安全衛生上の指示が労働者性や偽装請負の判断に影響を与える基本的な考え方及び留意事項個人事業者等の安全衛生対策で新通達

目次

使用者になってしまう「懸念」に対処?

厚生労働省は、2025年3月31日付けで基監発0331第1号・基安計発0331第1号・職需発0331第1号「注文者・事業者等が安全衛生上の指示等を行う場合における留意事項(労働基準法上の労働者性、いわゆる偽装請負との関係)について」を発出。そのウエブサイトの「個人事業者等の安全衛生対策について」からダウンロードできるようにして、以下のように書いている。

「注文者・事業者等が関係請負人の労働者や個人事業者等に対して安全衛生確保の観点から指示等を行う際、『業務委託等を受けた個人事業者に労働者性が認められてしまうのではないか』、『関係請負人の労働者について偽装請負と判断されてしまうのではないか』との問題意識から、必要な指示等を躊躇している状況があるとの指摘を受け、安全衛生上の指示等が労働基準法上の労働者性や偽装請負の判断に影響を与えるか否かの判断に当たっての基本的な考え方や留意事項についてとりまとめた通知を発出いたしました。
業務委託等に際し、注文者・事業者等の皆様におかれては、本通知に留意の上、躊躇することなく、必要な安全衛生上の指示等を実施していただくことにより、現場の安全衛生水準のより一層の向上に努めてください。」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/anzen/anzeneisei03_00004.html

通達の基本構成

19頁のこの通達の構成は、以下のとおりである。

1 基本的な考え方
2 労働安全衛生関係法令に基づく措置の履行との関係について
(1)総論
(2)安衛法第29条に基づく指導・指示やこれと同趣旨の指導・指示と労働者性及び偽装請負との関係について
(3)安衛法令違反の未然防止の観点から実施する広範な指導について
3 一般的な安全衛生上の指示等についての留意事項
(1)総論
(2)関係作業者の心身に関すること
 ア 心身の健康状態の確認等に関する事項
 イ 安全衛生意識の啓発に関する事項
(3)業務に関係する物に関すること
 ア 業務に使用する車両や機械・設備に関する事項
 イ 関係作業者の服装、装備、所持品に関する事項
 ウ 各種保護具・安全用品に関する事項
(4)場所に関すること
 ア 構内における安全衛生のルールに関する事項
 イ 構内における安全衛生のルールを遵守するための支援に関する事項
(5)作業内容に関すること
 ア 作業に影響を及ぼす安全衛生上の指導・指示に関すること
 イ 作業状況の監視・管理に関すること
 ウ 技術的な指導に関する事項に関すること
(6)情報共有、情報伝達に関すること
 ア 教育・研修、ミーティングに関する事項
 イ 注意喚起に関する事項
(7)その他の支援に関する事項

「3」の「各論」((2)から(7))については、各事項ごとに、
「注文者・事業者等が、関係作業者の安全衛生確保の観点から、」 ①②③… 「などを行うことがあるが、これらの場合においては、以下(ア)及び(イ)に留意する必要があること。」としたうえで、

(ア) 業務委託等を受けた個人事業者等の場合(労働者性)
(イ) 関係請負人の労働者等の場合(偽装請負への該当性)
別に、具体的な留意事項を示すという構成である。

以下に、通達の前書きから、「3」の(1)までの内容を紹介する。


通達の前書きから、「3」の(1)まで

令和5年10月27日に取りまとめられた「個人事業者等に対する安全衛生対策のあり方に関する検討会報告書」においては、労働安全衛生法(昭和47年法律第57号。以下「安衛法」という。)第29条に基づく指示等以外の注文者等による安全上の指示について、「安衛法第29条に基づき、元方事業者は関係請負人に対し、安全衛生上の指示等を行うことが義務付けられているが、同条に基づくもの以外の「安全上の指示」と「指揮命令」との関係について、国は、現場の実態を踏まえて分かりやすく整理し、周知することとする。」とされたところである。
その後、労働政策審議会安全衛生分科会において議論した結果、

