デジタルプラットフォーム労働における労働安全衛生:規制、政策、行動及びイニシアティブからの教訓【「4つの教訓」部分を除く】-2022年2月18日 欧州労働安全衛生機関(EU-OSHA)ポリシーブリーフ

デジタルプラットフォーム労働の増大に対する対応

この10年間、アルゴリズムを含むデジタル技術を使って労働力の需要と供給をマッチングさせるオンラインプラットフォームが、EUで急速に普及した。その破壊的な性質、急速な成長、高い可視性や伝統的に厳しく規制されてきた分野への集中を考えると、デジタル労働プラットフォームはすぐに政策や利害関係者のコミュニティのレーダーに映り、(不当な)競争、課税、プラットフォーム労働者の雇用形態や労働条件などの問題で活発な議論を引き起こした。このような状況のなかで、企業、労働者と労働者を代表する組織は、これらの問題に対処するために政策立案者に対し行動をとるよう求めた

しかし、当時は、そうするとイノベーションにブレーキがかかり、EUがデジタル経済で乗り遅れることになると主張して、規制が早すぎたり厳しすぎたりするのは避けたいと訴える声もあった。デジタルプラットフォーム労働の急成長と異質性の増大は、「動く標的」を狙うのではなく、規制を待つことを支持する論拠とみなされた。さらに、デジタルプラットフォーム経済が国やセクターによって異なる速度で発展したため、すべての政策立案者が行動を起こす緊急性を感じたり、この「新しい」現象とその影響についてよく理解していたわけではなかった。とりわけ地方や地域の政策立案者は、ウーバーのようなグローバル・プラットフォームが自分たちの都市に参入したことで、最前線に立たされた。最後に、デジタルプラットフォーム労働に関する知識やデータの不足が、規制の対応をさらに複雑にした。

結果的に数年前までは、デジタルプラットフォーム労働への対応は、全体としてかなり限定的なものにとどまっていた。当時実施されていた対策やイニシアティブは範囲が狭く、包括的な戦略の一環としてではなく、場当たり的に実施されたものであった。場合によっては、デジタルプラットフォーム労働を直接対象としていないこともあった。デジタルプラットフォーム労働は、まさに既存の規制の枠組みに対する挑戦である。労働条件と労働安全衛生(OSH)に直接関係したデジタルプラットフォーム労働に対する初期の対応はわずかだった

しかし、より最近では、プラットフォーム労働者が経験する可能性のある過酷な状況についての報告を受けて、デジタルプラットフォーム労働者の労働・雇用条件とOSHに議論がシフトしている。このため、EUレベル及び加盟国において、対策、イニシアティブ、アクションが採用されるようになった。とくに関連性が高いのは、デジタルプラットフォーム労働における労働条件の改善を目的とした欧州委員会が予定しているイニシアティブであるが、いくつかの加盟国の関係者も課題のいくつかに取り組む努力を行ってきた。EUの2021~2027年労働安全衛生に関する戦略的枠組みは、とくにデジタル化に起因する労働形態の変化が、プラットフォーム労働について明確に言及した、新たな及びアップデートされたOSHソリューションも必要としていることを強調している。

本ポリシーブリーフは、デジタルプラットフォーム労働者の安全衛生に関連する規制、政策、戦略、イニシアティブ、行動及び計画から得られた主要な知見と教訓を強調している。これは、4つの選択された規制、政策、慣行の詳細なケーススタディ、学術文献及びグレー文献のレビュー、調査によるEU-OSHA[欧州労働安全衛生機関]の各国フォーカルポイントとの協議に基づいて構築されている。

