毎日新聞社大阪本社 労災隠し取材班/(2004.11.15)web版

■なくせ労災隠し■労働基準監督署、標準期間を1割が超過 放置、書類紛失も

労災保険に関して、各地の労働基準監督署が行っている労災認定作業に時間がかかり過ぎるケースが相次いでいることが、総務庁の行政監察結果で分かった。労災認定に要する期間は、労働省が「標準処理期間」として一定の期間を定めているが、労働基準監督署が処理する認定の約1割がこの標準期間を上回り、ニカ月も申請が放置されていた例もあった。労災保険で処理すべき事故が健康保険扱いとされる事例の多発が明らかになっているが、労働基準監督署の対応の不備が「労災隠し」につながっている一面が浮き彫りになった。

労災の認定は、申請を受けた労働基準監督署が事故の発生状況や医師の診断書などを調べて決定する。労働省は負傷など原則1ヵ月・障害3ヵ月・疾病6ヵ月-など認定に要する期間の「標準処理期間」を定めている。
総務庁は、全国の343労働基準監督署のうち19署での実態を調査した。その結果、1998年3月に支給決定された約1万5000件のうち1割近い約1100件が、標準処理期間を上回っていた。疾病に関する決定では、申請後1カ月以上たって調査に着手しているケースが3割以上もあった。

中には、申請を受けた労働基準監督署から事業所のある労働基準監督署に引き継ぐのに4カ月もかかった。本人からの面接聴取の4カ月もあとに医師に照会し、最終決定まで2年以上かかった。事務が繁忙だとして2ヵ月も放置していた-などのケースもあり、総務庁は「被災労働者の早急な救済を図る観点からも、一層迅速な処理を図る必要がある」と厳しく指摘している。

「労災隠し」をめぐり、毎日新聞に寄せられた情報の中にも「労働基準監督署の担当者が異動し、書類の再提出を求められた」「労働基準監督署が書類を紛失した」「対応が遅く、途中経過を要求しても相手にされなかった」などと、不手際を指摘する声が相次いだ。ある男性は「『認定には時間がかかる』と言われ、認定まで負担する費用が高額なため、健康保険扱いにした」と打ち明けた。

労働省労働基準局補償課は「総務庁の通知を受けて、認定処理を迅速に行うよう各労基局に指示した。問題のあるケースには、こちらから出先機関に出向いて指導することもある」としている。

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