毎日新聞社大阪本社 労災隠し取材班/(2004.11.15)web版

■なくせ労災隠し■被害の訴え続々「労働基準監督署も取り合ってくれず」

労災保険で扱うべき多数の事故が健康保険で処理されていた問題で、読者から”労災隠し”の被害を訴える声が続々と毎日新聞に寄せられた。「事故後、退職を強要された」「元請けから労災扱いにするなと電話が入った」「搬送された病院から帰社を命じられた」など、あの手この手の労災隠しが浮かび上がった。労働基準監督署の対応を疑問視する声もあり、問題の根深さをうかがわせた。

保険会社の女性外交員は2000年7月下旬、営業で自動車に乗って交差点で右折のため一時停止中に、タクシーに追突された。この事故で、女性はむちうち症を患い、ニカ月以上仕事を休んだ。過失割合は相手方100%だった。

ところが、女性が休職を願い出ると、会社は「会社の規定で休職にできない」と言い、労災についても「労災認定が下りるまで時間がかかる。あなたにとって、メリットもデメリットもない」と取り合わなかった。「外傷がないだけに、『具合が悪い』という振りをあなたがすれば、分からない」と、仮病を使っているかのようにも非難された。

10月上旬に治療を終え、職場に呼び出された女性に対して、会社側が差し出したのは退職関連の書類だった。退職理由として、体調不良と書き込もうとした女性に、会社側は「自己都合にしてくれ」と指示した。会社側が作成した文書によると、休業した期間は欠勤扱いで、給与の支給はなしだった。

労災認定の手助けをしている民間団体「関西労働者安全センター」によると、こうした会社の対応は次の点で、うそか誤りだ。すなわち、①仕事中に事故にあったのに休職にできないという規定は無効。②事実関係が明確な場合は、2週間程度で労災認定がおりる見通し。③労災認定によってその女性には休業補償給付として平均賃金の6割及び休業特別支給金として平均賃金の2割が支払われるほか、もし後遺症が残った場合は障害補償給付などが受けられる。さらに、労災では休業期間プラス30日間の解雇制限もある。

女性は無職になった。「会社を信用してきたのに、自己保身を図る上司や会社にうまく丸め込まれたように感じる。1生懸命働いてきたのに、労災はおろか、欠勤扱いにされて非常に悔しい。労災を隠すための退職強要ではないか」と、会社側の対応に不信感を募らせた。

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