安全で健康的な労働条件に対する労働者の権利は悲しいことに、普遍的人権というにはほど遠い-国連特別報告者バスク・トゥンジャク
安全で健康的な労働条件に対する人権
国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)ニュース
2019年10月23日
「50年以上に及ぶ国際的な認識、科学・医学・技術の想像もつかなかった進歩や一部の諸国・文脈における具体的な努力にもかかわらず、安全で健康的な労働条件に対する労働者の権利は悲しいことに、普遍的人権というにはほど遠い恩恵にとどまっている」と、人権と有害物質・廃棄物に関する国連の特別報告者バスクト・トゥンジャクは言う。
トゥンジャクは諸国に対して、安全で健康的な労働条件は世界的に認められた人権であり、国際労働機関(ILO)の推計は、毎年270万人の労働者が不安全な労働条件や曝露のために死亡していることを示していると語る。
2007年にファン・ユミは、病院に向かう父親のタクシーのなかで亡くなった。それは彼女が消費者向け製品を製造する仕事を誇りをもってはじめてから5年後のことであり、彼女はその仕事のなかで意味のある同意なしに毎日有毒物質に曝露したようだ。ユミは、白血病と診断されてから20か月後に23歳で亡くなった。
娘が亡くなって以来、ユミの父親は、二度と被害者がないようにするために彼ができるあらゆることをした。虐待の再発を防ぐという使命のなか、会社からの相当額の補償の申出を彼は繰り返しはねつけた。ファン・サンギと他の人権擁護者らによる正義と責任を求める11年のキャンペーンの後に会社は、実効性のある救済に対する200人をこえる労働者の権利を現実のものにするために、補償と予防対策に合意した。トゥンジャクはこの事例について、この成果はひとつの前進だが、ひとつの国の、ひとつの産業の、ひとつの会社が関係するだけであると言う。
「労働者は疑いなく有毒な曝露の影響をもっとも受けやすい。彼らは最初に、そしてもっとも曝露する」とトゥンジャクは言う。「労働者のなかでも、一定の部門で働く者や貧困のなかで暮らす者、その子供たちもまた有毒物質への曝露の負担を負う生殖年齢の労働者など、一層影響を受けやすく、また、より適切に保護されていることがなさそうな者たちもいる。」
この点について彼は、ある先進国のハイテク部門で、「その化学混合物への曝露のよく知られたリプロダクティブヘルス・リスク」について使用者から何も知らされないまま、「緑色のネバネバ」とニックネームをつけた正体不明の物質を扱う仕事を毎日行ったイヴェットの事例に言及する。イヴェットの子供は、神経発達が取り返しがつかないほど影響を受けたために、4歳になったときに歩くことも、話すこともできなかった。いま彼は30代だが、予防することのできた障害のある生活に直面し続けている。
諸国のために有害物質への曝露を終わらせるための15の原則を概述した、トゥンジャクの最新の報告書(安全センター情報2020年1・2月号73頁)は、人権と有害物質という委託事項のもとでの25年間の調査の成果である。これらの諸原則は、国連ビジネスと人権に関する指導原則、有毒物質に関するILO条約や多国間環境協定のうえに構築されている。
報告書の勧告は、第42回人権理事会で採択された決議( 安全センター情報2020年1・2月号 )のなかで繰り返された。
[中略]トゥンジャクの諸原則のうちの7つは、予防に焦点を置いている。
[ 中略]原則8~11は、安全で健康的な労働に対する人権と情報、参加及び結社に対する労働者の権利との間の相関に基づいて設定されている。[中略]最後の4つの諸原則は、実効性のある救済にアクセスする労働者の権利を扱っている。[以下略]
※https://www.ohchr.org/EN/NewsEvents/Pages/FifteenPrinciplesProtectWorkers.aspx
(翻訳:古谷杉郎)