毎日新聞社大阪本社 労災隠し取材班/(2004.11.15)web版

アスベスト被害の指標がん 99年度「中皮腫」死者647人 市民団体が全面禁止訴え

アスベストを浴びる環境で仕事をした労働者に発症しやすい特有のがん「中皮腫」の死者が1999年度に初めて600人を超え、647人に達していたことが、厚生省の統計調査で分かった。調査が開始された95年度に比べ、約30%の増加となった。

中皮腫は、肺などの臓器を覆っている胸膜や腹膜の表面(中皮)付近にでき、呼吸困難などの症状になる。患者の大半は、アスベストを浴びていたと推定されており、アスベスト健康被害の指標疾患とされている。

厚生省は世界保健機関(WHO)が国際疾病分類を変更したことを受けて、95年度から中皮腫の死者の統計を取り始めた。95年度が500人、96年度が576人、97年度は597人と増加傾向で推移。99年度は647人と調査開始以来初めて600人を超えた。
アスベストについては、80年代から、アイスランドやデンマーク、スイスなど欧州で全面禁止にする国が相次ぎ、欧州連合(EU)は99年、遅くとも2005年までの流通、生産の全面禁止を決定している。しかし、日本は、一部は禁止しているものの、クリソタイル・アスベスト(白石綿)を禁止していない。

アスベストによる疾患は、ほとんどが労災保険の対象となる職業病とされているが、国内での認定例は、ここ数年約20~40件程度。市民団体や労働組合でつくる「石綿対策全国連絡会議」の古谷杉郎事務局長は「アスベストを浴びてから発症まで10年以上かかると言われている。今、全面禁止にしないと、将来に禍根を残す」と訴えた。

●2003年には死者878人に、2004年10月から原則全面禁止に

中皮腫の死者は、その後も増加の一途をたどっている。2002年が810人、2003年には878人に達した。一方、中皮腫の労災認定件数は、2002年度で55件(前年度より22件増)にとどまっている。
政府はようやく2004年10月から、クリソタイル.・アスベスト(白石綿)を含め原則全面禁止にした。

20001229アスベスト被害の指標が中皮腫死者647人

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