全国安全センターの厚生労働省交渉(2021.7.20):B.2. 精神障害・脳・心臓疾患の労災補償について

※全国安全センターの厚生労働省交渉の全体-「労働安全衛生・労災職業病に関する要望書」の全文はココで確認できます。

目次

B.2. 精神障害・脳・心臓疾患の労災補償について

【要望事項】

B.2.(1) 2011年12月26日に通知された「心理的負荷による精神障害の労災認定基準」は不十分な点が多いので、以下の点について早急に運用を改め、改正すること。
① 精神障害で療養しながら就労したり、発症したにも関わらず療養に至っていない労働者が過重労働を強いられた結果、より症状を増悪させる事案が後を絶たない。あるいは精神障害を発症した後の心理的負荷については、『特別な出来事』に該当する心理的負荷がない限り労災認定しない現行基準は、発症後も努力して働いた人ほど救済されないことになっている。精神障害発症後の心理的負荷も必ず評価し、その総合評価が『強』の場合はもとより、自然経過を超えて著しく増悪したと認められる場合は業務上決定すること。
② 納得できない「解雇」の心理的負荷の強度は「強」と評価すること。
③ 「退職を強要された」という請求人の主張がほとんど認められておらず、労災認定されない例があまりにも多い。給付担当者は、雇用をめぐる労使関係を理解していないことが原因であると考えられるので、決定に際しては個人労使紛争の相談対応をする職員の協力を得るようにすること。
④ 具体的出来事の「退職を強要された」について、退職の「強要」と「勧奨」を区別する具体的な基準を明らかにすること。
⑤ 「ひどい嫌がらせやいじめ」と考える請求人の事例が、「上司とのトラブル」とされることが極めて多い。その区分の基準を明らかにするとともに説明にすること。
⑥ 「パワーハラスメント」を心理的負荷評価表で類型化するにあたっては、「ひどい嫌がらせやいじめ」から抽出するだけではなくて、「仕事内容・量の大きな変化」、「退職強要」、「配置転換」、「上司とのトラブル」等の中にもハラスメントと考えられる事例も多数含まれているので、的確に分析、整理すること。
⑦ 「顧客からのクレーム」にともなう労災認定事例が多いことなどを鑑み、「パワーハラスメント」ではなくて、「顧客等からの暴行・暴言等」として類型化すること。
⑧ 脳・心臓疾患や精神障害の労災請求に対する労働時間の認定において、監督担当部署と労災担当部署間が連携することは当然である。ただし労働時間が客観的に記録されていない場合や労働時間に基づいて適正に賃金が支払われていない場合ほど、労働時間が未払いの法違反を指導する監督担当部署の視点から過小評価されがちになっている(例えば東京労働局内では、労基署が発症前の時間外労働を「月0時間」と認定して不支給にした事案で、審査請求で時間外労働の認定が「月90時間」以上となり、不支給決定が取り消されている)。具体的には、待機など場所的拘束性が高い場合や、就労場所ではなくても成果物、IT機器の記録などから業務中と判断できる場合は、すべて労働時間として算定、推認すること。
⑨と⑩は後掲。
⑪ 東京労働局内で、パワーハラスメントに関連する精神障害の労災請求において、請求人が提出した録音記録が完全に無視され、当該録音記録と矛盾する会社側関係者の主張そのままの事実認定が行われた事例があった。パワーハラスメントによる労災請求において、録音記録は事実を立証する極めて有力な証拠である。会社側関係者の聴取のみに依拠し、録音記録等の客観的証拠を排除しないこと。

【厚生労働省回答(労働基準局補償課)】

(問①③⑪関連)
精神障害の労災認定について、様々な御意見をいただいているところですが、心理的負荷の評価に当たっては、請求人や関係者の方々への聴取等を適切に行うなどにより、公正な判断となるよう、今後とも都道府県労働局や労働基準監督署に指導等を行ってまいります。
(問⑥関連)
「パワーハラスメントを受けた」の項目に係る心理的負荷の評価に当たっては、パワーハラスメント防止指針等の内容も踏まえて、適切に判断してまいります。
(問②④⑤⑦関連)
なお、精神障害の労災認定基準の内容全般については、令和2年度に収集した最新の医学的知見を踏まえ、令和3年度に有識者による専門検討会を開催し、検討を行う予定としています。今後、検討会での議論の結果を踏まえ、適切に対応してまいります。
(問⑧関連)
被災労働者の労働時間の具体的な認定に当たっては、使用者の指揮命令下にあると認められる時間を適切に把握することが重要となります。
労働時間の認定については、都道府県労働局や労働基準監督署に対して参考事例集を示すなどしており、今後とも適正に労災認定が行われるよう対応してまいります。

