デジタルプラットフォーム労働における労働安全衛生:規制、政策、行動及びイニシアティブからの教訓【「4つの教訓」部分のみ】-2022年2月18日 欧州労働安全衛生機関(EU-OSHA)ポリシーブリーフ

※本号で紹介する以外の部分は、2022年4月号で紹介しているので、参照していただきたい。

スペインのライダー法からの教訓

最初のケーススタディは、スペインのライダー法(2021年5月11日付け勅令法9/2021、2021年9月28日付け法律12/21で批准)を検討している。この法律は、アルゴリズムの透明性に対する権利(労働者法第64条4項)を国家レベルで初めて確立し、さらに配送部門で働くデジタルプラットフォーム労働者についての従属的雇用関係の法的推定を導入している(労働者法追加条項23)。ライダー法は、スペイン労働・社会経済省、労働組合、使用者団体の三者間社会対話の成果である。これらの規定の一部が法廷でどのように解釈されるかはまだわからないが、法的な推定とアルゴリズムによる管理の組み合わせは、サービスの条件と労働条件がアルゴリズムによって設定されている場合は常に、法的依存関係の要件が満たされ得るというものである。

従属的な雇用関係の法的推定

スペインの裁判所は、とくにフードデリバリー分野や個人輸送など、いくつかのプラットフォーム労働の事例について判決を下している。ここでも、プラットフォーム労働に関する主な問題のひとつは、デジタルプラットフォーム労働者とデジタル労働プラットフォーム間の労働関係の性質であり、スペインでは、労働者法における被用者の労働者としての資格に関する基準が中心となっている。他の加盟国と同様、裁判は長年にわたって異なる結果を導き出してきた。2020年9月に、最高裁判所の重要な判決により、この不確実性はある程度解決された。それにもかかわらず、雇用形態をめぐる議論は、OSH[労働安全衛生]の観点からも重要である。労働者法第4条は、労働者に対する労働基本権、例えば身体の完全性に対する権利や適切なOSHリスク予防政策に対する権利を規定している。

ライダー法は、デジタル労働プラットフォームを通じた、サービスの管理または労働条件の形成に直接的、間接的、暗黙的にアルゴリズム使用した組織、管理及び統制の事業権限を行使する使用者による、消費者製品または機械の配送または分配からなる有償サービスを提供する者の活動が、同法の適用範囲に含まれることを規定した条文を労働者法に追加している。これによって、そのような労働者については、従属的雇用関係の反証を許す推定がある。「立証責任」(推定)は、当該労働者が被用者ではなく自営業者であることを証明する使用者に課されることになる。結果として、職業リスクの予防に関する法律31/199が、配送部門のプラットフォーム労働者にも適用され、プラットフォームはOSHリスクアセスメントの実施、リスク予防措置の実施及び労働安全衛生に関するすべての問題についてプラットフォーム労働者との協議と情報提供を義務づけられる。

アルゴリズムによる管理とアルゴリズムの透明性の重要性

アルゴリズムによる管理は、とくに配送ライダーなど、低スキルのオンロケーション作業に従事するデジタルプラットフォーム労働者に、深刻なOSHリスクをもたらすデジタルプラットフォーム労働の重要な要素である。それは、プラットフォーム労働者の身体的・精神的な健康と安全の両方に影響を与える。デジタルプラットフォーム労働では、アルゴリズムがどのタスクを誰に割り当てるかを決定し、労働者間の競争に拍車をかけると同時に、彼らの仕事のコントロールと自律性を損なっている。さらに、デジタルプラットフォーム労働者には、ほとんど救済の機会がない。その影響は広範囲に及ぶにもかかわらず、アルゴリズムがどのように機能し、なぜ決定がなされるのかについて、ほとんど知られていない。

ライダー法はその点で決定的な前進であり、プロファイリングを含め、労働条件や雇用へのアクセスと維持に影響を与える可能性のある、使用されるアルゴリズムの機能についてプラットフォーム労働者の法的代理人に知らせることをすべてのプラットフォームに義務づけている(労働者法第64.4条)。デジタル労働プラットフォームに対して、プラットフォームの内部構造(例えばアルゴリズムを導くパラメータ、ルール、指示など)を労働協議会に知らせることを義務づけている。プラットフォーム労働者の組織と代表はそれ自体が課題であるが、この分野では複数の当事者(例えばRiders X Derechos、組合など、労働者による自己組織化を含む)による努力がなされている。