・ 注文者や元方事業者が業務委託を受けた個人事業者や関係請負人の労働者の安全衛生確保の観点から行う指示等について、労働基準法(昭和22年法律第49号)上の労働者性(以下単に「労働者性」という。)の有無や偽装請負(請負契約等の形式となっているが、実態として、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和60年法律第88号。以下、「労働者派遣法」という。)上の労働者派遣事業であると判断されるものをいう。以下同じ。)への該当性を判断する観点から、基本的な考え方及び留意が必要な事項等をガイドライン等により具体的に例示すること。
・ 安全衛生上の指示等の対象者が「請負業者の労働者に該当しない者(個人事業者等)」であるか「請負業者の労働者」であるかによって、「労働者性」の問題か、「偽装請負」の問題かを切り分けて整理すべきこと。

とする方針について了承を得たところである。
このため、下記のとおり、安全衛生上の指示等が、労働基準法上の労働者に該当するか否かの判断や偽装請負に該当するか否かの判断に直ちに影響を及ぼさない場合や、留意が必要な場合について、基本的な考え方及び留意事項を示すこととしたので、注文者や元方事業者等の関係者への周知徹底を図るとともに、その運用に遺漏なきを期されたい。

1 基本的な考え方

労働基準法上の労働者性の判断に当たっては、「労働基準法の「労働者」の判断基準について(昭和60年12月19日労働基準法研究会報告)」に基づき、「使用従属性」の有無、すなわち「指揮監督下の労働であること」「報酬の労務対償性があること」のいずれの基準にも該当するものかどうかについて、請負契約や委任契約といった契約の形式や名称にかかわらず、契約の内容、労務提供の形態、報酬その他の要素から個別の事案ごとに総合的に判断することとしている。
また、労働者が、自らを雇用する事業者以外の事業者が管理する場所において業務に従事する場合には、それが労働者派遣法上の労働者派遣なのか、請負なのかによって、当該労働者の安全衛生の確保や労働時間管理の責任の所在は異なっている。労働者派遣、請負のいずれに該当するかについては、労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準(昭和61年労働省告示第37号。以下「区分基準告示」という。)に基づき、①請負事業主(請負人である事業主をいう。以下同じ。)がその雇用する労働者の労働力を自ら直接利用するものであるか、②請負事業主が請け負った業務を自己の業務として契約の相手方から独立して処理するものであるか等の観点を踏まえ、実態に即して判断される。なお、「「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(37号告示)に関する疑義応答集(第2集)」においては、発注者が請負労働者に対して、災害時など緊急時に健康や安全を確保するための指示や、安衛法第29条に基づく必要な指導・指示を直接行ったとしても、そのことをもって直ちに労働者派遣事業と判断されるものではない旨が示されている。
現場において作業に従事する者であって、業務委託等を受けた個人事業者や関係請負人(安衛法第15条第1項に規定する関係請負人をいう。以下同じ。)の労働者など、注文者や元方事業者(安衛法第15条第1項に規定する元方事業者をいう。以下同じ。)自身が使用する労働者以外のもの(以下「関係作業者」という。)に対して、注文者や元方事業者が行う安全衛生上必要とされる指示等は、作業の内容や遂行方法と関連するものも多い。このため、このような指示等を行うことにより、業務委託等を受けた個人事業者に労働者性が認められてしまうのではないか、関係請負人の労働者について偽装請負と判断されてしまうのではないか、との問題意識から、必要な指示等を躊躇することによって業務上の災害につながることも懸念される。
本通達では、注文者や元方事業者が関係作業者の安全衛生確保の観点から行う指示等について、労働者性や偽装請負への該当性の有無の判断に関し、これらの判断に直ちに影響を及ぼさない場合や留意が必要な場合を具体的に例示することにより、産業の場における安全衛生水準の確保を図ることを目的としている。
なお、以下の内容は、ヒアリング等を通じて把握した現場における問題意識を踏まえ、既存の判断基準をもとに現場の実態に即した具体例を示すものであり、労働者性や偽装請負について、新たな判断基準を示すものではない。