【厚生労働省交渉でのやりとり】

※おつて追加する予定です。

【要望事項】

B.2.(1)⑨ 和歌山労働局内で、労働時間の認定において、始業時間、終業時間が記録から分かっているにもかかわらず、具体的な日時もはっきりしない関係者の証言や客観的証拠がない部分を労働時間として認めなかった。審査請求で追加の証拠を提出した結果、大幅に労働時間が認められて原処分庁の決定取り消しとなった。客観的証拠を示さなければ労働時間が認められなかった事例が見受けられる。特に審査請求、再審査請求で原処分庁の決定取り消しとなった事案について、このようなずさんな労働時間の把握の運用を点検し、改めること。また情報共有を行うこと。

【厚生労働省回答(労働基準局補償課)】

本件に限らず審査請求や再審査請求で取り消しとなった事案については、原処分庁において必要な調査・確認を速やかに行った後、支給決定等の変更決定処分を行うとともに、局内で取消決定・裁決となった理由、今後の対応などを周知しています。

【厚生労働省交渉でのやりとり】

※おつて追加する予定です。

【要望事項】

B.2.(1)⑩ 大阪労働局内で、会社の社長が入社1か月の20代の女性社員を、初契約がとれたお祝いと称して連れ出し、酔わせて強姦した事案が業務外とされ、現在審査請求中である。原処分庁の判断は、認定基準のセクシャルハラスメント調査における留意点をまったく考慮せず、さらには当事者のみでの出来事のため事実確認ができないとしてセクシャルハラスメントとして評価しないとした。この事案は、特別な出来事の「本人の意思を抑圧して行われたわいせつ行為」にあたり、早急に原処分庁の決定を取り消すべきである。これまでも当事者しかいないところで起きた出来事として評価されなかった事案がなかったか点検するとともに、そのような運用を改めること。

【厚生労働省回答(労働基準局補償課)】

個別の事案についてはお答えを差し控えるが、審査請求事案においては、担当審査官において、収集・提出された資料や意見書、聴取書の内容を精査して、それらについて十分に検討した上で決定がなされるものと承知しています。
本件に限らず、セクシュアルハラスメント事案については、行為者が雇用関係上優越的な立場にある場合などは、やむを得ず被害者が行為者に迎合するような言動をとること等が考えられるため、引き続き慎重な調査に努めて参ります。

【厚生労働省交渉でのやりとり】

※おつて追加する予定です。

【要望事項】

B.2.(3) 神奈川労働局内で、精神障害の請求について署で本人聴取して特別処理班に任せる署(9署)と、全てを特別処理班で調査している署(横浜北、横浜南、厚木)との間で業務上決定件数があまりにも大きく異なっている。例えば2019年度、川崎南、川崎北では決定件数21件中業務上はたったの1件である。この事実に対する見解を明らかにすること。

【厚生労働省回答(労働基準局補償課)】

精神障害の労災認定については、請求人に対する聴取のほか、関係者の聴取や他の客観的資料を踏まえ、認定基準に基づき判断を行っているものと承知していますので、労働基準監督署ごとの支給決定件数の差につきましては、一概に申し上げることはできません。
※おつて追加する予定です。

【要望事項】

B.2.(4) 厚生労働事務官の長年の新規採用の途絶とそれを補ってきた監督官の異動に伴い、労災保険給付に係る業務の部署において、極めて深刻な人員不足による業務負担とそれに伴う職員の休職、ずさんな調査が多々見受けられるので、ただちに改善すること。

【厚生労働省回答(労働基準局労災管理課/労働基準局補償課/労働基準局総務課)】

1 労災補償行政においては、被災労働者及びその御遺族からの労災請求に対し、迅速かつ公正な保険給付の決定が求められており、これまでも、厚生労働事務官の採用再開を含め、労災補償業務を担当する職員の増員を図るなど、必要な体制の確保に努めてきたところです。
2 いずれにしても、定員事情は厳しいところでありますが、引き続き、必要な体制の確保に努めるとともに、保険給付の決定のために適切な調査を行うことについて、引き続き徹底してまいります。

【厚生労働省交渉でのやりとり】

※おつて追加する予定です。