重大災害法施行令通過・・ついに脳・心血管疾患は含まれず 2021年9月28日 韓国の労災・安全衛生
労働界と市民社会の粘り強い要求で、1月にやっと国会の敷居を越えた『重大災害処罰などに関する法律』(重大災害処罰法)の具体的な施行事項を内容とする施行令の制定案が閣僚会議を通過した。立法予告案から一部『進展』はあったが、職業性疾病の範囲拡大と事業主の災害予防点検の民間委託禁止など、労働界と市民社会が修正を要求した事項はついに反映されなかった。
政府は閣僚会議で重大災害処罰法施行令制定案を審議・議決したと28日に明らかにした。施行令には『重大産業災害』の判断基準になる職業性疾病の範囲、『重大市民災害』の判断の要件になる『公衆利用施設』の範囲、重大産業災害予防のための安全・保健管理体系の構築・履行に関する措置に関連する細部事項などが入れられた。
立法予告案では、一部変わった大きな課題も目につく。事業主・経営責任者が安全・保健上の有害・危険を防止するために執るべき細部措置の中に「安全と保健に関する人材、施設と装備などを備えるのに、適正な予算を編成し、用途によって執行して管理する体系を用意」せよという大きな課題が「災害予防のために必要な安全・保健に関する人材、施設・装備の具備、確認された有害・危険要因の改善などに必要な予算を編成し、用途に合うように執行せよ」という趣旨に変更された。法律に『災害予防』と明示されているのに、施行令で『安全と保健』に縮小されているという労働界の指摘が反映されたわけだが、「二人一組勤務と過労死予防のための適正な人材保障」という要求事項は含まれなかった。
「有害危険要因を確認・点検、改善できる業務処理手続き作り、履行事項を点検する」とされていた部分は「有害・危険要因の確認改善がなされているかを、半期に一回以上点検した後、必要な措置をする」と、点検周期を具体化した。事業場の安全保健管理責任者の業務を忠実に支援できるように、「権限と予算を与えて評価基準を用意し、半期に一回以上評価・管理をすること」という文面も、立法予告案に追加される。
しかし、立法予告期間中に労働界と市民社会が核心的に主張した要求は反映されなかった。特に、『職業性疾病者』の範囲を『化学的な因子による急性中毒、反応性気道過敏症候群、熱射病など24の職業性疾病』に限定した。 これに伴い、同一の有害要因で一つの事業場で1年以内に脳・心血管疾患(過労)や職業性癌疾患者が3人以上発生しても『重大災害』には該当せず、事業主の責任も問われなくなった。政府が「法律に『急性中毒などで大統領令に定める』と規定されているので、(職業性疾病の範囲を)急性中毒に準ずる疾病に限定すべきだ」という立場を守ったためだ。
6月に光州広域市の工事現場で、撤去中の建物が崩壊して17人の死傷者が出た事故も、重大災害処罰法を適用できないと指摘されている。市民社会は「公衆利用施設の範囲を拡大すべきだ」と関連規定の修正を要求したが、政府は「建設現場を公衆利用施設と見るのは難しい」という理由で、この要求もやはり受け容れなかった。合わせて事業主の『安全保健関係法令に伴う義務履行の点検』を民間に委託できるようにした条項もやはり、労働界は「委託を禁止すべき」と主張したが、民間に委託する場合「その結果の報告を遅滞なく受け、義務履行に必要な措置をする」という内容に、一部修正されるのに止まった。
労働界と市民社会は、このような問題が、結局、重大災害処罰法が当初の期待に応えられないために起きたこととして、法の改正を要求してきた。労働界と市民社会が要求する内容を政府が施行令に反映できないとする主な原因が「法律が施行令に委任した範囲を超える」ということのためだ。民主労総と重大災害企業処罰法制定運動本部はこの日記者会見を行い、被害者と労働者市民が立法予告意見書を提出して、討論と公論の場を要求したが、市民が参加する公論の場は開かれなかった」として、重大災害処罰法の改正を要求した。
使用者団体の韓国経営者総協会も別の理由で法改正を要求した。経総はこの日、論評を通じて「重大災害処罰法上で不明な経営責任者の概念と義務内容などが、施行令に具体的に規定されるべきだと数回建議したが、産業界の憂慮事項が十分に検討・反映されないまま閣僚会議を通過して、非常に残念」とし、「重大災害予防の実効性を高めて、過剰処罰などの副作用が生じないようにするために、政府と国会が早い期間内に重大災害処罰法の再改正を推進すべきだ」とした。
2021年9月28日 ハンギョレ新聞 パク・テウ記者
https://www.hani.co.kr/arti/society/labor/1013048.html
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