2 労働安全衛生関係法令に基づく措置の履行との関係について

(1) 総論

元方事業者や元方事業者以外の注文者又は事業者(以下総称して「注文者・事業者等」という。)が安衛法や安衛法に基づく命令(以下総称して「安衛法令」という。)に基づき、関係作業者に対して危険箇所への立入禁止等の措置を講じたり、業務上の災害を防止するために必要な措置の実施を指導・指示したりする場合があるが、これらの措置は、注文者・事業者等に課された法律上の義務であり、基本的に、このような法律上の義務を履行するための措置の実施をもって、直ちに、労働者性を肯定する方向に働く事情とはならず、偽装請負と判断されることもないと考えられること。

(2) 安衛法第29条に基づく指導・指示やこれと同趣旨の指導・指示と労働者性及び偽装請負との関係について

安衛法第29条第1項に基づく元方事業者による指導及び同条第2項に基づく元方事業者による指示は、関係請負人及びその労働者による安衛法令違反を防止・是正し、もって労働災害を防止する観点から元方事業者に課された法律上の義務であり、上記(1)で示したとおりであること。
また、上記の指導・指示は、元方事業者にその実施が義務付けられているものであるが、実際の現場においては、安衛法第29条に基づく指導・指示と同趣旨の指導・指示を、元方事業者に該当しない一次の請負業者が、二次、三次の請負業者である関係請負人やその労働者に対して行う場合もある。これらの指導・指示は、法律上の義務の履行を目的とするものではないが、安衛法令違反を防止・是正し、もって労働災害を防止するために行われるものであることを踏まえれば、法律に基づく元方事業者による指導・指示と同様に、基本的には、当該指導・指示をもって直ちに、労働者性を肯定する方向に働く事情とはならず、偽装請負と判断されることもないと考えられること。
他方、いずれの場合においても、安衛法令違反の防止・是正に必要な範囲を超えて、作業の内容や遂行方法について具体的な指示を行う場合は、この限りでないこと。

(3) 安衛法令違反の未然防止の観点から実施する広範な指導について

安衛法第29条第1項に基づく指導は、関係請負人やその労働者に対して安衛法令の適用がある場面において必要な事項を指導することに限られるものではなく、関係請負人やその労働者の作業方法、使用する機械等、着用する保護具や装備等について、その作業時点においては、安衛法令の適用対象とはならないものの、その後の状況変化により、安衛法令の適用対象となり、違反を生じてしまうような場合において、当該違反を未然に防止する観点から行う以下に例示する①、②のような広範な指導も含む趣旨であること。

(具体例)

① 作業場所の周辺に、作業上立ち入る予定はないものの、物体が落下してくるおそれがあり、そこで作業を行うときは保護帽の着用が義務付けられる場所がある場合において、関係請負人の労働者に対し、近くに物体落下のおそれがある場所があることを知らせた上で、何らかの事情により立ち入ることとなった場合には保護帽を着用するよう指導すること
② 関係請負人の労働者が工具一式を自ら持ち込み、その中に、予定されている作業とは直接関係のない携帯用丸のこ盤が含まれていた場合において、当該労働者に対し、歯の接触予防装置(安全カバー)について点検及び整備が行われているか確認した上で、実施していない場合には、使用しないよう指導するとともに、別の作業で使用する際に歯の接触予防装置が有効な状態で使用することが可能となるよう、点検等を実施するよう指導すること

3 一般的な安全衛生上の指示等についての留意事項

(1) 総論

安衛法令に基づき措置の実施が義務付けられているものではなくとも、注文者・事業者等が関係作業者の安全衛生確保の観点から一般的な安全衛生上の指導・指示を行うことがあるが、労働者性や偽装請負への該当性を判断する観点から、直ちに問題とはならないと考えられる場合と留意が必要な場合がある。このため、以下(2)から(7)までに具体的に想定される例を示すとともに、それぞれ「労働者性」、「偽装請負への該当性」の観点から留意事項を示した。
[以下省略]
※「個人事業者等の安全衛生対策について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/anzen/anzeneisei03_00004.html

