毎日新聞社大阪本社 労災隠し取材班/(2004.11.15)web版

■なくせ労災隠し■7年前の事故、症状再発 治療費など支払い決定 埼玉・行田労働基準監督署

「労災隠し」で補償を受けられなかった7年前の事故による右腕の痛みが再発したとして、30歳代のフィリピン人男性が提出した労災申請について、埼玉県・行田労働基準監督署が認定し、治療費などの支払いを決定していたことが分かった。事故発生直後に労災の届けがなくても、事故と、その後の症状の再発に因果関係があるとして労災保険で救済できることを示した珍しいケースになった。
「労災隠し」にあった被災労働者にとって朗報となりそうだ。

この男性は、1993年11月に埼玉県内の建設現場で鉄骨の組み立て作業中、誤って右腕を鉄骨にはさんで骨折した。会社側は、労働安全衛生法で義務づけられた死傷病報告を行田労働基準監督署に提出せず、労災申請についても男性に説明しなかったという。

男性は同県内の接骨院に通院したが、治療費が払えずに治療をストップ。その後、痛みに耐えられず、98年に病院に行ったが、完治しなかった。
その後、男性から相談を受けた「東京労働安全衛生センター」(東京都江東区)で対応を協議。労災保険法では、療養(治療)補償給付や休業補償給付の時効は2年と定められているが、労災保険未適用の事故に起因して症状が再発したケースは保険適用の可否の規定がないことが分かった。そのため「被災当時の治療は時効だが、再発扱いで認定は可能」として、2000年5月に同労働基準監督署に労災申請した。

同労働基準監督署は、「7年前の事故によるけがの治療が不具合で、現在の症状に至った」と判断し、2000年8月、治療を再開した2000年3月からの治療費を療養補償給付として支給することを決めた。
同センターは「事故時に労災隠しがなければ、けがも完治していたと思う。労災隠しでいったんは泣き寝入りした人も、その後、事故が原因の症状の再発があれば労災認定される可能性があることを示すもので、労働基準監督署の認定自体は評価できる」と話している。

20001207なくせ労災隠し 7年前泣き寝入りの事故 症状再発-治療費など支払い決定 埼玉・労基署 毎日新聞社大阪本社

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