良性石綿胸水で労災認定、石油精製プラントで改修・保温材交換・解体作業立ち会いでアスベストばく露

概要・解説

本件は、1965年から1980年代前半にかけて、石油精製プラントでの改修・保温材交換・解体作業の立ち会いを行うことでアスベストにばく露した石油会社社員が良性石綿胸水を発症したことにより労災申請し、リュウマチの既往歴との鑑別、労災申請中に発症した急性骨髄性白血病闘病中に行われた本省協議(良性石綿胸水は前例が本省協議に付されることとされている)を経て、労災認定に至った事案である。

中皮腫疑いから良性石綿胸水と診断

岩国市在住のFさんは、昨年2月頃からそれまで感じたことのない疲れが出るようになってきた。3月に入るとそれが顕著になり、胸をチクチクするような痛みが感じられるようになった。
かかりつけのクリニックで3月末にレントゲンとCTを撮ったところ、中皮腫の疑いがあるので岩国医療センターで精密検診を受けるよう勧められた。

早速受診、5月になって担当医から最終的病名が「良性石綿胸水」であると告げら、「今後は定期的に症状を監視していく、治療の方法はない」と言われた。

息切れが相変わらず起こり、とくに夜中は咳き込み眠れない状況だったので、医療センターには信頼をなくした。この間当センターにも相談が寄せられ、友和クリニックを受診して治療を継続中である。

Fさんは、1965年に旧興亜石油に就職。昭和40年代から60年代にかけて、灯油、軽油、ガソリン製造装置で働いていた。通常は油の製造に従事していたが、年に一度メンテナンスがあり、このときは立会作業が主な仕事だった。

内容は、設備の点検、配管などの改修・交換や保温材の解体取り替え工事などの立ち合いをしていた。当時の作業環境はけっしてよかったとはいえず、粉じんやアスベストが飛散していた。
1970年頃からは装置の近代化が進み、解体・新設が行われた。したがって、この時期に一連の工事中に飛散したアスベスト粉じんを吸い込んだ可能性がある。

昨年6月に岩国労働基準監督署に労災請求を行った。Fさんが抱えているリュウマチによる胸水の可能性を払拭する主治医の意見書も提出。Fさんは、8月中旬頃から体調が急変し翌月入院された。急性骨髄性白血病と診断されたとのことで、ふたつの病気をかかえながら闘病生活を送っていた。

本省協議で労災認定

良性石綿胸水の認定はすべて本省協議の対象とされている。岩国労基署は「年末までには結論は出るだろう」と言っていたが、連絡すると「本省から何の連絡もなし」。年が明けて「本省内部で決裁の手続き中」、1月21日に労災認定の通知を受けたとの連絡が家族からあった。

昨年末に見舞ったときにはFさんは「一日も早く労災認定を受けて家内を安心させてやりたい」と言っていたのだったが、2月6日に容体が急変され、亡くなられた。残念でならない。

広島労働安全センター

安全センター情報2015年5月号