(2) 関係作業者の心身に関すること

ア 心身の健康状態の確認等に関する事項

注文者・事業者等が、関係作業者の安全衛生確保の観点から、
① 関係作業者に対して日々の作業開始前に健康状態や飲酒の有無等をヒアリングし、当該関係作業者の健康状態等が作業の安全な実施に支障がないか確認すること
② ①の際に関係作業者が体調不良等を訴えた場合や作業中に関係作業者の体調の異変を認めた場合等に、休憩の取得や作業の中止を促し、必要に応じ、医療機関の受診等を促すこと
③ 無償でカウンセリングや健康相談を受けることができる機会を設け、関係作業者にその活用を促すとともに、関係作業者本人の同意を得た上で、カウンセリング等の結果を踏まえ安全衛生上必要と考えられる就業上の助言を行うこと
などを行うことがあるが、これらの場合においては、以下(ア)及び(イ)に留意する必要があること。

(ア) 業務委託等を受けた個人事業者等の場合(労働者性)
心身の健康状態の確認等に関する事項について、例えば、自動車を運転する者に対する飲酒の有無の確認など、関係作業者が法令を遵守しているかどうかを単に確認するものである場合は、直ちに、労働者性を肯定する方向に働く事情とはならないと考えられること。また、これ以外の場合においても、上記①~③のような行為が、安全衛生確保の観点から行われる、関係作業者の健康状態の単なる確認や、体調不良時の応急対応や休憩等の勧奨、任意の健康相談やその結果を踏まえた助言等にとどまる場合は、直ちに、労働者性を肯定する方向に働く事情とはならないと考えられること。
他方で、注文者・事業者等が単に法令遵守状況の確認や関係作業者の健康状態の確認等を行うにとどまらず、それらの確認等により得られた結果を踏まえて、業務の遂行について、安全衛生確保の観点から必要な範囲を超えて、具体的な指示等や厳格な稼働時間の管理を行う等の対応を行っている場合は、指揮監督関係を肯定する方向に働く事情となり、労働者性を肯定する要素となり得るものと考えられること。

(イ) 関係請負人の労働者等の場合(偽装請負への該当性)
上記①~③のような行為が、安全衛生確保の観点から行われる、関係作業者の健康状態の単なる確認や、体調不良時の応急対応や休憩等の勧奨、任意の健康相談やその結果を踏まえた助言等にとどまる場合は、直ちに、偽装請負と判断されることはないと考えられること。
他方で、例えば、上記①の際に関係作業者が体調不良等を訴えた場合において、注文者・事業者等が、当該関係作業者が行う予定だった作業を、関係請負人の了解を得ることなく当該関係請負人の労働者である別の関係作業者に指示等をして作業に従事させる場合などは、区分基準告示に照らし、偽装請負と判断される要素となり得るものと考えられるため、留意する必要があること。

イ 安全衛生意識の啓発に関する事項

注文者・事業者等が、関係作業者の安全衛生確保の観点から、
① 交通安全や生活安全に関する一般的な対策や関係作業者が行う作業において発生するおそれのある業務上の災害やこれを防止するための対策について、資料やメール・動画等を使用して周知することにより関係作業者の意識啓発を図ること
② 実施する業務に関して、安全衛生上、注意すべき点が類似する作業を複数の関係作業者が行っている場合において、関係作業者の中から業務上の災害の防止を推進する役割を担う者(災害防止アンバサダー等)を本人の希望を踏まえて任命し、関係作業者全体における業務上の災害の防止に向けた気運向上を図るための活動を依頼すること
③ 業務に伴う安全衛生確保上必要な取組として、実施する業務に関連する者全員を参加者とする安全衛生大会を開催し、当該大会への参加を関係作業者に求めること
などを行うことがあるが、これらの場合においては、以下(ア)及び(イ)に留意する必要があること。