結 論

ライダー法は、OSHに間接的に関連する問題を含め、デジタルプラットフォーム労働に関するもっとも的を得た課題のいくつかに対処している。配送部門で活動するプラットフォーム労働者を推定によって労働者として認めることをプラットフォームに義務づけることによって、またアルゴリズムによる管理の「ブラックボックス」をある程度開放することによって、ライダーズ法はプラットフォーム労働に特有なOSHリスクへの対処において飛躍的進歩を構成している。この法律はまた、この点に関して、社会対話と労働者の参加の継続的な重要性を示す重要な例となる。にもかかわらず、さらなる改善の余地も指摘されている。第1に、雇用の推定は配達部門のプラットフォーム労働者にのみ適用されていて、その範囲は制限され、プラットフォーム労働の幅広い異質性を反映していない。第2に、プラットフォームは、下請け業者と協力して法律を回避しようとする可能性がある。最後に、アルゴリズムによる管理に関する規定の技術的・実務的な範囲について、さらなる明確化が必要である。

ボローニャ憲章からの教訓

2つ目のケーススタディは、デジタルプラットフォーム労働を対象としたイタリアの法令枠組みという、より広い文脈のなかでの、ボローニャ憲章-都市の文脈におけるデジタル労働の基本的権利憲章-である。このケースは、OSHとの直接的な関連性から、また、政策対応における都市特有の側面に注目し、地元のイニシアティブがいかに国の法令の道筋をつけるのに役立つかを文書化していることから、とりわけ興味深い。

イタリアにおける裁判例と立法措置

イタリアでは、配送部門のプラットフォーム労働者の雇用形態は、矛盾した結果をもたらす多くの裁判例からも明らかなように、デジタルプラットフォーム労働に関するもっとも争点となる問題のひとつである。2019年に、イタリアの立法府は、デジタルプラットフォームを通じて働く人々に対する「使用者が組織する」労働の概念の対象範囲を緩和するとともに、デジタルプラットフォーム上の配送部門で活動する自営業者に特別な権利(透明性と情報、データ保護、OSH規定の適用可能性、反差別及び固定時間給に関する権利)を導入することによって、この問題に介入した。

これらの規定は、労働協約がない場合の既定規則とみなされる。2020年9月に、Assodelivery(配送分野で活動するプラットフォームの多数を代表する組織)とUnione Generale dei Lavoratori(UGL[労働総連合]、小さな労働組合)との間で労働協約が発表された。この協約は、イタリアの主要労働組合と労働省から直ちに異議を唱えられた。とくに労働協約に出来高払い方式が導入されたことは、配送部門のプラットフォームに時間給の支払いを義務づける法的規定と相容れないものとみなされたのである。

一連のデジタルプラットフォーム労働者の事故を受けて開始された調査を受け、ミラノ検察官事務所とイタリア労働監督局は共同で、大手食品配送プラットフォーム4社に対して、6万人以上の配送員を「使用者組織型」労働者として雇用するとともに、総額7億3300万ユーロの罰金を支払うよう命じた。ミラノ検察官事務所はプレスリリースで、労働者と関係するプラットフォームとの間の労働関係は、「自律的かつ臨時のサービス」として適格ではなく、「組織的かつ継続的なサービス」であると強調した。調査は、いくつかのOSH規則違反を明らかにしただけでなく、労働者がアルゴリズムによって管理され、業績に応じてランク付けされ、格下げされないようにすべての注文を受けることを強制され、休日や病気休暇を取ることが実際には不可能であることも暴露した。

イタリアにおけるデジタルプラットフォーム労働に関する地域的な法令枠組み

とくに興味深いのは、地域・地方レベルのイニシアティブである。2019年にラツィオ州は、訓練の受講、安全衛生機器の提供義務とそれらの維持費用の補償、「タスクごとの支払い」の禁止及びOSH保険を提供する義務などを含め、すべてのデジタルプラットフォーム労働者を対象とした法律を採択した。2つ目の例は、2019年にピエモンテ州で導入された、イタリアの裁判所が適用しているプラットフォーム労働者の労務関係の資格に関する基準を成文化することを目的とした立法提案である。さらに、この提案には、管理アルゴリズムの設計に関して、労働組合と協議する権利が含まれている。また、デジタルプラットフォーム労働者のパフォーマンスに基づく格付けの仕組みを禁止している。この2つのイニシアティブは、ボローニャの自治体の行動に触発されたものと思われる。

