アスベスト対策関係予算の推移~20年前策定「総合対策」の検証・見直しが必要
首相官邸ウエブサイトは、「アスベスト問題に関する関係閣僚による会合」情報として、毎年度の「アスベスト対策関係予算一覧」を提供している。今回その推移をあらためて稿末の別表に整理してみた。
〇2012(平成24)年度以前:https://www.kantei.go.jp/jp/singi/asbestos/index_before090916.html
〇2013(平成25)年度以降:
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/asbestos/index.html
同会合は、2005年12月29日の第5回で「アスベスト問題に係る総合対策」をまとめた後、2016年9月8日に一度開催しただけで、以降開催されていない。
「予算一覧」は、「総合対策」の構成-「1. 隙間のない健康被害者の救済」、「2. 今後の被害を未然に防止するための対応」、「3. 国民の有する不安への対応」-をずっと踏襲しており、これが大きな特徴のひとつである。
「アスベスト対策関係予算一覧」は、2007(平成19)年度~2013(平成25)年度は「予算案額」が示され、2014(平成26)年度は当年度「予算案額」と前年度「予算額」、2015(平成27)年度は当年度「予算額」と前年度「予算額」、2022(令和4)年度以降は当年度「当初予算額」と前年度「当初予算額」が併記されるようになっている。別表では、2013~2024年度については、次年度「予算一覧」記載の前年度「(当初)予算額」の数字を採ったことをお断りしておく。2022年度以降百万円単位で表示されているが、別表では億円単位である。
表中に記載のない、2005年度補正予算案額が1,805億円(1.-383億円、2.-1,417億円)、2006年度予算案額が126億円(1.-93億円、2.-29億円、3.-4億円)とされている(総合対策の資料1参照)。
なお、「施設整備、低利融資など、アスベスト対策に係る経費が事業費の一部であるもの(「〇〇の内訳」【別表中では「<〇〇」】と表示)については、合計額からは除いている」。2007~09年度「予算一覧」では「その他施設整備等関連(内数)」が示されていたが、2010年度以降はなくなった。2012年度以降は(「-」で表示)と注記されている。
この点については、例えば、「民間建築物における除去等のための費用」等は国土交通省公表の「民間建築物における吹付けアスベスト等飛散防止対策に関する調査結果」中の「アスベスト対策に係わる国庫補助の実施状況」(2025年5月号参照)など、他の公表資料によって部分的にせよ補足できる場合もある。
「1.(1)救済新法の制定」の「石綿の健康被害に係る医学的判断等に関する調査(環境省)」と「2.(4)代替化の推進」(厚労省/経産省)は2007~08年度のみ、「2.(3)アスベスト廃棄物の適正処理」の「石綿廃棄物適正処理方策検討調査」と「アスベスト含有経済等安全回収・処理等技術開発事業」は2007~09年度のみ、また、「1.(3)被害者救済に資する研究の推進等(科学技術振興調整費)(文科省)」と「2.(5)その他」の「アジア諸国における石綿対策技術支援費(環境省)」は2007~10年度のみの計上で、終わっているように思われる。
他方で、「3.(1)実態把握と国民への積極的情報提供」の「一般環境経由によるアスベスばく露の健康リスク評価」は、2015年度から「石綿ばく露者の健康管理に関する試行調査」、2020年度から「石綿読影の精度確保等調査」へと移行している。
クボタショックから20年の節目に、治療研究から補償まで含めた総合的健康被害対策の確立とアスベストのない未来の実現に向けて、「総合対策」/予算配分の見直しを求めたい。
安全センター情報2025年11月号


