脳卒中・心臓疾患は『過労疾患』だが、死亡者がなければ重大災害法を回避 2021年7月4日 韓国の労災・安全衛生

故キム・ヨンギュンさんの母親のキム・ミスクさんが昨年12月、重大災害法の制定を求めて国会本庁前で断食座り込みをしている。/パク・ジョンシク記者

産業災害関連企業の責任を強化する「重大災害処罰などに関する法律」(重大災害法)の施行令を巡って、『過労』による脳卒中・心臓疾患などの職業病患者の発生を重大災害に含むのか、議論が拡がっている。政府は過労による脳卒中などが多数発生するとしても、死亡者がいない場合は、該当企業を法適用から除外する施行令を推進している。これに対して労働界は、立法趣旨を傷つける措置だと反発している。

ハンギョレ新聞の取材を総合すれば、政府はこのような内容の施行令草案を作って、労働界と経営界などの意見を取りまとめている。重大災害法は1月に国会を通過し、来年1月から施行される。

労働界が指摘する大きな課題は、職業病関連の規定だ。重大災害法は『同じ有害要因で、急性中毒など大統領令に定める職業性疾病者が、1年以内に3人以上発生』する事例を『重大災害』の一つと定義している。争点はこの項目で、職業病の範囲をどこまでにするかだ。施行令草案では、この規定に該当する職業病は急性中毒とそれに準ずる20余種の疾病と定義された。しかし、過労によって多く発生する脳心血関係疾患が草案の定義から外された。また、筋骨格系疾患と職業性癌、塵肺症、難聴なども外されていると伝えられた。

労働界は「施行令の職業病の範囲が制限的だ」と批判している。過労による脳卒中など、重症の職業病患者が多数発生しても、死亡者が出ない場合には法を適用をできない可能性があるということだ。重大災害法には、『死亡者が1人以上』発生すれば重大災害と見るという大きな課題があって、過労による脳卒中で死亡者が出れば、重大災害かどうかを争う余地がある。しかし、政府が出した施行令草案をそのまま適用する場合、過労による脳卒中疾患者が事業場で3人以上発症するとしても、重大災害法の適用が難しくなるということだ。これは脳心血関係疾患だけでなく、難聴、塵肺症、職業性癌などでも同じ状況が起こり得る。民主労総のチェ・ミョンソン労働安全保健室長は「急性中毒を中心に限定した政府の施行令草案は、範囲が極度に狭く設定されたもので、適用事業場の事例は余りないものと思われる」と話した。

これまで経営界は、重大災害法施行令で職業病の認定範囲を広げることは、企業活動を萎縮させるとして反対してきた。法曹界の一部からも、過労による疾病などに範囲を拡げれば、企業が産災を隠す誘引が大きくなるところに、実際の適用も容易ではないだろう、という反対の声も出ている。施行令草案は、このような意見が反映されたものと見られる。

雇用労働部の関係者は今回の施行令草案の検討について、「現在は、労使の意見をまとめて、関係部署と協議の手順を踏んでいる。確定した施行令ではない」と話した。

2021年7月4日 ハンギョレ新聞 パク・ジュンヨン記者

https://www.hani.co.kr/arti/society/labor/1002061.html