ボローニャ憲章:都市の文脈におけるデジタル労働の基本的権利

2017年秋にボローニャ市で大雪が降ったエピソードの後、配送ライダーのグループがストライキを行い、プラットフォーム労働者のまともな労働条件を求めて市役所まで行進し、OSHの重要性を強調した。こうした要求を受けて、ボローニャ市議会は労働組合やデジタル労働プラットフォームとの交渉を開始した。ボローニャ市議会の理由付けはシンプルで、ライダーたちの職場は市の街路であることから、市議会にはこの状況に対処する責任があると考えたということである。これが最終的に2018年に、「都市の文脈におけるデジタル労働の基本的権利憲章」を採択するに至った。この憲章の法的位置づけは、ボローニャ市当局を国側の利害関係者とする三者社会対話の領域に位置づけられる必要がある。その範囲については、ボローニャの領域にのみ適用され、雇用形態に関係なくすべてのプラットフォーム労働者を含める規定となっている。そのため、地方レベルには法的権限がない労働関係の資格に関する問題は回避されている。しかし、実際には、プラットフォーム配送サービスが主な対象である。

OSHに関する懸念が、ライダーズ・ユニオン・ボローニャが市議会に対策を訴えたときの主な要求のひとつであったことから、ボローニャ憲章はOSH問題に関してとくに意欲的であり、プラットフォームに対して、OSH管理システムを開発し、リスクや危険を評価、予防及び低減するためにあらゆる適切な手段を採用すること、労働災害・職業病に対する保険を提供することを要求している。最後に、憲章は、異常な気象状況に直面した場合に、労働者は、影響を受けることなく、タスクを拒否する権利を有すると規定している。

結 論

ボローニャ市の革新的で積極的なアプローチは、プラットフォーム経済に関し同様の問題に直面している欧州の他の都市や地域にとって刺激となる可能性がある。とはいえ、地域的にだけでなく、このイニシアティブの範囲が限定的であり、また、地域的というだけでなく、配送部門で活動する4つのプラットフォームが、これまでに自主協定に調印しているだけであるということも、念頭に置く必要がある。憲章の中核的な条項の分野で、立法する権限がないため、拘束力のない自主的な性質とあいまって、強制的な施行は不可能である。とはいえ、自主的な(また拘束力のない)憲章のような「ソフト」なツールは、より容易に達成可能であり、OSHを含むデジタルプラットフォーム労働者の労働条件の直接的具体的な改善を生み出すことができる。

このことは、政令第101/2019号の採択を通じて国レベルで、また公共当局が同様の協定を実施している地域・地方レベル(例えばピエモンテ、ラツィオ、ミラノ、モデナ)の双方で反映されている、イタリアにおけるデジタルプラットフォーム労働者の重要な問題に対する認識を高める重要な要因になってきたことは否定できない。この憲章には、OSH、アルゴリズムによる管理とそのOSHに対する影響、最低報酬とその算出方法、透明性、労働者の参加といった重要な問題に関する規定が含まれており、ボローニャのプラットフォーム労働者の労働条件に直接的な好影響を与えている。実際、このケーススタディで協議したすべての関係者は、憲章に署名したデジタルプラットフォームとそうでないものとの間の労働条件のポジティブな違いをはっきり認めている。

フランスのデジタルプラットフォームに関する法令枠組みからの教訓

フランスでは、2016年に、デジタルプラットフォーム労働に関連した多くの法令イニシアティブが導入された。

・労働、社会対話の近代化、職業的キャリアの確保に関する2016年8月8日付け法律第2016-1088号(「エル・コムリ法」)
・不正行為防止に関する2018年10月23日付け法律第2018-898号
・輸送手段(「LOM」)の方向性に関する2019年12月24日付け法律第2019-1428号
・公共道路輸送部門の様々な部門におけるデジタル仲介プラットフォームの活動の行使に関する命令第2021-487号
・活動においてプラットフォームを使用する自営業者の代表権の条件及びこの代表権の行使条件に関する条例第2021-484号

