特集①/労災保険制度見直し建議-労政審が労災保険制度見直し建議:労災情報の事業主への提供も盛り込まれる
厚生労働省は2026年1月14日、労働政策審議会(会長:岩村正彦東京大学名誉教授)から「労災保険制度の見直しについて」建議が行われたことを公表した。同審議会の労働条件分科会労災保険部会(部会長:小畑史子京都大学大学院人間・環境学研究科教授)において、2025年9月2日(第119回部会)から2026年1月14日(第127回部会)まで9回にわたり検討された結果である。
全国安全センターは、今回の検討のもととなる中間報告書をまとめた労災保険制度の在り方に関する研究会に対して2025年3月に申入書を提出(↓↓↓同年5月号参照)。
同研究会に毎回提出された「現時点における議論の確認」及び「前回研究会における委員ご発言の概要」を6~8月号(↓↓↓)で紹介した。
また、7月30日に研究会の中間報告書が公表されたことを踏まえて、あらためて労災保険部会等に対して8月に要望を提出した(↓↓↓同年10月号参照)。
同年12月号に、10月22日に開催された第122回労災保険部会に提出された①「第119回~第121回労災保険部会における委員の主なご意見」を紹介。
その後、12月18日開催の第126回労災保険部会に②「第119回~第125回労災保険部会における委員の主なご意見」、12月18日開催の第126回労災保険部会に③「第126回労災保険部会における委員の主なご意見」が提出されているが、①に掲載された内容を除き、②の項目建てに沿って③の内容を追加したものを以下に紹介した。
12月号の内容と合わせれば、①②③に掲載されたすべての内容がわかるので、参照していただきたい。
建議がふれていない私たちの要望も多いのだが、労働政策審議会建議の内容と、私たちの要望を結論だけ単純に比較すると以下のとおりである。
目次
① 暫定任意適用事業
建議は、「暫定任意適用事業は廃止し、労災保険法を順次、強制適用することが適当」としつつ、「円滑な施行に必要な期間を設けることが適当」とした。私たちは、速やかな廃止を要望している。
② 特別加入制度
建議は、「特別加入団体の保険関係の承認や消滅の要件を法令上に明記することが適当」等とした。私たちは、この結論に賛成するとともに、災害防止に関して、少なくとも特定フリーランス事業に係る特別加入団体に課せられているものと同様の要件について課すよう要望している。
③ 家事使用人
建議は、「家事使用人について災害補償責任も含め労働基準法が家事使用人に適用されることになった場合には、労災保険法を強制適用することが適当」と、問題を先送りした。私たちは、労災保険法を強制適用とすることに賛成であり、労働基準法を含めた速やかな改正を要望している。
④ 遺族(補償)年金
建議は、「遺族(補償)等年金における夫と妻の支給要件の差は解消することが適当」、「夫にのみ課せられた支給要件を撤廃することが適当」、「石綿健康被害救済法における特別遺族年金についても同様…することが適当」、「給付期間については、現行の長期給付を維持することが適当」、「特別加算を廃止し…遺族1人の場合における給付基礎日額を175日分とすることが適当」とした。私たちは、これらの結論に賛成である。
⑤ 消滅時効
建議は、「消滅時効期間が2年である給付について、発症後の迅速な保険給付請求が困難な場合があると考えられる疾病を原因として請求する場合には、消滅時効期間を5年に延長することとし、まずは、脳・心臓疾患、精神疾患、石綿関連疾病等について、対象とすることが適当」等とした。私たちは、5年を原則としたうえで、一定の職業病等について消滅時効の廃止を含めた検討を要望している。
⑥ 社会復帰促進等事業
建議は、「社会復帰促進等事業として実施されている給付について、特別支給金も含めて処分性を認め、審査請求や取消訴訟の対象とすることが適当」等とした。私たちは、これらの結論に賛成である。
⑦ 遅発性疾病に係る労災保険給付の給付基礎日額
建議は、「有害業務に従事した最後の事業場を離職した後、別の事業場で有害業務以外の業務に就業中に発症した場合における給付基礎日額の算定に当たっては、疾病の発症時の賃金が、疾病発生のおそれのある作業に従事した最後の事業場を離職した日以前3か月間の賃金を基礎として現行の取扱いに則り算定した平均賃金より高くなる場合は、発症時賃金を用いることが適当」、「有害業務に従事した事業場を離職した後、就業していない期間に発症した場合における給付基礎日額の算定に当たっては、現行の取扱いを維持しつつ、引き続き…検討を行うことが適当」とした。私たちは、いずれの場合にも、有害業務従事事業場で離職せずに働き続けた場合と同様にすることを要望した。
あらためて、前者の場合の建議の実施にあたって、定年退職後再雇用中に発症した場合、ばく露時賃金、定年退職時賃金、発症時賃金のうちのもっとも高いものが用いられるようにするとともに、後者の場合についても早急に対応するよう要望したい。
⑧ メリット制
建議は、「メリット制を存続させ適切に運用することが適当であるが、継続的にその効果等の検証を行うことが適当」等とした。私たちは、メリット制の廃止を要望しており、「メリット制が、労災かくし及び労災保険給付を受給した労働者等に対する事業主による報復行為や不利益取扱いに繋がるといった懸念について、その実態を把握し、その結果に基づき必要な検討を行うことが適当」とされたことへの具体的な対応を注視していきたい。
⑨ 労災保険決定情報の事業主への提供
建議は、「労災保険給付の支給決定(不支給決定)の事実を、同一災害に対する給付種別ごとの初回の支給決定等に限り、労働保険の年度更新手続を電子申請で行っている事業主に対して情報提供することが適当」等とした。私たちは、情報提供に反対しており、部会でも労働者委員の大きな反対があったにもかかわらず、建議に盛り込まれたことに怒りを感じている。法改正事項ではないと伝えられており、注視していく必要がある。
安全センター情報2026年3月号


