毎日新聞社大阪本社 労災隠し取材班/(2004.11.15)web版

労災請求書を医療現場に 広島県医師会が労災指定医療機関800カ所に 全国でも異例

本来は労災保険扱いなのに健康保険などで処理される「労災隠し」が横行する中、広島県医師会は県内すべての労災指定医療機関に労災保険の補償給付請求書を送付した。労災事故にもかかわらず健康保険などで診療を受けようとする患者に医療現場で補償給付請求書を示し、労災保険の申請を訴える狙いだ。通常、請求書は労働基準監督署に置いてあるが、県レベルで全医療機関での常備の徹底を図る措置は全国でも異例と言える。同医師会は「患者の手間も省くことで、労災隠しの排除につなげたい」と被災者救済に意気込んでいる。

医療機関に置かれることになった請求書は、療養補償給付(治療費)を求める補償給付請求書で、業務災害と通勤災害用。「仕事中や通勤途中に病気やけがをした場合は労災保険で受診を」「健康保険での受診はできません」と書かれたパンフレットと1緒に、県内約800の医療機関に送付した。

同医師会は、1995年に県内約700の医療機関を対象にアンケートを実施した。労災と思えるケースを事業主の圧力や患者の立場を考えて健康保険扱いなどとした経験を持つ医療機関が65%に達し、労災隠しのまん延が浮き彫りになった。また、医師からは「労務担当者が社員に労災隠しを強要している」「労災で診療すると、次からその事業所は患者を別の病院に回す」といった深刻な声がある一方で、「患者にとって手続きが面倒」との意見もあり、広島労働局(旧労働基準局)と連携した今回の措置につながった。

自主的に補償給付請求書を置いてある医療機関もあるが、日本医師会は「広島のように県レベルで徹底を図った例は聞いたことがない」としている。
同県医師会の原田雅弘労災・自賠責委員会委員は「かなり前から広島労働局とこの問題に取り組んでいるが、労災隠しは減っていない。根気よく、対策を講じていく」と話している。

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