エル・コムリ法はとくに、プラットフォーム労働者の保護に向けた大きな一歩として、研究や政策において説明されることが多く、他の加盟国の政策立案者に行動を促す可能性がある。しかし、より批判的な評価では、この法令枠組みの下での適用対象とプラットフォーム労働者に付与される権利が限定的であることが指摘されている。さらに、これらの法律や命令とOSHとの直接的な関連はわずかしかない。調査されたすべての法令イニシアティブは、OSHを間接的に扱っている。例えば、命令第2021-487号は、プラットフォームが当局や行政機関とデータや情報を共有することを義務付けている。当局の管理使命を支えるあらゆる証拠を提供しなければならず、監督に適したあらゆる文書(職業上それをもっている可能性のあるすべての者からの、帳簿、請求書、その他の専門文書)を要求に応じて提供しなければならない。プラットフォームは、監督官の検証を行うために必要な手段を提供することを求められ、保管データまたはアルゴリズム及び監督を促進するのに適した情報の暗号化されていない返還に対するアクセスが認められなければならない。このような情報及びデータの提供は、監視及び執行活動を行うために不可欠である。同様に、命令第2021-484号は、自営プラットフォーム労働者のための集団的権利を提供する。ここでも、直接的な関連性は明らかではないかもしれないが、OSHの分野における労働者の参加及び団体交渉の関連性と重要性は確立された事実であり、EUのOSH経験の重要な構成要素である。

エル・コムリ法

EU加盟国のプラットフォーム経済(の一部)を具体的に対象とした最初の法律のひとつであるエル・コムリ法は、販売される商品または提供されるサービスの特性を決定し、またそれゆえそれらの価格を設定するプラットフォームは、そのプラットフォーム上で活動する労働者に対して「社会的責任」を負うと規定している。しかし、エル・コムリ法の個人の適用範囲は限られており、自営業であって、職業活動の文脈でデジタル労働プラットフォームを使用する労働者にのみ適用される。

この適用範囲に該当するすべてのデジタルプラットフォーム労働者に対して、エル・コムリ法は、労働組合を結成及び加入する権利と、労働組合を通じて集団的利益を擁護する権利を提供している。これらの条件を満たし、プラットフォーム労働を通じて売上高の年間社会保障上限額の13%以上(2021年には命令で定められた5,347.68ユーロ)を稼ぐデジタルプラットフォーム労働者について、エル・コムリ法は、継続的な職業的訓練及び労働災害・職業病に保険で付保される権利を予見している。いずれの場合も、デジタル労働プラットフォームが費用を負担し、それは実際には、プラットフォーム労働者が年間売上高が最低基準を満たしたことを証明できた場合に、翌年度に払い戻されることになる。もうひとつの制限は、保険付保が任意であることである。

不正行為防止法

不正行為防止法は、様々な不正行為の発見、理解及び制裁を向上させることを目的としている。この目的のために、この法律は、当局が利用できるツールを調和させ、また、当局間のデータ共有を強化することによって、不正を検知及びその特徴を明らかにする新しい手段を確立している。この法律は、不正を犯していないが、不正を助長した者に対する行政制裁を導入することによって、不正を制裁する手段を強化している。

デジタルプラットフォーム労働に関して、この法律にはいくつかの規定があり、プラットフォームの幅広い概念化を使用し、デジタル手段によって遠隔地から人々をつなぐあらゆるプラットフォームに適用される(一般税法第242条の2)。同法は、デジタル労働プラットフォームに対して、デジタルプラットフォーム労働者に支払われる金額を税務当局に報告することを義務づけている。また、同法は、プラットフォームとその利用者の識別情報、利用者が示した民間人または職業人としての地位、過去1年間に行われた取り引きの件数と総額に関する情報を、その労働者、顧客及びフランスの財政当局に提供することを義務づけている(一般税法第242条の2)。プラットフォームが知っている場合には、労働者がプラットフォームを通じて得た収入が入金される銀行口座の詳細が提供されなければならない。

法律に定められた義務を果たさないデジタル労働プラットフォームは、最高5万ユーロの世界一律の罰金と未申告額の5%に相当する罰金を科される。最新の入手可能なデータによると、約120万人の自然人、約40万人の職業人と法人をカバーする、約120のプラットフォームが2019年に受け取った収入について申告書を提出している。

