世界の2020年の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)/労災請求・認定 各国で激増-長期的影響等の監視が必要(2021年3月31日)

職業病としてのCOVID-19:欧州の均質化の必要性-2021.3.26 欧州労働組合研究所(ETUI)

COVID-19パンデミックは、労働環境でこのウイルスに曝露した労働者に大きな影響を与え続けている。Eurostat(欧州統計事務所)によれば、ほとんどの[EU]加盟国はCOVID-19を職業病として認めている。にもかかわらず、状況は依然として複雑であり、欧州全体で対照的である。これが、12か国の専門家らがいくつかの法的及び実際的な事例を提供した、ETUI(欧州労働組合研究所)の最初のオンラインセミナー「職業病としてのCOVID-19」から導き出された主な教訓のひとつである。

職場でCOVID-19ウイルスに感染したということは、何にもまして法的証明を必要とする質問である。例えば、スペインとイタリアは、COVID-19パンデミックの影響をもっとも受けた2か国だった。しかし、両国は、この現象に対するアプローチの仕方に異なる見方をもっていた。スペインでCOVID-19が職業病とみなされる条件を満たしている場合、それはイタリアでは労働災害として扱われる。大部分の欧州諸国では、職業病はリストのもとに分類されており、そのリストはILO(国際労働機関)またはEU[欧州連合]のリストと同じかもしれない。ハンガリー、ポーランド、スロバキア、クロアチアやラトビアのように、COVID-19は一般的には感染症と同一視されている。これらのリストは、国ごとにいくらかの違いはあるものの、主に被用者についてのものである。例えば、フランスの法令によれば、民間部門の労働者だけが認定を請求することができる。

職業病とみなされるためには、疾病と職場曝露の間に明確なつながりが確立されなければならない。COVID-19パンデミックにおいては、医療及び社会サービス労働者に関しては、この関係は明確であるように思われる。しかし、医学的及び行政的条件を満たすことは、認定手続の対象でなければならず、非常に複雑であることも多い。チェコ共和国だけは、疾病が実際に労働の遂行と直接結びついて発生したことの証明が必要ではない。これらのことは、条件と手続が国によって異なっているかもしれないという事実を示している。また、認定されるまでに何か月もかかる場合もある。

COVID-19の無症候性の事例や長期的な影響が必ずしも考慮されているわけではないことから、疾病の臨床症状は調査するのが難しいかもしれない。業種別の評価はケースバイケースの調査よりも一般的なルールになっていないため、慣行の違いも現われている。ポルトガルでは、認定の問題は何よりもまず政治的であり、医療労働者と警備員だけがそれを請求することができる。フランスでは、幅広い部門が除外されていることから、司法手続が労働者が自らの権利を主張するための唯一の道となった。わずかな事例しか認定基準を満たさない理由を説明している制限的な法令の枠組みのゆえに、ルーマニアの状況も異なっている。

いったん職業病として確立されれば、労働者は、収入の損失を完全にまたは部分的にカバーするであろう補償の恩恵を受ける。オランダは、特定の業種や疾病について多くの分類基準があるとはいうものの、職業病についての補償制度がないことから、他と区別される。したがって、COVID-19は補償が可能な職業病と認められていない。

COVID-19の影響を受けた医療労働者に関する調査プロジェクトを実施したUNICARE[国際的労働組合]によれば、欧州諸国は相対的に包摂的でよりよい社会的支援を認めている。しかし、いまなおよく知られていない長期的影響及び結果を対象とするように、COVID-19の臨床症状の定義を拡張する必要があるかもしれない。さらに、どれだけの労働者が影響を受け、どの業種が関連しているのか、正確に評価するためのデータも必要である。

労働者に対するCOVID-19の悪影響と対処すべき主な問題点を示した『職業病としてのCOVID
-19』[Am J Ind Med. 2021;6:227–237]でさらにくわしい情報をみつけることができる。UNICAREが発行した別の報告書『COVID-19に対するシールドの構築』は、COVID-19パンデミックの間及びその後に介護施設の労働者と入居者の安全を維持するのに役立つガイドラインを提供している。

https://www.etui.org/news/covid-19-occupational-disease-need-european-homogenisation

イタリア:2020年の労働災害数の最初のデータ-2021.2.27 Eurogip

INAIL(イタリア全国労災保険機関)は2020年に554,340件の労働災害を記録した。これは発表されたばかりの暫定ーデータによるものである。2019年(641,638件の労働災害)と比較して13.6%の減少である。他方で、死亡数は2019年1,089件に対して2020年1,270件で16.6%の増加であった。

