全国安全センターの厚生労働省交渉(2021.7.20):B.4.~6. じん肺、振動障害、化学物質過敏症の労災認定について

※全国安全センターの厚生労働省交渉の全体-「労働安全衛生・労災職業病に関する要望書」の全文はココで確認できます。

B.4. じん肺による労災認定について

【要望事項】

B.4.(1) 1986年基発51号通達を改正すること。同通達では、労働者あるいは特別加入者として粉じん作業に従事した期間が、特別加入未加入の期間より3年以上長い場合に、じん肺症または合併症が労災認定される。この通達を「労働者、特別加入期間で10年以上の粉じんばく露作業従事期間があれば、じん肺症、あるいは合併症として補償する」ように改正すること。

【厚生労働省回答(労働基準局補償課)】

1 労働者あるいは特別加入者として粉じん作業に従事した期間と特別加入未加入の事業主等として粉じん作業に従事した期間との双方の職歴がある方のじん肺症又は合併症について、業務起因性があると判断されるためには、労働者等として従事した粉じん作業が相対的に有力な原因であると認められる必要があります。
2 そのため、労働者等としての粉じん作業従事期間が特別加入未加入の事業主等としての粉じん作業従事期間よりも明らかに長い(3年以上)と認められる場合には業務起因性が認められるとの取り扱いを行っているところです。
3 しかしながら、昭和61年2月3日付け基発第51号「粉じんばく露歴に労働者性の認められない期間を含む者に発生したじん肺症等の取扱いについて」記2(2)のとおり、粉じん作業従事期間の比較だけでなく、従事した粉じん作業の内容、粉じんの種類、気中粉じん濃度、作業の方法、粉じん作業従事期間、1日の粉じん作業時間等の調査及びじん肺の経過に関する地方じん肺診査医等の意見を踏まえ、総合的に業務起因性を判断することとしております。
4 今後とも、同通達に沿って、個々の事案ごとに適切な労災認定に努めてまいります。

【厚生労働省交渉でのやりとり】

全国安全センター・平野:基発51号通達ですけど、ここでこの通達の改正しますという回答はむずかしいと思いますけど、趣旨としてですね、例えばうちの診療所は建設関係の方がいっぱいこられてるんですけど、例えば大工さんなんかはだいたい15歳からやってる方は多いので、30歳ぐらいまで労働者でやって、その後一本立ちして一人親方でやったけども、特別加入してなかったといった場合にじん肺合併症労災にならないんですよね。非常に患者さん診てる主治医として、非常にこう、なんともやりきれない。というのは、就労して10年ぐらいで石綿肺の所見が出てくる。じん肺もだいたい粉じん作業をした後、出てくるということは一般に言われているわけで。そういった意味でやはり労働者、特別加入期間が10年以上あれば、それでじん肺所見があって、あるいは続発性気管支炎の合併症があれば労災にしてくださいよという、こういう主旨なんですよ。これ、わかっていただけますかね。

厚生労働省:それは10年以外に、例えば特別加入されてない期間とか、労働者じゃない期間があったとしてもというところで、例えばそれが20年あったとして。単純に年数で言うのが適切かわからないですけど、平野さんがおっしゃったのは、10年あって、労働者じゃない期間とか特別加入されてない期間が20年あったとしても、っていう意味ですか。

全国安全センター・平野:はい。

厚生労働省:その、要請文からわかりました。そこは、趣旨はくみ取っていました。

全国安全センター・平野:趣旨はわかるというか、理解っていうか。言ってることはわかる、っていうことでは思われますか。

厚生労働省:お気持ちはわかるんですけども、やはり回答にも書かせていただいたこととちょっと重複するかもしれないんですけども、やっぱりその業務、業務といっても労働者じゃない期間とか、特別加入されてない期間と、労働者とか特別加入されている期間、いわゆる労災保険の対象となる期間というのが相対的に有力ということはやはり認められる必要がありますので。

