全国安全センターの厚生労働省交渉(2021.7.20):A.3. 過重労働による健康防止対策、A.4. ストレスチェック制度
※全国安全センターの厚生労働省交渉の全体-「労働安全衛生・労災職業病に関する要望書」の全文はココで確認できます。
A.3. 過重労働による健康防止対策について
【要望事項】
A.3.(1) 治療中や障害者に対する労働者への使用者の配慮が十分ではないために、病気や障害を理由に退職を余儀なくされたり、そもそも健診を受けなかったり、その後の治療状況を会社に正確に報告できないことが少なくない。事業主や人事労務担当者らが利用する「産業保健総合支援センター」や「地域産業保健センター」ではなくて、労働者の相談に具体的に応じる「産業保健労働者相談センター」(仮称)を設立すること。
【厚生労働省回答(労働基準局安全衛生部労働衛生課/雇用環境・均等局総務課労働紛争処理業務室/職業安定局障害者雇用対策課)】
1 厚生労働省は、事業場における、労働者の治療と仕事の両立を図るための取組みを含む産業保健活動を推進するため、「事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン」や「企業・医療機関連携マニュアル」等を公表するとともに、シンポジウム及びセミナーの開催等を実施することで、事業場等に対する当該取組の周知・啓発を進めています。
2 また、都道府県産業保健総合支援センターでは、労働者からの申出に応じて治療と仕事の両立に係る個別調整支援を行っているほか、がん等の疾患拠点病院や地域の基幹病院等に両立支援出張相談窓口を設置し、治療中の労働者からの相談に対応しています。
3 このほかにも、地域産業保健センターにおいては、労働者数50人未満の小規模事業場で働く労働者のうち、メンタルヘルス不調を感じている者等に対し、医師又は保健師による相談・指導を行っています。
4 加えて、働く人のメンタルヘルス対策のポータルサイト「こころの耳」において、メンタルヘルス不調や過重労働による健康障害に関する相談窓口を設置し、労働者等に対し電話、メール、SNSによる相談対応を行っています。
5 また、病気や障害を理由に退職を余儀なくされるなど労働関係における個々の労働者と事業主との間の労働問題に関する相談については、全国の都道府県労働局や労働基準監督署等の総合労働相談コーナーにおいて対応を行っています。
6 さらに、障害者雇用促進法においては、事業主に対して、雇用管理の各場面における合理的配慮の提供を義務付けており(※)、労働局において、必要な助言・指導を行うこととしています。
※事業主に対して過重な負担を及ぼすときは提供義務を負いません
7 引き続きこれらの取組を推進することで、治療中であったり、障害を持っている労働者であっても、安心して仕事に取り組めるような、働きやすい職場環境づくりを促進してまいります。
A.4. ストレスチェック制度について
【要望事項】
A.4.(1) ストレスチェック制度が実施されて5年になる。この間も精神障害の労災請求は増え、認定件数も減っていない。この5年間におけるストレスチェック制度による成果について、どのように評価、総括しているのか明らかにすること。とりわけ集団分析による職場改善の実施状況について、どの程度把握しているのか明らかにすること。
【厚生労働省回答(労働基準局安全衛生部労働衛生課)】
1 労働安全衛生調査(実態調査)特別集計によると、ストレスチェックを実施した労働者数50人以上の事業場のうち、ストレスチェックの結果を集団ごとに分析し、その結果を活用して職場環境改善を実施した事業場の割合は、平成28年は37.1%、平成29年は51.7%、平成30年は63.7%と着実に増加しています。
2 さらに、ストレスチェック制度創設から現在までにおける、当該制度の成果については、令和3年度、ストレスチェック制度の効果検証に係る調査等事業を実施し検証を行っているところです。
【要望事項】
A.4.(2) ストレスチェックによる集団分析とそれに基づく職場環境改善を義務化すること。
【厚生労働省回答(労働基準局安全衛生部労働衛生課)】
1 ストレスチェックの結果を一定の集団(職場や部署単位)ごとに集計・分析し、その結果を活用して職場環境改善を実施することは、労働安全衛生規則(昭和四十七年労働省令第三十二号)第五十二条の十四の規定により、事業者の努力義務とされています。
2 厚生労働省としても、労働安全衛生規則の規定に基づき、各事業場における職場環境改善を進めるため、全国の産業保健総合支援センターにおいて産業保健スタッフや労働者等に対し研修や教育を実施するとともに、職場環境の改善を実施した事業場に対する助成金を設けているほか、職場環境改善の実施にかかる手引を作成するなど、職場環境改善の推進に取り組んでいるところです。
3 引き続き、こうした取組を通じて、事業場における職場環境改善の実施率向上に努めてまいります。
【厚生労働省交渉でのやりとり】