2020年最初の9か月は2019年と比較して労働災害の21.6%の減少を記録したものの、最後の四半期には9.1%増加した。医療及び社会保障部門では労働災害報告件数の急増が目立ち、4分の3近くがコロナウイルス感染に関係したものだった。イタリアでは、COVID-19は、AIDS、マラリア、結核、破傷風、ウイルス性肝炎など、他の致死的疾病と同じやり方でCOVID-19が労働災害として認定される。医療及び社会保障部門では、前年同時期と比較して、増加は年全体で+206%(2019年約27,500件から2020年84,000件以上)で、ピーク時の11月には+750%、3、4、10、12月には+400%から+500%の超過だった。-5%から-17%の幅で減少したのは1月と夏の間だけだった。男性では労働災害が22.1%減少したが、女性では1.7%の増加だった。最初の増加は3月(+23.8%)と4月(+2.4%)に記録され、2020年の最後の3か月間増加し続けた(+45.2%)。
INAILはまた2020年に45,023件の職業病の申告を登録したことも報告しており、2019年よりも16,287件少なかった(-26.6%)。もっとも報告の多かった疾病は筋骨格系障害(28,164件)、神経系(5,060件)、聴力(2,919件)及び呼吸器系(1,808件)の障害と腫瘍(1,584件)だった。

https://eurogip.fr/en/italy-first-data-on-the-number-of-accidents-at-work-in-2020/

デンマーク:COVID-19労災の最新情報-2021.3.12 Eurogip

3月8日に補償機関であるAES(労働市場保険)は労働関連COVID-19の4,921件の報告を記録した。それには、この疾病自体に関連した事例だけでなく、例えば保護機器の使用によって引き起こされたアレルギーも含まれている。

被災者が疾病に罹患し(診断がなされ)、それが労働関連であることが証明されれば、COVID-19症例は労働災害または職業病として認定され得る。デンマーク労働環境庁の評価ガイドで述べられているように、決定的なのは感染の時期である。それゆえ、5日間よりも長い期間、COVID-19に感染しているかまたは感染している可能性のある者と被災者が接触していた場合には、職業病として認定されるだろう。

いくつかの職業は、労働者が労働において感染に曝露したという強い推定と関係している。これには、感染した患者と直接接触する集中治療室の看護士など、医療制度における労働者が該当する。医療及び社会福祉部門の労働者、感染した居住者や面前で咳をする警察官と接触する施設の看護士も影響を受ける。

AESは毎週数字を更新している。2020年4月中頃には、AESは20件のCOVID-19関連事例の報告を受けていた。

https://eurogip.fr/en/denmark-update-on-covid-19-occupational-injuries/

スウェーデン:2020年に報告された職業病が劇的に増加-2021.3.21 Eurogip

スウェーデン労働環境庁が発表した暫定統計によれば、2019年と比較して2020年には職業病の届出が86%増加した。この数字は主として進行中のパンデミックによって説明される。

まさに医療、介護、社会福祉では、報告された職業病が308%増加した。主に女性が関係しており、男性の18%と比べて、申告が119%の増加だった。これには、コロナウイルス感染症を含め、化学的及び生物学的要因による疾病が含まれている。他方、騒音や振動など、社会的、人間工学的または物理的要因による他の職業病は減少した。

同機関は、2019年の約半数である24件の死亡災害と、2020年には2019年よりもわずかに少ない労働災害を記録したことも報告している。確定データは6月に公表される予定である。

https://eurogip.fr/en/sweden-dramatic-increase-in-occupational-diseases-reporting-in-2020/

ドイツ:2020年の労災請求を反映した保健危機-2021.3.23 Eurogip

COVID-19パンデミックは明らかに2020年の労働災害率に影響を与えた。それゆえ、2019年と比較して、労働災害(760,369件)は12.8%、通勤災害は18.2%減少した。他方、職業病の申告及び認定事例は明らかに増加している。

「労働者の移動が相対的に少なくなり、多くが短時間労働やテレワークだったことが、労働災害件数が減少した理由である」と、暫定データを公表したDGUV事務局長のDr. Stefan Hussyは言う。学校児童や生徒の保険者でもあるDGUVは、2019年と比較して、41%以上の学校災害件数(2020年に690,198件)の減少も記録した。学校通学途上災害件数(71,576件)は34%減少した。これらの減少は、教育及び医療施設の部分的閉鎖によって説明することができる。

職業病については、2019年と比較して、2020年に受け付けた届出合計件数(105,759件)は32%増加した。認定件数(37,886件)はほぼ109%増加した。COVID-19症例については、2020年12月31日までに30,329件の報告が提出された。同じ日までに、これらのうち22,863件について決定がなされ、18,609件が職業性と認定された。

https://eurogip.fr/en/germany-health-crisis-reflected-in-workplace-claims-in-2020/