デジタルプラットフォーム労働の定義とその主要な関係者

デジタルプラットフォーム労働:デジタル労働プラットフォームを通じて、またはデジタル労働プラットフォーム上で提供される、若しくはデジタル労働プラットフォームで仲介される、すべての有償労働。プラットフォーム労働の主な特徴は、(i)有償労働がデジタル労働プラットフォームを通じて組織/調整される、(ii)特定のタスクの実行または特定の問題の解決を目的とする、(iii)アルゴリズムによる管理を用いて、実行された労働とプラットフォーム労働者のパフォーマンスと行動を割り当て、監視及び評価する、(iv)三者(プラットフォーム、顧客、プラットフォーム労働者)が関わる、(v)(プラットフォームの条件として定められているように)非正規労働契約が普及していてプラットフォーム労働者が自営業者として分類される傾向がある、である。その結果-OSHの分野を含め-リスクの法的責任及び広義の責任が労働者に転嫁されている。

デジタル労働プラットフォーム:プラットフォーム労働者が提供する労働力の需要と供給のマッチングを促進する、事業者が所有及び/または運営するデジタル技術を利用したオンライン施設またはマーケットプレイス。

デジタルプラットフォーム労働者:法的な雇用形態のいかんに関わらず、デジタル労働プラットフォームを介し て、多かれ少なかれ管理される労働力を提供する個人。

デジタルプラットフォーム労働のOSH課題

プラットフォーム労働として行われるタスクに直接関連するプラットフォーム労働に関連したOSHリスクは、プラットフォーム経済以外でそのようなタスクを行う際に他の労働者が直面するリスクと同様である。しかし、デジタルプラットフォーム労働の性質とそれが行われる特定の条件が、これらのOSHリスクを悪化させ、OSHリスクの予防及び管理を複雑化させる可能性がある。これは、以下の要因に関連している。

デジタルプラットフォーム労働者の雇用形態の判定:2つの問題が生じる。第1に、デジタルプラットフォーム労働者の雇用形態の正しい判定は、プラットフォーム労働の性質と特徴(三者間の労働関係、オンデマンド契約など)のために複雑である。第2に、デジタルプラットフォーム労働者は通常、プラットフォームによって、その名称と条件において自営業の契約者として分類されるが、それが誤った分類である可能性がある。しかし、EUレベル及び多くの加盟国では、法的なOSHの枠組みは労働者に対してのみ適用される。

アルゴリズム管理の使用:アルゴリズムを使用して、プラットフォーム労働者の労働、パフォーマンスや行動を割り当て、監視及び評価することは、プラットフォーム労働者、プラットフォーム及び顧客の間のパワーバランスに影響を与え、プラットフォーム労働者の自律性、仕事のコントロールや柔軟性を損なうが、これらの特徴は、プラットフォームによって、プラットフォーム労働の中心概念として紹介されることが多い。これは、ストレス、不安、疲労、うつにつながり、プラットフォーム労働者の身体的・精神的健康、安全及び全体的な福利を悪化させる可能性がある。

職業上の孤立、ワークライフバランスの悪さ及び社会的支援の欠如:プラットフォーム労働は、労働者の他のプラットフォーム労働者、プラットフォーム及び顧客との接触が限られているか、またはまったくないために、労働の個人化、身体的・社会的孤立、ワークライフコンフリクト、社会的支援の全体的欠如によって特徴付けられる。これは、睡眠障害、疲労困憊、仕事からの回復困難、ストレス、うつ、燃え尽き症候群、孤独、自分の仕事と個人生活への全体的な不満を生じさせる。

労働の一過性と境界のないキャリア:デジタルプラットフォーム労働者は、慢性的な仕事及び収入の不安定さを経験している。これは、他の労働者との激しい競争の中で、一時的で短期のタスクを多くこなし、行うことのできるタスクの数をコントロールできないことが多く、賃金率も決められない状態であることから生じている。また、これは、不安やストレスの原因となり、労働者の健康に影響を与えることがわかっている。