全国安全センター・飯田:ストレスチェックにつきましては、ある意味で鳴り物入りではじまってから5年になります。しかし、どのような成績や効果をあげているのか。相変わらず精神障害の労災の請求はうなぎ登りで増えていますし、認定件数も減っていないという実情があります。一方でそのストレスチェックというのは、実施率はそこそこかもしれませんが、どれだけの労働者が受検しているのか。あるいはどのぐらい集団分析が実施されているのか。この点について関心の高いところです。実際には職場環境の改善につながらないと、本来の目的を達したことになりません。この点について皆さんのほうからご質問やご意見があれば出していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
全国安全センター・平野:まず質問なんですけど、回答の1の職場環境改善を実施した事業場が増えているということで、平成30年は63.7%ということですが、これはどういう調査によるものですか。50人以上の事業場に全部アンケートとって調査したデータなんですか。
厚生労働省:データのかたちということで申し上げますと、元になっているのは労働安全衛生調査ですね。こちらは、ちょっと去年はやってないんですが、基本的には毎年行われている政府統計でございます。で、この中からストレスチェックの実施義務がかかっております労働者50人以上を使用する事業場を抜き出してですね、そちらについて再度集計を行いまして、その結果としてストレスチェックにかかっている、事業場の中で実際にこの成績の結果を活用して、職場環境改善を実施した事業場というのは、このパーセンテージになっています。
全国安全センター・平野:全部じゃないですよね。
全国安全センター・古谷:サンプル調査。
厚生労働省:全数調査ではありません。サンプル調査です。調査の仕方は、ホームページのほうに載っています。
全国安全センター・古谷:令和3年度にストレスチェック制度の効果検証に係る調査等事業と回答されているけれど、いま厚生労働省のホームページを検索してみて、2月に入札公告が出されていることを確認したのだけれど、これはもう決まったんですかね。
厚生労働省:はい。現在、動いております。
全国安全センター・古谷:どこが。
厚生労働省:みずほファイナンシャルテクノロジーが受託しています。
全国安全センター・古谷:今年度中の調査ということで、だいたいどんなかたちでいつ頃、結果が公表できそうかっていう目処はあるんですか。
厚生労働省:最終的なゴールといたしましては、こういった調査を踏まえてですね、小規模事業場に対して、ストレスチェックの実施だったりとか、その環境改善の手引きを作成するというゴールを持っております。本年度の事業になりますので、来年度にその結果をとりまとめて手引き作成して、来年度以降にまたホームページ等で周知を図っていく、というようなところです。
全国安全センター・古谷:調査結果自体がたぶん報告される?
厚生労働省:調査をして、その結果をもとに手引きを作るというところです。
全国安全センター・古谷:調査結果報告も出ませんかね。
厚生労働省:報告書自体はいただくところではあるんですけれども、基本的には、いただいた報告内容っていうのをその手引きにつなげていく。
全国安全センター・古谷:手引きも今年度の事業ですか。
厚生労働省:報告いただいた調査の結果を踏まえて、それを手引きに落とし込んでいく。
全国安全センター・古谷:来年度?
厚生労働省:今年度事業なので、その結果はまた来年度以降、ホームページ等で公表していくっていうかたちになります。
全国安全センター・古谷:手引きも今年度中に作ろうという、予定になっているということですか。
厚生労働省:ゴールが手引きを作るっていう事業なので、その前段階としてこれまでのスレスチェックの実施状況とかっていうのを調査をします。その調査をした結果を踏まえて、ストレスチェックを普及させるにはどうしたらいいのかというところで、手引きとして完成させていくという事業なので、はい。最終ゴールとして手引きがあるので、それを今年度事業が終わった後に、来年度以降、いまホームページでも各種パンフレットを周知していますが、同じかたちで周知を図っていけるようというふうに考えておるところでございます。
全国安全センター・古谷:労働安全衛生調査の実態調査は見たことあるんですけれども、あれには都道府県のデータは出ていないんですが、それなりのサンプル数があるから、都道府県別データを出しても意味なくないことはないと思うんですが、都道府県別のデータって出せ得ますか。わかります?
厚生労働省:都道府県をキーにして、何かそのそれを調べようという意図ではないです。
全国安全センター・古谷:今度の平成3年度の新しい調査事業っていうのは、規模感としては、それを上回るようなイメージですか?
厚生労働省:いや、小さいです。全然違うので。
全国安全センター・古谷:どういう内容の調査になるんですか。もちろん専門家も関与するのでしょうが。
厚生労働省:もちろん、各専門家に入っていただいてご議論いただいた上で、調査票を各専門家のご意見を踏まえて作成して、それで調査していくと。で、その結果を踏まえて手引きを作っていくというところで。われわれだけで作るのではなくてですね、当然そのストレスチェックにいままで携わってこられた専門家の方とか、労使の方々にも入っていただきながら、ご意見、踏まえながら、調査等を進めておるところでございます。
全国安全センター・古谷:その手引き作成のための検討会みたいなのを作るという予定ではない?