認められた職業病としてのCOVID-19:世界の現状-Safety and Health at Work 12 (2021) 136-138

抄録:世界規模で新たに現われている感染症である2019年コロナウイルス感染症(COVID-19)は、労働者、とりわけ医療制度における労働者が職場で感染する可能性があることから、職業病に分類され得る。2020年12月15日現在、われわれは、職業リスクのひとつとしてのCOVID-19の認定に関する一定の諸国の労働安全衛生慣行をまとめた。認定の状況や特別な法令の有無を含め、状況は国によって異なっていた。国際機関、すなわち国際労働機関、世界保健機関、及び欧州連合は、COVID-19の労働関連性に関する調査研究を実施し、認定のための基準を提案するとともに、国の特別法令の基礎を提供するために職業病リストにこの感染症を追加すべきである。国レベルの関係者も法令を適応させるために行動すべきである。

2019年新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、新たな職業病として定義されるとともに、そのパンデミックの初期段階から世界的に認定されるべきであると示唆されてきた。職業病の重要性には労働生活や予防可能性との直接の関連が含まれる。加えて、職業病の法的側面は労働者に、保険機関によって認定される補償の資格を与える。

各国は、自国の状況に応じて独自の保険及び補償制度をもっている。2020年12月15日現在の、職業リスクにより罹患したCOVID-19に関する一定の諸国における慣行を、表1に要約した。いくつかの国は、職業病(例えばアルゼンチン、フランス、ノルウェーや南アフリカ)または労働災害(例えばイタリア)としてCOVID-19を認定する自国の法制度を改正した。ベルギー、日本及び韓国は一定の条件のもとでのCOVID-19の認定を発表した。アメリカは連邦職員に、外傷または職業病のどちらかとして職務によりCOVID-19に罹患した場合に補償を請求することを認めた。加えて、連邦職員以外の労働者のために多くの州レベルでの規則がつくられた。ドイツは、とりわけ医療労働者について、職業病としての認定の可能性を発表した。この当初のアプローチとは反対に、事例に基づいた評価の後に、労働災害としての認定が定義された。マレーシアでは、メディアのニュースの後にCOVID-19の職業病としての認定が発表された。中国、シンガポールや台湾を含めた他のいくつかの国は、労災補償のための自国の現行制度にしたがって認定される可能性を発表した。オーストラリアも、事例に基づいた評価の後に補償の可能性を発表した。トルコでは、COVID-19に特化した法令上の変更はまだなされていないが、特別法令について議論が進行中であるにもかかわらず、現行の法令が[適用可能と]指摘されてきた。ブラジルでは、因果関係が提供されない限りCOVID-19は職業病とはみなされないとした法令が発表されて、状況が複雑化した。しかし、連邦最高裁判所がこの法令を差し止めた。

職業リスクによりこの感染症に感染した労働者、とりわけ医療労働者の数が増加するにつれて、CO
VID-19の労働関連性は否定できないように思われる。COVID-19が職業病として認定されていない諸国では、国際的手引きが必要である。COVID-19に適応する(例えば医療及び非医療労働者のための認定基準)ことなしには、労働者が現行の労災補償慣行の対象にならない場合には、パンデミック期に伴う諸問題が職業病の報告及び補償上の進行中の困難に追加される可能性がある。国際機関による助言もこうした問題を克服することができる。国レベルの規則の実例があるにもかかわらず、今日までCOVID-19は、国際機関、すなわち国際労働機関、世界保健機関、及び欧州連合が提供する職業病リストに追加されていない。国際機関が職業または職務に関連したCOVID-19リスクに関する調査研究を計画・実施し、労働関連症例を認定すためのる基準を提案するとともに、その提案する職業病リストにCOVID-19を追加することは、各国における行動のための基礎を提供することになるだろう。労働関連COVID-19を認定するための規則を待ち望んでいる諸国では、関係者は法令における変化を促進するために行動すべきである。

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2093791121000019

「COVID-19を職業病に!」キャンペーンビデオを作成-2021.3.19 ASETUC

国際建設林産労連(BWI)、国際公務労連(PSI)とUNIグローバルユニオン(UNI)は、ASEANサービス労組協議会(ASETUC)の「COVID-19を職業病に分類」させるキャンペーンを支援してビデオを作成した。以下で視聴することができる。

https://www.facebook.com/BWIGlobalUnion/videos/1073825886443364

[関連情報の御案内]コロナ労災:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の労災補償について