デジタルプラットフォーム労働の増大に対する対応のマッピング

過去5年間に、プラットフォーム労働を対象とした対策やイニシアティブをマッピングする試みがいくつか行われてきた。これらの努力は、プラットフォーム労働者に対するパンデミックの影響と、これがプラットフォームや政策立案者によってどのように対処されてきたかに光を当てるために、COVID-19危機のなかで強化されてきた。2021年10月時点で、Eurofoundのプラットフォーム経済リポジトリデータベースは、法令、労働協約、社会パートナーによる行動など、170のイニシアティブと44の政策文書で構成されている。

専門家の調査に基づき、欧州委員会(2020年)は、EU-27にアイスランド、ノルウェー、イギリスを加えた諸国で177の対応(例えば行動、法令、政策など)を確認した。ほとんどの対応は、デジタルプラットフォーム労働者の雇用形態、代表性、所得や社会的保護に関連していた。対応は、「トップダウン」と「ボトムアップ」の対策に分けられた。トップダウンの対策には、法令(基準、手続または原則の設定により政策を公式化した法律)、判例(司法判断)や、行政や監督官の行動(例えば公共雇用サービス、社会保障機関、監督官による指示の作成、意識啓発、宣言の発出など)が含まれる。ボトムアップの対策には、労働協約や社会パートナーのイニシアティブ、プラットフォームによる行動、プラットフォーム労働者による行動などがある。

欧州委員会の調査(2020年)は、当時、フランスとイタリアを除いて、プラットフォーム労働者の労働条件や社会的保護を直接対象とした法令を導入した国はなかったが、ほとんどの国が、例えば非正規労働者や自営業者の権利や保護を強化するなどして、間接的に彼らの労働条件や社会的保護に取り組む法令をもっていたと報告している。また、例えばベルギー、デンマーク、フランス、イギリス、スウェーデンなどにおける行政や監督官による活動を明らかにしたが、そのすべてが労働条件やOSHに関連していたわけではなかった。実際、OSHの問題は政策立案者によってほとんど見過ごされているようであった。ボトムアップの対応としては、プラットフォームが提供する基本的な安全教育や労働災害・職業病に対する保険、プラットフォームによる基本的な個人保護具(例えばヘルメット)の提供などの例が挙げられた。OSHは、労働組合や労働者を代表する草の根組織から、重要な懸念事項として提起された。2021年の労働法、雇用及び労働市場政策の分野における欧州専門技能センターのプラットフォーム労働に関するテーマ別レビューは、この調査結果を更新して、その主な知見を裏付けている。

EU-OSHAの各国フォーカルポイントとの協議により、本研究の目的は、OSHの観点からこうした概観を更新することとされた。協議は、(i) 政府または公的機関(例えば法令、裁判など)、(ii) OSH当局または労働監督官、(iii) 社会対話を含む社会パートナー、 (iv) プラットフォームまたはプラットフォーム労働者(または彼らの団体)によってとられた対策、及び (v) その他の対策、の5種類の対策手段に焦点を絞った。協議では、デジタルプラットフォーム労働とそのOSHへの影響に関する認識レベルがEU加盟国間で大きく異なることが確認され、それらに対処するためにこれらの国内の異なる関係者によってとられたアプローチの違いが強調された。各国のフォーカルポイントによると、デジタルプラットフォーム労働は比較的新しい傾向であり、非典型的労働の新しい形態と理解されており、そのことはプラットフォーム労働者の雇用形態や(OSHを含む)社会的権利などの問題についての議論に拍車をかけているが(フランス、クロアチア、オーストリア、ポーランド、フィンランド)、一部の国では、デジタルプラットフォーム労働は限られた範囲でしか注目されていない(ラトビア、リトアニア)。議論に参加しているアクターは、政策立案者、行政、プラットフォーム、社会パートナー、専門家などである。多くの国で、デジタルプラットフォーム労働に関する証拠の欠如が、OSH問題を含むさらなる研究とデータ収集(の要求)の引き金となった。フランスなど数か国では、専門のプラットフォーム労働観測所が設立された。各国のフォーカルポイントは、デジタルプラットフォーム労働におけるOSHリスクを認識しているものの、自国のOSH対策に関して言えば、雇用関係の認定が困難であることを指摘して、プラットフォーム労働者が通常考慮されていないことを認めている(オーストリア、フィンランド)。いくつかの国は、デジタルプラットフォームまたはデジタルプラットフォーム労働を対象とした法令-発表済み、審議中またはすでに施行中のいずれか-を報告しているが(フランス)、これは一般的に特定の種類のプラットフォームまたはプラットフォーム労働のみを対象としているようだ(運輸業)。クロアチアとポーランドのフォーカルポイントからは、監督官による行動が報告され、フィンランドのフォーカルポイントは、プラットフォーム労働は関心のあるテーマであると指摘した。社会パートナーによるイニシアティブや行動はわずかしか確認されず(やはり運輸部門)、OSHに関連したプラットフォームによるイニシアティブはさらに少ない(例えばリトアニア企業連合が設立したデジタルプラットフォームを統合するワーキンググループは、配達員のための事故保険の提供について議論している)。これら各国フォーカルポイントからの情報と洞察は、以下でより詳細に紹介するケーススタディの選定に反映された。デジタルプラットフォーム労働の課題に対処することは、現在、EUレベル及び加盟国の多くで優先されているものの、Eurofoundのプラットフォーム経済リポジトリ、ECE[欧州専門技能センター](2021年)と欧州委員会(2020年)の調査、及びEU-OSHAフォーカルポイントとの協議で得られた情報から、規制、政策、戦略、計画、イニシアティブ及び行動でOSHと直接関係したものは少ないことが明らかである。相対的に多くの対策は、例えば労働関係の性質を明確にしたり、データ収集を促進することによって、間接的にOSHを取り扱っている。

