基金6回目のホットライン実施/兵庫●アスベスト被害者救済基金

アスベスト被害者の救済に取り組む、NPO法人アスベスト被害者救済基金(神戸)は、8月27日(土)と28日(日)の2日間、全国一斉「アスベスト健康被害ホットライン」を開設した。東日本を中心に活動を展開しているNPO法人じん肺アスベスト被災者救済基金(横須賀市)と共同での取り組みで、今回で6回目となる。

昨年は、神戸の事務所に2日間で112件の相談が寄せられた。中皮腫や肺がん、じん肺を発症され、治療をされている患者さんから多くの相談があった。また、過去にアスベストを取り扱う仕事に従事された方から、健康不安に関する相談が多かったことも特徴だった。

今回、神戸の事務所へは2日間で36件の相談が寄せられた。相談者を地域別にみると、兵庫県16件、大阪府9件、京都府4件、岡山県3件で、九州・四国地方からの相談が4件だった。

疾病別にみると、中皮腫5件、肺がん2件、びまん性胸膜肥厚2件、石綿良性胸水1件、石綿肺管理区分3イが1件だった。合計すると、すでに病名が確定している方(家族)からの相談が11件もあった。

また、石綿健康管理手娠を取得されている3名から、健康不安や今後の補償に関する相談があった。その他にも、石綿労災の認定者が多数出ている職場で働き、「間質性肺炎と診断され亡くなった。仕事が原因ではないだろうか」との相談も寄せられた。

ホットラインの2日間以降も相談が続いているが、手続きを急がなければならない事案が多数あるため、アスベスト被害者救済基金では、関西・ひょうご・おかやまの安全センターの皆さんに協力を要請することにした。早速、8月末に相談事例検討会を開き、担当を決め、相談対応を開始している。

昨年、ホットラインの前日に、中皮腫を発症された患者さんのご家族から相談があった。「父が3年前に悪性胸膜中皮腫と診断された。永年、造船所で配管に保温材を巻くなどの仕事をしていた。監督署から労災と認定され、会社からは10万円のお見舞い金が支払われた。会社の対応に納得がいかない」という内容だった。ホットライン終了後にすぐ電話を入れたのだが、訃報の知らせを聞き愕然とした。相談者は、「病気がわかってからの約3年間、会社の対応について誰かに話を聞いてほしかった」と話されていた。

また、昨年の相談には、「肺がんを発症して治療をしているが、病院の医師からは肺にアスベストがあると言われた。60年ぐらい前に、町内の石綿工場に原料を運搬する仕事に3日間だけ従事した。それ以外は石綿との接触はない」という内容の事例があった。相談を受け、環境再生保全機構に請求を行なったところ、広範囲の胸膜プラークがあると認められ、今年2月に救済されることになった。「弁護士事務所に電話しでも、何処に相談しでも補償は無理と言われ続けたが、相談して良かった」と話されていた。現在は、引き続き、労災の請求を行なっているところである。

その他にも、「2019年10月に病院で肺がんの手術をした。労災と認められたが、2020年10月には治癒と判断され、休業補償が止まった。補償はないのか」という相談があった。この方が勤めていた会社は、企業補償制度を設けているのだが、弔慰金の制度しかない。そこで、弁護土に企業との交渉を依頼したところ、話し合いにより合意にいたり、補償を受けることができた。

この間の相談活動を通じて、アスベスト被害者、ご遺族のなかには、一人で悩み、諦めている方が多くおられることを実感している。そうした方々のお力になるためにも、私たちは相談活動を粘り強く続ける必要がある。アスベスト被害者救済基金では、フリーダイヤルを設け、日常的にも相談に対応している。引き続き、アスベストによる健康被害を受けた方、ご家族の皆さんの相談窓口として活動を続けていきたいと考えている

フリーダイヤル 0120-349-931

文/連絡先 ひょうご労働安全衛生センター

安全センター情報2022年11月号