建設労働者の労働者性認めぬ不当判決-東京地裁●東京

2023年12月、労働者と認めなかった労働基準監督署の判断を不当として、労災(振動障害)の不支給決定取り消しを求めて東京地裁に提訴した、アンカー工のNさん。2025年9月24日、東京地裁は、Nさんを労働者と認めず、一人親方であるとして労災の不支給決定を維持する不当判決を下した。
東京地裁は、Nさんの労働者性について、①会社の指揮監督下にあったかどうか、②仕事を断る自由があったかどうか、③時間や場所の拘束があったかどうかなど、国が1985年に定めた「労働者性」の判断基準の枠内で検討した。中川さんの弁護団は、国の判断基準が窓意的で不当なものであると指摘したが、裁判所はその主張を退けた。
さらに、裁判所の検討内容は、現場の実態を無視したずさんなものだった。裁判所は、Nさんを雇用していた建設会社E社について、Nさんはその指揮監督下になかったと判断した。また、E社からの仕事の依頼を断る自由もあったと判断された。時間の拘束性については、毎日夕方5時まで現場での業務に拘束されていたと認めつつ、E社の就業規測で定められた終了時間と異なるという理由で否定された。場所の拘束性についても、もともと建設現場に縛られる仕事だから労働者性とは関係ないと判断された。
一方、判決では、Nさんが途中からE社と雇用契約を結んでいたこと、同社で健康保険・厚生年金・雇用保険に加入していたこと、保険料が固定給から天引きされていたこと、建設現場での入場書類に「E社の労働者」と記載されていたこと、等を事実と認めた。しかし、裁判所は、それらすべてを「Eの社がNさんを労働者として扱っている外観を作出するためのものである」として否定し、労働者性を認めなかった。
近年、国土交通省が、建設現場で働く労働者を雇用して社会保険・労働保険に加入させるよう、建設業界への指導を強めてきた。E社は、こうした状況を受けて中川さんと雇用契約を結んだのだが、裁判所はそれを労働者と見せかけるE社の工作にすぎないとして、労働者と認めなかったのである。
今回の事件は、国土交通省が進めてきた建設労働者の保護政策を、労基署や裁判所が否定し、その結果、現場の労働者が振り回されるという非常に理不尽な状況になっている。Nさんは今回の判決を納得できないとして、東京高裁に控訴した。当センターとしても、裁判支援の取り組みにさらに力を入れていく。
(東京労働安全衛生センター)

文・問合せ:東京労働安全衛生センター

安全センター情報2026年1・2月号