LOM

輸送手段の方向性に関する法律は、日常の輸送手段をよりクリーンで簡単かつ安価にするために採択されたが、LOMはとりわけデジタル労働プラットフォームに関連するものである。より具体的には、LOMは、「輸送車」を運転する、またはタクシーサービスなど、電動または非電動の2輪または3輪の車両を使用して商品を配送するデジタルプラットフォーム労働者の「拒否する権利」及び「つながらない権利」を導入した。拒否する権利は、プラットフォーム労働者がペナルティなしにタスクを拒否することができることを意味している。つながらない権利は、プラットフォーム労働者がいつ働くかを自由に決定できることを保障している。両規定は、OSHの観点からも重要である。

さらにLOMは、デジタル労働プラットフォームが、OSHリスクの予防、労働条件、価格設定、技能開発、キャリアアップの機会、プラットフォーム労働者とプラットフォームの間の情報共有と対話、条件の変更など、プラットフォームを通じて働くことに関連した重要な側面を示す憲章を策定する可能性を予測している(ただし、そうすることを義務づけられてはいない)。この憲章の背景にある考え方は、透明性を促進するとともに、安全衛生を含む労働者の権利を確保することである。これらの要素はすべて、OSHリスクの予防とリスク管理に貢献する可能性がある。もっとも重要なことは、スペインのライダー法とは対照的に、LOMは当初、憲章の制定は、当該プラットフォーム労働者がプラットフォームと従属関係になく、それゆえ労働者としては認められれないという法的推定を必要とすると規定していたことである。

結 論

フランスの法令枠組みは、デジタルプラットフォーム労働の労働条件改善に向けた進歩の重要な例として称賛されることが多いが、いくつかの重要な制限によって傷つけられてもいる。この法令枠組みは、実態的適用範囲も個人的適用範囲も非常に限られており(すべてではないにしても)、少なくとも大多数のプラットフォーム労働者は法的不確実性に直面することになる。プラットフォーム労働者の雇用形態という重要な問題は未解決のままであり、したがってOSH法的枠組みの適用性に関する問題も未解決のままである。加えて、プラットフォーム経済における労使関係の検出とその性質の明確化に役立つ、情報とデータの共有の分野で大きな前進があったものの、現在、基本的なOSH規則と規制の遵守の監視と執行がほとんど行われていないことは明らかである。にもかかわらず、法令枠組みの一部は、プラットフォーム労働者のエンパワーメントと彼らに声を与えることに注意を払っている-これはOSHリスクの予防と管理にとっても重要である。この枠組みは、プラットフォームをさらに関与させ、そうすることでプラットフォーム経済における社会的対話を促進し、その結果、労働条件とOSHの改善に役立つ可能性がある。しかし、上記の問題を考慮すると、実際にはフランスの法的枠組みはあまり効果的でない可能性がある。

労働・社会保障監督官、OSH当局及び執行機関の行動及び経験からの教訓

デジタルプラットフォーム経済は、多くのEU加盟国において、様々な執行当局の行動を引き起こした。ほとんどの加盟国で、これらの行動は、この比較的新しい現象に対処するための効率的で協調的な戦略の欠如によって特徴づけられており、残念ながら、多くの場合、現在もなおその状態が続いている。このため、OSH規制の監視と執行の両方が複雑化し、労働者の労働権の侵害が多発し、社会全体にリスクと危険をもたらし、準拠する市場関係者の公平な競争条件が損なわれている。デジタル労働プラットフォームで行われる有償の活動に関するデータはほとんどなく、関係する労働者に関するデータ、違反の数と深刻度、OSH関連の違反と労働関連災害・疾病の数と深刻度も同様である。

異なる執行当局による異なる行動:早急に学ぶ必要のある多くの教訓

執行当局による行動の違いの主な事例のひとつは、労働・社会保障監督官が関与する事件の報告の大部分が交通警察によって推進され、したがってタクシーや配送サービスといったもっとも目につきやすい形態のプラットフォーム労働に限定されていた、ポーランドで見出すことができる。労働監督官による調査は、様々な規則や規制の違反が非常に多いことを明らかにした。調査された労働者の約10%は、不法滞在の第三国国籍の者、または適切な労働許可証のない合法的な第三国国籍の者であることが判明した。このような状況は一般的に不安定であり、OSHに関してだけでなく、関係する労働者の基本的権利に有害な影響を与える。