選定されたOSHに焦点をあてた規制、政策、イニシアティブ及び行動にズームイン

OSHとデジタルプラットフォーム労働の分野における関連する規制、政策、戦略、イニシアティブ及び計画についてさらに理解を深めるため、そのような対策の例を提供する、4つの詳細なケーススタディを作成した。これらのケースは、対策の種類(例えば法令、監督官のイニシアティブなど)、関与する関係者(例えば政府、監視及び執行機関、社会パートナー)、対象とするプラットフォーム労働、プラットフォームまたはプラットフォーム労働者の種類(例えば運輸部門のみ、すべてのデジタルプラットフォーム労働者)、課題の範囲(例えば雇用形態、労働条件、デジタルプラットフォーム労働の特徴-OSHが直接または間接的に扱われているか?)など、いくつかの基準に基づいて選定された。イタリア(ボローニャ憲章)とフランス(法令枠組み)のケースは、労働条件に直接関連した法律をもつただ2つの国であることを念頭に置いて選定された。スペインのライダー法を議論したケースは、アルゴリズムによる管理に関するルールを課すとともに、一部のプラットフォーム労働者の雇用形態を明確にすることによって、デジタルプラットフォーム労働の核心に取り組んでいることから選定された。最後のケーススタディは、ベルギー、スペイン、ポーランドにおける労働・社会保障監督官による行動とイニシアティブに焦点をあてている。すべてのケースは、「もっとも困難な」または「もっとも拘束力のある」種類の対策に該当する対策に焦点を当てているが、関連するボトムアップなイニシアティブと「ソフトな法律」と関連づけることで文脈を整理している。

方法論的には、各ケーススタディは、文献とデータのレビュー、EU-OSHAの各国フォーカルポイントの情報に基づいて作成され、さらに関係者とのインタビューによって完成された。

[編注:以下の「4つの教訓」部分は省略した。→別稿参照]
・スペインのライダー法からの教訓
・ボローニャ[イタリア]の憲章からの教訓
・フランスのデジタルプラットフォームに関する法令枠組みからの教訓
・労働・社会保障監督官、OSH当局及び執行機関の行動及び経験からの教訓