厚生労働省:従来の委託事業においても、基本的にはその手引きを作成するときには、そういった検討委員会を組織しまして、で、この中でご意見をいただいた上で、その最後にそういったパンフレットを世に出していくというかたちになりまして。この事業も同じ形を踏襲しております。
全国安全センター・古谷:委託先のみずほなにがしが、その中に設置するというイメージですか。厚生労働省のいわゆる専門検討会議ではなく。
厚生労働省:ああ、そういうことではなくて、あの、単に、あの、はい。
全国安全センター・古谷:委託先の会社が、中で設置する。
厚生労働省:あの、何て言うか、あの委託事業として、そういった専門家の方々の意見も踏まえながら、作っていくというところで、各種専門家の方々に入っていただいて、というところでございます。
全国安全センター・平野:私はいくつかの職場の産業医をやってるんですけど、当然まあストレスチェックをやっています。集団分析も一応データが来るんですけどね。だいたいが実態見ると、一応その点数が100点以下だったら、ああ良かったね、というので、終わる、終わりかけるんですよね、だいたい。そこで私も産業医なんで、いやそうじゃないんで、もっと細かく分析してやれよっていう話をして、初めてはじまるんですけど。おそらく一般の事業所って、義務化になって、ストレスチェックの母集団の分析に基づく職場環境改善も義務化され、まあ努力義務ですからね。おそらく点数が100点か、100点前後で、まあいいよねっていうんで、終わってしまっている可能性がかなり高いと思うんですよ。この数字は、63.3%ということなので。それなりにいろいろ広報で努力はされているんですけど、やっぱりかなりしっかりやっていかないと、実態はおそらくかなり点数だけでさっと流されちゃってるという可能性もありますので、それはぜひ、認識をしていただいて、やっていただきたいと思います。
厚生労働省:はい。おっしゃっていただいたとおりのところで、紙にも書かせていただいたんですけど、どうやったら職場環境改善とかが進むのかといった、手引きとか作って。やり方をまず周知していったうえで、行っていただいているところでございますので、当然、その単にストレスチェック実施したで終わるんではなくて、その結果というのを事業場の職場環境の改善につないでいただくよう、引き続きそういったところの支援とか、また、周知ですね、進めてまいりたいというふうに考えております。
安全センター・田島:関西労働者安全センターの田島と申します。ストレスチェックをやれば報告義務がありますよね。この実施率は、その報告から得た数字かなと思ったんですけど、そうじゃなくて、サンプル調査の結果だと。
厚生労働省:監督署の報告を集計したわけではなくって、労働安全衛生調査に基づいていて、労働安全衛生調査自体がサンプル調査なので、その結果に基づいて出しているところですね。
安全センター・田島:届出された件数とかの集計報告というのは、たぶん平成元年度ぐらいまで出たのを見たような気がするんですけど、毎年出していない?
厚生労働省:ここに書かせていただいた、特別集計の結果につきましてはおっしゃるとおり[サンプル調査]で、労働安全衛生調査のあった年には特別集計した結果をホームページに載せさせていただいています。
安全センター・田島:その調査のあった年じゃないと報告してない。全国に届出したのは全部、毎年集計するとか、そういうことはしていない。
厚生労働省:してないですね。基本的には、労働安全衛生調査をやっていただいた年に、その結果から特別集計をしてもらって、それをわれわれのホームページのほうで、ストレスチェックについてはこういった結果でしたというのを出させていただいておりますので、去年とかは調査がなかったんで、公開されていないのはあるかもです。
安全センター・田島:わかりました。そうしたら、全体的にきちんと実施しているところが増えているとか、そういうことは、どういうふうに把握されているんでしょうか。
厚生労働省:実施率が、ということですか。
安全センター・田島:はい。そうそう。
厚生労働省:あの、結局、ひとつはその、信頼性のある指標として労働安全衛生調査のなかで実施していただいているところでございまして、その結果として、実施率、何%の事業場が実際に実施しましたというのを出させていただいているところ。それをもって一応、把握はしているというところ。
安全センター・田島:全数調査ではなくても、それで把握していると。
厚生労働省:まあ、政府統計を用いて、その中で実際に実施率が上がっているんですけども。
安全センター・田島:上がっているということですね。はい、わかりました。ありがとうございます。
全国安全センター・飯田:はい。またその調査の結果については、あらためてまとまった段階でぜひ参照したいと思います。とにかく実施率がある程度伸びていくというのは結構ですが、もうひとつ、受ける労働者の受検率がどう増えるかも関心のあるところです。やったのはいいんだけれども、受ける労働者数が減ってきているというような傾向がないのかどうか。あるいは、ここにも報告されていますけれども、職場改善に、どの程度寄与したのか。またそれは実態調査を踏まえたうえで、われわれとしても評価をしていきたい。