毎日新聞社大阪本社 労災隠し取材班/(2004.11.15)web版

労災患者の診察でアンケート 28%が健康保険で医療費を請求 大阪府医師会が調査[2000.11.15]

大阪府医師会が、労災患者の診察について、府内の医療機関を対象にアンケート調査したところ、約38%が「労災申請の手続きに必要な書類を事業主が患者(従業員)に渡さないためにトラブルが起きた」と答えていた。さらに「やむを得ず健康保険で医療費を請求した」との回答も約28%あった。

本来労災扱いすべきなのに、治療費の自己負担が生じる健康保険扱いになっていた”隠れ労災”が、過去10年間で58万件に上ることが社会保険庁の調査で判明しているが、同医師会は「患者が正しい労災医療を受けられるように労働省が厳しい行政指導をする必要がある」と指摘している。

調査は、大阪府内すべての労災指定の病院や診療所計1324機関を対象に1994年~95年に実施された。回収率は61%。

それによると、労災による負傷であるのに、事業主が労災補償給付金の請求書類を患者に交付せず、事業主や患者とトラブルになった経験が「しばしばある」は2・6%、「時どきある」は35・5%で、計約38%に上った。請求書類は、患者が医療機関を通じて労働基準監督署に提出するもので、これがなければ患者は労災補償給付金を受給できず、医療機関も労働基準監督署に医療費を請求できない。

これら約38%の医療機関に、請求書類の提出を求めた場合の患者の対応について(複数回答)たずねたところ、「受診しなくなった」が19%、健康保険扱いや自費扱いを要求されたなどの「その他」も36%あった。書類の提出がなかった場合について(複数回答)は、「やむを得ず健康保険扱いにした」が74%、「自費扱いとし、患者または事業主に医療請求した」が65%、「医療機関が治療費をかぶった」が11%あった。「健康保険扱いにした」は、アンケート回答総数からみれば28%、「自費扱い」は25%にあたる。

同医師会の八幡雅志理事(労災担当)は「医療機関としても、解雇の恐れなど患者の弱い立場を考えると、労災適用を強く言いにくいことがある。労働省が事業主に厳しい指導をしないと、労災隠しはなくならない」と指摘している。

2000111528%労災を健保で、38%事業主書類渡さず大阪府医師会調査毎日新聞大阪本社 

3 報道記事から(1)“隠れ労災”58万件・・← 目次 →3 報道記事から(3)■なくせ労災隠し■被害の訴え