京安全センターの相談にたどり着いた。そして、指の状態在確認するため、ひまわり診療所整形外科を受診することにした。
著しい疼痛、患部の冷感、むくみ、負傷した二指の関節が固まって曲がりづらくなっているなど、障害として、指の切断とともに「カウザルギー」という診断で合わせて請求し、障害認定後も医療的対応ができるアフターケアが必要であると申し立てた。「カウザルギー」は末梢神経の損傷後に灼熱感を伴う難治性の慢性痛のことで、近年は「複合性局所疼痛症候群(CRPSⅡ型)」と定義されるようになっている。
3月、障害認定結果は14級で、カウザルギーの著しい痛みとして評価されず、アフターケア制度の利用もかなわなかった※。Bさんは現在、審査請求を検討中である。
※ アフターケア制度:労災の治療終了(治癒または症状固定)後も再発や後遺障害に伴う新たな病気の発症予防などのために診察、保健指導、保健のための処置、検査をなど受けられるケア制度。せき髄損傷など20種類の疾病に権患し、一定の障害等級を受けているとこなどを要件として申請できる。(「外傷による末梢神経損傷」の場合は障害等級12級以上がアフターケアの要件)
文・問合せ先:東京労働安全衛生センター