親環境(環境にやさしい)塗料と言ったのに…現代重労働者『集団皮膚病』 2020年1月8日 韓国の労災・安全衛生
現代重工業系列の造船所で、ペイントを塗る労働者に、昨年、皮膚病が集団発生した事実が遅れて判った。大気環境保全法の規制を避けるために、会社が『親環境ペイント』として導入した一部の無溶剤塗料が原因であると把握された。使用者は職業病の所見を受けた正規職労働者を転換配置したが、社内下請け労働者は同じ職業病の所見を受けても、会社を離れなければならなかった。職業病の発病と事後処理で、正規職と非正規職間に差別が生まれた。
現代重工業の労使などによれば、昨年11月末、蔚山大病院は皮膚病の症状が比較的激しい作業者13人の健康診断を実施した結果、Aさんなど9人が職業性疾病の可能性を示したと、使用者に通知した。『職業病有所見者(D1)』が5人で、『職業病に進展する恐れがあり、今後観察が必要な作業者(C1)』が4人だった。年末に症状を示さなかった作業者300人に対する健康診断でも、皮膚疾患3人を含む32人がC1と判断された。
昨年4月に船舶用ペイントとして使うために導入した無溶剤塗料が、皮膚発疹の原因だった。現代重工業の蔚山造船所では、昨年5月から皮膚発疹者が出始め、10月中旬までに24人が確認された。9月から同じ無溶剤塗料を使った系列会社の現代三湖重工業の木浦造船所では、11月までに27人に皮膚病が現れた。地方雇用労働庁の指示で10月に健康診断が行われた現代重工業と違って、三湖重工業は労働庁が介入せず、健康診断は12月に実施された。労組が確認した皮膚病発病者の90%(45人)は下請け労働者だった。
現代重工業グループの持株会社の韓国造船海洋は、「皮膚発疹の原因と推定される製品は全量回収して使わない処理をした。」「現在、発疹症状がある者はいない」と明らかにした。
現代重工業蔚山造船所の塗装工場で17年間働いたソク・ジフンさん(45)に、皮膚発疹が初めて現れたのは昨年7月だ。両手と腕に現れ始めた赤い斑点は、それから脚と胸と腹部、肩にまで拡がり、9月には全身を覆った。上体に広がり始めた後には、かゆみで身体を掻いて、明け方5~6時にならなければ寝られなかった。近くの皮膚科を訪ねても原因が判らず、イライラして苦しかった。
昨年8月中旬に、皮膚疾患を病んでいるという知らせを聞いて、会社の関係者と無溶剤塗料のメーカーであるKCCの関係者がソクさんを訪ねてきた。「このレベルなら他の部署に行くべきではないのか」と話した。おかしいと考えたソクさんは、直ぐに現場に行って、似た症状がある作業者を探し始めた。午前と午後の休み時間の20分間、ソクさん一人で15人の皮膚発疹者を訪ねた。早い人では5月から発病した人もいた。その後も10月中旬まで作業者の発病は続いた。
昨年4月に会社が船舶用ペイントとして使うために導入した無溶剤塗料が、皮膚発疹の原因だった。今まではペイントが早く乾くようにシンナーなどの有機溶剤を使ったが、うすれば大気中にオゾンを発生させる揮発性有機化合物(VOCs)が排出される。これを避けるために、VOCsの含有量が低い親環境無溶剤の塗料が開発されたが、作業者に皮膚発疹を発症させたのだ。
現代重工業の怠慢な対処が被害を増やした。KCCの関係者が8月中旬に訪問したということは、会社もその時には皮膚病と無溶剤塗料との関連性を疑っていたことを意味する。しかし会社はなかなか対処しなかった。労組は9月末から、会社に無溶剤塗料の使用中止を、蔚山雇用労働庁には臨時の健康診断をそれぞれ要請した。10月中旬に労働庁が健康診断を命令し、労使の会議を数回行った後に会社は動いた。会社は11月6日に社報で「皮膚発疹に影響を与えた可能性が高い特定成分を確認した」として、塗料の交換計画を明らかにした。しかしその間、系列会社である現代三湖重工業では、9月からKCCの無溶剤塗料が供給され、3ヶ月間に27人の皮膚疾患者が出ていた。労組は「開発品のテストを私たちにしている」として「検証されていない有害性無溶剤塗料製品を、無防備な状態で労働者に使わせて発生した深刻な化学事故だ」とした。
政府が規制を緩和したせいでもある。当初、政府はVOCs排出を縮小にするために、造船所の塗装工場にVOCsの低減施設を設置させた。しかし、2019年末に低減施設の構築による費用負担を心配した造船業界の要請で、VOCsの含有量が少ない塗料、いわゆる無溶剤塗料を使用したときには、低減施設を設置しなくても良いように規制を緩和した。これによって、造船業界が十分に安全性の検討を経ていない無溶剤塗料の使用を拡大したのだ。
皮膚発疹が現れた作業者の90%は下請け労働者だ。夜勤が多く、ペイントにより多く曝露したためだ。事後の管理でも下請け労働者は差別された。正規職であるソク・ジフンさんは職業病の有所見者に分類され、勤労禁止勧告を受けて他の部署で再配置された。一方、一部の下請け労働者は、同じ判断を受けても会社を離れなければならなかった。下請け業者の場合、作業転換ができないからだ。ソクさんは「現在、別のメーカーの無溶剤塗料が入庫されたが、下請け労働者を中心に作業が行われている。」「下請け労働者は職業病と判定されても保護を受けられないのに、これからは皮膚病があっても話せない」と話した。
2021年1月8日 京鄕新聞 イ・ヒョサン記者
http://news.khan.co.kr/kh_news/khan_art_view.html?artid=202101080600005&code=940702
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