厚生労働省の「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に係る労災認定事例」に2つの事例-タクシー乗務員と港湾荷役作業員-が追加/2020年9月30日

厚生労働省「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に係る労災認定事例」

事例9)タクシー乗務員

タクシー乗務員のIさんは、乗客輸送の業務に従事していたが、発熱の症状が出現したため、PCR検査を受けたところ新型コロナウイルス感染陽性と判定された。
労働基準監督署において調査したところ、Iさんの感染経路は特定されなかったが、発症前の14日間の業務内容については、日々数十人の乗客(海外や県外からの乗客を含む)を輸送する業務を行っていたことが認められ、感染リスクが相対的に高いと考えられる業務に従事していたものと認められた。
一方、発症前14日間の私生活での外出については、日用品の買い物などで、私生活における感染のリスクは低いものと認められた。
医学専門家からは、密閉された空間での飛沫感染が考えられるなど、当該乗務員の感染は、業務により感染した蓋然性が高いものと認められるとの意見であった。
以上の経過から、Iさんは、新型コロナウイルスに感染しており、感染経路は特定されないが、従事した業務は、顧客との近接や接触が多い労働環境下での業務と認められ、業務により感染した蓋然性が高く、業務に起因したものと判断されることから、支給決定された。

事例10)港湾荷役作業員

港湾荷役作業員であったJさんは、トラックへの荷渡し業務等に従事していたが、発熱の症状が出現したため、PCR検査を受けたところ新型コロナウイルス感染陽性と判定された。
労働基準監督署において調査したところ、Jさんの感染経路は特定されなかったが、発症前の14日間に、荷渡しの際の確認のため、日々不特定多数のトラック運転手等と近距離で会話を行っており、感染リスクが相対的に高いと考えられる業務に従事していたものと認められた。
一方、発症前14日間の私生活での外出については、日用品の買い物などで、私生活における感染のリスクは低いものと認められた。
医学専門家からは、事業場において不特定多数の者との近接・接触の機会が認められ、当該作業員の感染は、業務により感染した蓋然性が高いものと認められるとの意見であった。
以上の経過から、Jさんは、新型コロナウイルスに感染しており、感染経路は特定されないが、従事した業務は、顧客等との近接や接触が多い労働環境下での業務と認められ、業務により感染した蓋然性が高く、業務に起因したものと判断されることから、支給決定された。

いずれも、同感染症の労災認定の考え方について示した令和2年4月28日付け基補発0428第1号「新型コロナウイルス感染症の労災補償における取扱い」の記の2の(1)のウの(イ)「医療従事者等以外の労働者であって感染経路が特定されない場合」であって「顧客等との近接や接触の機会が多い労働環境下での業務」に該当するものとされている。

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