政策立案者・意思決定者のための主なポイント

ポイント① 最近のデジタルプラットフォーム労働における労働・雇用条件への関心の高まりにもかかわらず、デジタルプラットフォーム労働者が遭遇するOSHリスクはほとんど見過ごされ、未(過少)対応のままである。これには-予防から管理までの-あらゆる側面が含まれる。

労働・雇用条件は最近、EUレベル及び加盟国の政策立案者や意思決定者の課題にあがっている-そうすることで、労働者に影響を与えるこれらの中核的問題に対する初期の注目不足を少なくとも部分的には克服している-ものの、とりわけOSHはまだ十分に対処されてはいない。デジタルプラットフォーム労働に関して、OSHを直接対象とした国の法令法は、EUにはほとんど存在していない。間接的にOSHをターゲットとした法令の事例は相対的に多くみられた。当局者や監督官の行動は重要であり、真の変化をもたらすことができるが、幅広い様々な障害によって妨げられており、そのなかでもデジタルプラットフォーム労働者を自営業者と分類することが主な障害として浮上している。様々な種類の-トップダウンとボトムアップ、ソフトな法律とハード/拘束力をもつ法律、異なる種類及び異なるレベルで開始される-対策を概観すると、それらの間の重要な相互作用と、ある努力がいかに他の努力を刺激しうるかを明瞭に示している。

政策立案者や意思決定者は、監視及び執行が可能な拘束力のある対策を導入することによって、OSHに大きな注意を払うことを求められている。とりわけリスクの予防と全体的なOSH政策の採用という点について、なされるべきことがたくさん残っている。政策立案者と意思決定者は、労働災害と職業病に対する単なる保険の提供を超えた努力を推進し、基本的な個人保護機器と基本的な「安全」訓練の提供を強く求めるべきである。プラットフォーム労働者の雇用形態が、この分野における健康的で安全な労働を確保するための障害であってはならない。この点で、繰り返し指摘される問題のひとつは、例えば自営業のプラットフォーム労働者やある部門の労働者のみを対象とするなど、法令、イニシアティブ、行動その他の対策の範囲が限定されていることである。法令が導入される場合に、それが明確にされ、包括的な範囲であるべきであり、及び/または他の種類の幅広い対策(例えば執行機関の強化など)と合わせて検討されるべきである。確認されたOSH課題の多くはすべての種類のプラットフォーム労働に共通であることから、あまり可視化されていない労働者が忘れ去られることがないようにするために、可能な限り、すべての種類のデジタルプラットフォーム労働が含まれるべきである。

ポイント② デジタルプラットフォーム労働者とデジタル労働プラットフォームの間で、労働安全衛生に関する意識を高めるべきである。

OSH問題への関心の低さ、そしてそれがリスク予防と管理に与える影響についての前記ポイントに関連して、デジタル労働プラットフォーム自体がこの分野でほとんど行動を起こしていないことが明らかになった。協議した各国フォーカルポイントが強調したのはほんの一握りの事例であり、それらはすべてが労働関連災害・職業病に対する保険の提供、個人防護機器の提供、または基本的な訓練・ガイダンスの提供(COVID-19流行にも関連)に関連したものであって、本格的なOSH政策とは言い難いものであった。デジタル労働プラットフォームは、そのプラットフォームを使用する労働者の使用者ではないので、OSHに責任がないと主張したり、OSH保護を提供することによってプラットフォームの使用者として再認識されるリスクを望まないかもしれない。同様に、これまでの研究は、デジタルプラットフォーム労働者の主要なグループ-とくに若いまたは経験の少ない、低学歴の労働者-は、彼らが遭遇するOSHリスクを認識しておらず、それらを過小評価したり、労働するときに手を抜いたり、または適切に自らを守る手段をもっていないかもしれないことを示している。

