毎日新聞社大阪本社 労災隠し取材班/(2004.11.15)web版
目次
労災保険適用Q&A 申請用紙、会社証明もとに
本来は労災保険が適用されるべき事故が大量に健康保険扱いにされていた「労災隠し」などの問題を毎日新聞が報道して以来、読者から連日、多くの情報提供や質問が寄せられている。「仕事中にけがをしたのにどうして補償されないの」といった訴えは、職種や年代を超えて多い。労災にあった人がどうすればよいか、誤解しやすい部分やよくあるケースを中心に「Q&A」で解説する。
◎仕事上のけが、自己負担なし
Q 仕事中の事故でけがをしました。労災として認められ、治療費や休業の補償を受けるにはどのような手続きが必要ですか。
A 労災用の所定の用紙を会社でもらい、会社の証明と本人の署名を書いて、医師の診察時に病院に出します。こうすると、自己負担なしで済みます。用紙が会社になければ、労働基準監督署に常備されています。治療のための用紙は「療養補償給付支給請求書」、休業時の賃金補償の用紙は「休業補償給付支給請求書」です。
労災保険の各種請求手続のリーフレットは厚生労働省HPからダウンロードできます。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/gyousei/rousai/index.html
◎会社の協力がない時もOK
Q 労災申請の書類作成や証明に会社の協力が得られないのですが、どうすればよいでしょうか。
A 最寄りの労働基準監督署に相談してください。労働基準監督署がアドバイスしたり、会社を調査、指導するはずです。
◎過去の負担分も戻る
Q 労災保険の制度を知らなくてとりあえず、健康保険証を使って治療をしてもらいましたが、労災への切り替えはできますか。
A できます。原則的に最初から労災申請する時と同様に所定の用紙を病院に提出すれば、過去の自己負担分も戻ってきます。労災保険を請求する権利は時効があり、治療費や休業補償は個々の治療や休業日から2年間です。例えば、5年前に事故が発生した場合でも、ずっと治療、休業が続いている時は2年前から今日までの分の治療費や、休業補償が支払われます。場合によって手続きや時効が違うことがありますので、労働基準監督署や巻末の支援団体にも相談をしてください。本人が死亡した場合の遺族補償給付の時効は5年です。
◎会社未加入でもOK
Q 私の会社は0細企業で「労災保険に入っていないから、労災は使えない」と言われましたが、労災保険の適用をあきらめるしかないのでしょうか。
A 労災保険は事業を開始したら、自動的に保険関係が成立する強制保険です。労災になれば、会社が加入手続きをしているのか、いないのかは無関係に適用されますので、労働基準監督署で申請手続きをしてください。そうした会社は労災事故が起きると、未加入が発覚することになり、2年間にさかのぼって保険料を徴収されます。
◎仕事中なら自分のミスでも適用
Q 仕事中、私の不注意でけがをしてしまいました。労災保険は適用されるのでしょうか。
A 適用されます。労災保険の補償給付は労働者の過失の有無とは関係なく支給されます。わざと事故を起こさない限り問題ありません。
◎休業による解雇は禁止
Q 仕事中にけがをして入院していたところ、社長から「働けないので辞めてもらう」と解雇を通告されました。
A 労災であれば、入院など休業中とその後の30日間は解雇が法律で禁止されています。従わないと社長は刑罰を受けます。その期間を過ぎても理由のない解雇はできません。詳しくは労働基準監督署に相談をしてください。
◎後遺症に年金や一時金
Q 労災保険が適用されると、本人の負担や補償はどのようになるのでしょうか。
A 毎月の賃金25万円の人が仕事中にけがをして、治療費に100万円かかり、4ヵ月仕事を休んだ場合、健康保険の扱いにすると治療費の3割に当たる30万円は本人負担になりますが、労災が適用されると本人負担はゼロです。休業に対しては、健康保険では平均賃金の60%に当たる約60万円が支払われますが、労災保険では80万円が支払われます。また、休業期間が治療の開始から1年半を超えた分は、健康保険では1切支払われませんが、労災保険ではそれ以降の分も支払われ、後遺症(障害)が残ると、労災では年金または1時金が出ます。
◎全国に相談窓口
Q 労働基準監督署のほかに相談できる団体は。
A 例えば「全国労働安全衛生センター連絡会議」に所属する団体が全国にあります。
●全国労働安全衛生センター連絡会議 https://joshrc.net/
●各地の安全衛生センター連絡先 https://joshrc.net/localcenter