揺れる梯子(ハシゴ)の上でサーカスをするように働く 電車線の労働者、50年目に労組誕生 2020年9月17日/韓国の労災・安全衛生
漆黒の闇の中で、ちゃんとした固定装置もなく、揺れる梯子の上で電線を補修する全国の電車線の労働者が、50年目にして初めて声を出した。これらは国の基幹網を扱うが正規職でなく、日雇いとして『危険の外注化』構造に置かれている。
民主労総・全国建設労組は16日午前、ソウル駅前で『電気鉄道の日雇い労働者、鉄道公団の危険の外注化の実態暴露』の記者会見を行い、危険な労働現場を告発した。
電車線の労働者は4.6mの高さの電線を補修する時、A型三角梯子一つに頼る。梯子にはアウトトリガーのような支持台はなく、デコボコした鉄道の砂利道の上に、木の棒と桟木をあっちこっちに噛まして水平を合わせる。労組は「A型三角梯子の使用を禁止し、替わりの装備を支給しなければならない」と要求した。
電柱の上の電気線を修理する時は『ムカデ足梯子』を利用する。労働者が溶接して作ったムカデ足梯子は正式な道具ではない。電柱に固定されていないために揺れて、危険を承知で作業をする。電車線の労働者には必須の業務場所なのに、その場所で仕事をするための安全装備はないのだ。
10mを越える高さの『ビーム(beam)』という構造物の上に登った時は、足を滑らせた時に備える命綱がない。暗い夜中にヘッドライト一つを頼りに、ビームの上に立って横断する。労組は「民間の現場でも命綱を掛けられるように親綱を設置した後で移動するが、鉄道公団の現場では安全装備なしで横断している」と話した。
労組は「梯子の上でサーカスをするように仕事をして、ビームの上を曲芸でもするように行き来して、足場なしでぶら下がって仕事をしている」とし、「正式な名称もない装備を使って、原始的な作業環境で働いている」と声を強めた。
特に、これらは夜に働くことが多い。電車の線路を新しく敷く新設作業などは昼間だが、保守作業は列車が行き来する線路ではできないために、列車が停まり、電気の供給も切られた夜の内にしかできないからだ。終電車が過ぎて、一番電車が出発するまでの3~4時間の間に作業を終わらせなければならない。
危険な現場で、早く仕事を終えなければならないために、事故は頻繁に起きる。今年だけで10件発生した。その内の7件が墜落事故だ。14日の明け方、蔚山の鉄道現場で働いていた一人の労働者は、A型梯子で作業をしていて墜落し、現在も入院中だ。
労組が9月11日から5日間、113人の電車線の組合員にアンケート調査をした結果、回答者のうち58.2%(64人)が、仕事をしていて1~3回は事故に遭ったことがあると答えた。電車線の事故のパターンでは、93.6%(102人)が墜落を挙げた。墜落事故はA型梯子と電柱、ビームの上で発生するとした。これらは命綱を掛けられる装備の『スカイ』等、認証された機械装備が必要だと答えた。
全国に350人と思われる電車線の労働者は、KTX・セマウル・ムグンファの運行に必要な電車線を設置・交換し、嵐などで電車線が切れた場合に復旧するなど、国の基幹網を担う。しかしこれらは正規職ではない。日雇い労働者だ。鉄道公団-元請け-下請け-労働者に繋がる多段階構造で、鉄道公団と元・下請けのいずれもが、労働者の安全を蔑ろにする『危険の外注化』だ。
電車線の労働者は今年1月に初めて労組を作った。1971年にソウル地下鉄1号線が着工された以後から働いてきて、50年目だ。
労組は「今まで私たちは『今日も無事で』という願いで、家族と食べるために働いた。誰一人として認められなくても、大韓民国の鉄道の発展に寄与するという自負心で、青春を捧げて働いた。」「それでも、国土交通部、鉄道公団、そして工事を施行する業者の誰もが、私たちの労働を尊重するどころか、私たちを自分たちの金儲けの手段以上には思わなかった」と批判した。
続いて「私たちは費用削減の名目によって、ロープ一本に命を懸けて働かなければならなかったということを知った。生きていくために、あらゆる嫌がらせにも一言も言えず、奴隷のように働いた。」「私たちはこれ以上利用されるためだけに生きていかないために、この場所に立った」と話した。
この日の記者会見に参加したペ・ジョンマン建設労組電車線支部長は「50年を影として生きてきた。50年間、電車線支部は、大韓民国のあらゆる列車で事故が起こり、電線が断線した時、列車が走れない時、組合員が補修し、復旧してきた。」「今まで安全に対する措置を執って欲しいと国土交通部、鉄道公団と面談した。しかし今でも、安全に対しては公文書の一枚も送ってこない」と糾弾した。
ハン・マンホ建設労組電車線支部首席副支部長は「原始的な、50年になる労働現場を変えなければならない」とし、「全国鉄道網を建設し、補修する労働者の死と障害は、絶対になくさなければならない」と強調した。
2020年9月17日 民衆の声 キム・ミンジュ記者