別の興味深いケースは、ベルギーである。フランスと同様に、ベルギーは、主に財政法の分野ではあるものの、プラットフォーム労働に関する専門の法律を制定した最初の、そして数少ないEU加盟国のひとつである。早くも2016年には、デジタルプラットフォーム労働を後押しすることを目的とした法令枠組みを導入している。ベルギーのケースで重要な関心事は、Deliverooをターゲットに労働・社会保障監督局が実施した合同検査である。15人の元及び現在のDeliverooのライダーが、彼らの雇用形態、労働条件、OSHに関する問題についてインタビューを受けた。この調査により、監督当局が労働裁判所でDeliverooに対して司法手続を開始した。この訴訟の結果はまだ係争中であるが、プラットフォーム労働に関する今後の規制を形成するものとして大いに期待されている。

スペイン:改善の余地のあるよい事例

スペインの労働・社会保障監督局(ITSS)の行動とイニシアティブは、プラットフォーム労働に関連する課題に取り組む方法のよい事例と考えられる。他のEU加盟国と同様、2017年以前、スペインにおける当初の監視行動は、主にプラットフォーム労働者からの苦情をきっかけに開始され、デジタルプラットフォーム経済が精査を必要としているというITSSの認識が高まった。これらの書記行動は分散しており、異なるアプローチを用いることで異なる結果につながることが示された。この点から、2017年にITSSは、デジタルプラットフォーム経済の監視を調和させるという確固たる決定を下し、異なる情報源(例えば過去の事例、または苦情を申し立てた労働者、労働組合、プラットフォームのウェブサイトから得た情報など)からの情報を集約することを開始した。ITSSは、プラットフォーム経済に関する情報、プラットフォーム業務の監督のための具体的な調査手順、ウェブサイトやアプリの分析などの側面に焦点を当てた指標、プラットフォームやアルゴリズムによる管理の概念、ガイドライン、ケース事例などを提供することにより、ITSS監督官がプラットフォーム労働の監視と適用可能な法令の執行を行うのを明確に支援することを目的とした共有経済に関するガイドを開発した。

他の多くの国と同様、プラットフォームとその労働者の間の雇用関係の認定は、適用される規制の遵守を監視・執行するうえで重要な課題のひとつであったし、現在もそうである。プラットフォーム労働における偽装自営業を標的としたキャンペーンは、2018~2020年の労働・社会保障監督局戦略計画の一部として策定された。計画は、プラットフォーム労働を直接対象とした様々な運用手段を提示しており、例えば、デジタルプラットフォーム関係者の把握を容易にするために必要な技術的手段を監督官に提供すること、監督官を支援し専門家を養成するための運用マニュアルを発行すること、プラットフォームを監督するキャンペーンを実施すること、などがある。

結 論

スペインのITSSは、プラットフォーム経済の監視と適用される法律の執行において、積極的で適応力があり、成功を収めてきた。2019年と2020年に、ITSSは単一のプラットフォーム上だけで11,013人の偽装自営業者を特定した。ライダー法以前からのこうした行動は、労働者とプラットフォームの間の労働関係の適格性に関する問題にもかかわらず、監督サービスが遵守を監視・執行できることを明確にしている。ITSSの成功は、新しい課題に対処するために監督官の訓練に多くの注意を払うという、あらかじめ決められた戦略の結果である。ITSSの活動は調整された方法で組織され、調査手順が統一されている。このような監督が難かしく、時間と資源を要することを考えれば、例えば異なる地域部門が関与している場合に、中央サービスの特別ユニットによって調整された行動もあった。ITSSが作成したガイドはまた、他の加盟国の監督機関が取り入れるべきベストプラクティスである。

にもかかわらず、OSHの規則や規制の遵守を監視・強化するためには、プラットフォーム経済全体の監視が前提条件となる。しかし、スペインの事例は、他のほとんどの加盟国に欠けているもの、すなわち、調整された行動、部門全体及び市場関係者に関する戦略的・運営的情報の収集を明確に示している。監視する活動や関係する執行機関の能力にもよるが、一部の市場関係者の監視には、学際的なアプローチ、つまり当局間の効果的かつ効率的な協力と情報交換が必要である。最後に、スペインの事例は、能力と資源、能力構築、及び運用上の決定の重要性を明確に示している。

https://osha.europa.eu/en/publications/occupational-safety-and-health-digital-platform-work-lessons-regulations-policies-actions-and-initiatives

安全センター情報2022年6月号