長く働けば血も変わる/韓国の労災・安全衛生2025年10月30日

▲ 資料写真チョン・ギフン記者

長時間労働は血も変える。カトリック大学ソウル聖母病院のカン・モヨル教授(職業環境医学)研究チームは、長時間労働が血液中の脂肪代謝を撹乱し、脂質異常症(高脂血症)の危険を平均10%高めるという研究結果を出した。特に、長期間追跡したコホート研究では、危険度がより明確だった。「悪いコレステロール(LDL)」の数値上昇の危険が、何と、30%高く現れた。

週55時間以上の労働者、高脂血症のリスクが10%増加

世界保健機関(WHO)と国際労働機関(ILO)は、週55時間以上働く長時間労働が、心臓病と脳卒中による死亡の危険を高めると警告してきた。両機関は、2016年の共同報告書で「長時間労働による虚血性心臓疾患・脳卒中死亡者は、全世界的に年間約74万人に達する」と明らかにした。

カン・モヨル教授研究チームは29日、産業安全保健研究院が発刊する国際学術誌<Safety and Health at Work>に掲載した論文『長時間勤労と脂質異常症の関係』で「長時間労働者は、一般の労働者より脂質異常症発生の確率が平均10%(95%信頼区間1.04~1.17)高かった」と明らかにした。研究チームは、1998年から2024年までに発表された長時間労働関連の全世界の20編の研究(韓国6編を含む)を総合してメタ分析した。

脂質異常症は、悪いコレステロール(LDL)の数値が高かったり、良いコレステロール(HDL)の数値が低い状態をいう。コレステロールは私たちの体に必ず必要な脂肪成分だが、過度に増加すると血管壁に積もり、動脈硬化・心筋梗塞・脳卒中などを起こす恐れがある。特に悪いコレステロール値が一定基準を超えると、必ず管理が必要である。

長時間労働で血中脂肪が蓄積し、回復時間が減る

時間の流れによる労働者の変化を追跡したコホート観察研究で、長時間労働者は悪いコレステロールの数値上昇の危険が約30%高く現れた。ところが、勤務時間短縮の実験では、反対の結果が現れた。2023年に韓国の自動車部品会社の男性労働者371人を対象に、一日の勤務時間を10時間から8時間に減らすと、HDL(良いコレステロール)数値が回復する傾向を示した。研究チームは「労働時間短縮は単純な休息ではなく、代謝機能の回復」と評価した。このような結果は、脂質異常症の数値が労働時間の長さによって有意に変わり得ることを示している。研究チームはこのような原因として三つを挙げた。

まず、慢性ストレスによる変化が肝臓の脂肪合成を促進するケースだ。長時間労働は慢性ストレスと密接に関連し、これは視床下部-脳下垂体-副腎軸の機能を撹乱し、脂質代謝(脂肪代謝)を変化させる。労働時間が長くなるほど血中脂肪が積もり、体が自らを回復する時間を失う。また、不規則な食事と運動不足といった生活習慣の悪化が、代謝機能を低下させる。また、睡眠不足は炎症反応を高め、脂質調節機能を撹乱する。

「心血管疾患の社会的負担を引き上げる」

研究を率いたカン・モヨル教授は「脂質異常症の危険が10%高いということは、個人には微細な差と見えるが、長時間労働者の比重が大きい韓国社会では、全体の有病率を引き上げるレベル」で、「結局、社会全体の心血管疾患負担に繋がりかねない」と話した。彼は「今回の研究は、単純にどれだけ長く働くかの問題ではなく、職業環境が代謝健康に影響を与える構造的な問題を示している。」「労働時間短縮と健康な職場環境の造成のための政策的な介入が必要だ」と注文した。

2025年11月30日 毎日労働ニュース キム・ミヨン記者

https://www.labortoday.co.kr/news/articleView.html?idxno=230939