政策決定者と意思決定者は、デジタル労働プラットフォームがそのプラットフォーム労働者に、OSHに関するガイダンスと訓練を提供するための障壁を取り除くことができる。ひとつの選択肢は、相談に応じることのできる外部の予防アドバイザーなど、第三者機関を関与させることである。例えば、労働者が一定の時間だけオンラインにいることを許されたり、または資格や証明書をもつタスクを引き受けることができるようにする措置を導入するなど、最低基準を検討することも可能である。デジタルプラットフォーム労働者が何を期待することができるかについて透明性を提供することが重要である(例えば労働そのもの、それがどのように組織化されるか、どのような責任があるかなど)。このため、OSHリスクとその予防・管理方法について、プラットフォーム労働者に的を絞ったキャンペーンによる意識啓発が不可欠である。そのようなキャンペーンは政府機関によって開始されるかもしれないが、労働組合や草の根団体など、現場の関係者も関与すべきである。デジタルプラットフォーム労働者は、彼らを支援するために利用可能な対策と関係者について知らされるべきである。ここできわめて重要なことは、すべてのプラットフォーム労働者-オンロケーション労働とオンライン労働の両方-をターゲットにして、テーラーメイドな情報を提供し、身体的及び心理的なリスクと影響の両方をカバーすることである。とりわけデジタルプラットフォーム労働の心理的影響は深刻であるが、知られていないことが多いか、または無視されていたりする。

ポイント③ OSHリスクの予防と管理に関するグッドプラクティスは、関係者の間の学習を促進するために、国内外において、より積極的に共有されるべきである。

本研究で実施した調査だけでなく、他の調査も、国・地域・地方政府、労働・社会保障監督官、プラットフォーム労働者と彼らを代表する組織(労働組合や草の根組織を含む)、その他の関係者によるグッドプラクティスを明らかにし、そのうちいくつかはOSHを直接対象としていた。プラットフォーム労働への対応は、国・地域・部門によってかなり異なるため、これらの慣行は自国内で及び国境を越えては知られていない可能性がある。文献やEU-OSHAの各国フォーカルポイントは、ワーキンググループのような知識交換のためのいくつかのイニシアティブについて報告したが、そのような努力は限られているようである。同時に、政策立案者と意思決定者がグローバルなプラットフォームでより大きな影響力を行使できるようにするために、国を超えたより調整されたアプローチが勧告される。
政策決定者と意思決定者は、自国内だけでなく、国を超えた関係者の間のグッドプラクティスの理解と共有を高めるための戦略を実行することができる。この活動は、理論的な考察を超えた、可能な限り「実践的」なものであるべきである。デジタル労働プラットフォームやデジタルプラットフォーム労働者を含む-幅広い関係者が参加するネットワークを構築することは、第1にすべての問題と懸念が取り上げられ、第2に合意された対策が幅広く支持され、実施されることを確保するための前提条件である。上級労働監督官委員会[SLIC]などの主導的なEU機関・組織、EUの社会パートナーは、この点で中心的な役割を果たすことができる。

ポイント④ デジタルプラットフォーム労働におけるOSHの課題とチャンス及びOSHリスクの予防と管理に関する知識を深め、データを収集する努力を強化しなければならない。

デジタルプラットフォーム労働についてだけでなく、デジタル労働プラットフォームとデジタルプラットフォーム労働者の間の労働関係を検出・分類する方法、OSH規則や規制の遵守を監視・執行する方法、監督の実施方法などに関する知識やデータの決定的な不足が、調査のなかでほとんどのケーススタディで注目された。これは、EU-OSHAの各国フォーカルポイントとの協議でも、注目すべきポイントとして浮かび上がっている。

政策決定者と意思決定者は、上述したようなデジタルプラットフォーム労働から生じる主要なOSH問題への対処に役立つ情報を促進するために、デジタルプラットフォーム労働とそのOSHに対する影響に関する知識とデータを生成、開発及び共有する方法を熟考する必要がある。この点に関して、他の関連する形態の非典型労働の経験からも教訓を引き出すべきである。

https://osha.europa.eu/en/publications/occupational-safety-and-health-digital-platform-work-lessons-regulations-policies-actions-and-initiatives

安全センター情報2022年4月号