全国安全センター・平野:実際問題、粉じん作業、粉じんの種類だとか、濃度だとか、量だとか、こんなのわからないでしょう、なかなか過去の話をあらためて調べてもね。ともかく粉じん作業にやっぱりあわせて10年という基準を作っていただいて、医学的にも10年粉じん作業に従事すればじん肺所見出るよというのはわかってることなので。それを踏まえて、労働者、特別加入、あわせて10年以上あれば、当然その期間中に吸入した粉じんによってじん肺が起きたということで判断していいんじゃないかという、そういう趣旨なんで。別にむちゃくちゃなことを言ってるわけじゃないですよね。

厚生労働省:そうですね、むちゃくちゃだとは決して思いませんけど。お話としては承知いたしました。

全国安全センター・平野:改正ということで検討していただければということで、よろしくお願いします。

【要望事項】

B.4.(2) じん肺管理区分管理2ないし4の被災者が発症したANCA関連血管炎(顕微鏡的多発血管炎、多発血管炎性肉芽腫症、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症)を労災補償の対象とすること。

【厚生労働省回答(労働基準局補償課)】

1 抗好中球細胞質抗体(ANCA)関連血管炎については、最新の医学的知見においても未だに原因が不明とされているのであり、じん肺と密接な関係があるものとは認められないことから、労災保険給付の対象とはなっておりません。
2 しかしながら、今後も最新の医学的知見を収集し、適正な労災認定に努めてまいります。

B.5. 振動障害の労災について

【要望事項】

B.5. 振動障害の検査や治療を行っている医療機関等の情報を地方労働局が責任をもって提供すること。

【厚生労働省回答(労働基準局補償課)】

都道府県労働局にご照会があった際は、これまでと同様に、労働局が把握している情報を提供してまいります。

【厚生労働省交渉でのやりとり】

全国安全センター・飯田:検査機関ですけれども、照会があれば労働局が把握している情報を、どこへいって検査してもらえますよという情報は提供していただいているということですかね。

全国安全センター・平野:どの程度把握して。

厚生労働省:まず、局で把握している情報というのは、これまでもご照会いただいた際には、お答えはしていると思いますので、その情報をご照会があったときには提供するという趣旨で、ここにも記載さしていただいております。

全国安全センター・飯田:林業等で従事されている方たちの振動病の問題が非常に大きかったときには、その地域において振動病検査をされているような医療機関もあったと思うんですけども。一方で、都市部での建設だとかですね、そういったところでの振動病。なかなかこれ、しっかり検査を受けて診断されるケースばかりではない。東京でも振動病の検査をやっていただいている医療機関はすぐに見当たらない。われわれも苦労していつも提携している検査機関でやってもらっているっていうケースがあるんですけれども、労働局でしっかり、積極的に把握してもらって、紹介してもらうということが必要だと思います。これも念頭に置いて、都道府県によって多少、振動病の発生状況が違うかもしれませんが、少なくともやはり一定の地域においては振動病検査ができるような医療機関や検査機関を養成するとか、紹介をするというようなかたちで対応していただきたいということで、よろしですか。

厚生労働省:ご意見として承りましたので。

全国安全センター・飯田:前向きに対応していただくようお願いしたいと思います。

厚生労働省:はい。

B.6. 化学物質過敏症の労災認定について

【要望事項】

B.6. 主治医の意見を尊重して速やかに労災認定するとともに、職場(社会)復帰に受けた対策を講じること(現状は年単位の長期にわたる調査の結果、業務外となる事案がほとんどである)。

【厚生労働省回答(労働基準局補償課)】

1 化学物質過敏症に関しては、疾病概念、診断基準について医学的なコンセンサスが得られていない状況にあることから、傷病名が化学物質過敏症として労災請求があった際には、
① 請求人がばく露した化学物質の特定
② 化学物質の使用状況、作業環境の調査
③ 請求人に出現した症状等の確認
を行い、業務との相当因果関係を個別に判断しているところです。
2 今後とも化学物質過敏症に関する労災請求に対しては、迅速かつ適正な事務処理に努めてまいります。

【厚生労働省交渉でのやりとり】

※おつて追加する予定です。