(ア) 業務委託等を受けた個人事業者等の場合(労働者性)
例えば、①について、資料配付やメール・動画の送信があくまで周知にとどまり、何らかの研修の受講等を義務付けるものではない、②について、災害防止アンバサダー等に対する活動依頼があくまで任意の協力を求めるものであり、それらの具体的な内容や遂行方法について指示等を行うものではない、③について、大会への参加があくまで任意の協力を求めるものであり、不参加に対する制裁を科すなどにより事実上参加が強制されるものではない、などの場合は、直ちに、労働者性を肯定する方向に働く事情とはならないと考えられること。
他方で、上記の範囲を超えて、研修の受講等を義務付けて不参加に制裁を科す、災害防止アンバサダー等の活動内容や遂行方法について具体的な指揮命令を行う、安全衛生大会への参加を義務付けて不参加に制裁を科す等の対応を行っている場合は、指揮監督関係を肯定する方向に働く事情となり、労働者性を肯定する要素となり得るものと考えられること。

(イ) 関係請負人の労働者等の場合(偽装請負への該当性)
上記①~③のような行為が、何らかの研修の受講等を義務付けるものではない、任意の協力を求めるものである、事実上参加が強制されるものではないなどの場合は、直ちに、偽装請負と判断されることはないと考えられること。
他方で、例えば、上記③の大会への参加が、関係請負人である請負事業主の指示等とは関係なく、注文者・事業者等から参加を強制されている場合などは、区分基準告示に照らし、偽装請負と判断される要素となり得るものと考えられるため、留意する必要があること。

(3) 業務に関係する物に関すること

ア 業務に使用する車両や機械・設備に関する事項

注文者・事業者等が、関係作業者の安全衛生確保の観点から、
① 関係作業者が関係作業者自身で準備した車両や機械・設備(以下「車両等」という。)を用いて作業を行う場合において、自ら、当該車両等が有効な安全装置を有しているか、又は作業の安全な実施に支障を及ぼす問題がないかを点検すること、又は点検の実施及び点検結果の概要の報告を求めること
② ①の結果、作業の安全な実施に支障を及ぼす問題を認めた場合に、作業の中止を指示すること、又は自らが準備した代替車両等を臨時的に使用するよう指示等すること
などを行うことがあるが、これらの場合においては、以下(ア)及び(イ)に留意する必要があること。

(ア) 業務委託等を受けた個人事業者等の場合(労働者性)
例えば、①について、関係作業者が使用する車両等が法令等で定められた規格を満たすものであることや、法令等で義務付けられた点検を実施したことを単に確認する場合や、②について、当該確認の結果、安全であることが確認できない場合に作業の中止を指示等する場合は、直ちに、労働者性を肯定する方向に働く事情とはならないと考えられること。
また、法令等で定められたものではない、自主的に定めた規格や点検事項の確認をする場合においても、①②の対応が専ら安全衛生確保の観点から行われ、業務上の災害を防止するために必要な指示等の範囲にとどまる場合は、直ちに、労働者性を肯定する方向に働く事情とはならないと考えられること。
他方で、業務の遂行方法等に関して、上記の安全衛生確保の観点から必要な指示等の範囲を超えて具体的な指示等を行う等の対応を行っている場合は、指揮監督関係を肯定する方向に働く事情となり、労働者性を肯定する要素となり得るものと考えられること。

(イ) 関係請負人の労働者等の場合(偽装請負への該当性)
上記①②の対応が専ら安全衛生確保の観点から行われ、業務上の災害を防止するために必要な指示等の範囲にとどまる場合は、直ちに、偽装請負と判断されることはないと考えられること。
他方で、例えば、上記②の代替車両の使用について、臨時的な措置ではなく、注文者・事業者等が請負契約とは別途の双務契約を結ぶことなく業務遂行に用いる車両等を関係作業者に恒常的に提供する場合などは、区分基準告示に照らし、偽装請負と判断される要素となり得るものと考えられるため、留意する必要があること。

イ 関係作業者の服装、装備、所持品に関する事項

注文者・事業者等が、関係作業者の安全衛生確保の観点から、
① 関係作業者の作業時の服装や装備、作業時に携帯する所持品について、作業の安全な実施の観点から一定のルールを設け、その着用等の状況を作業前に自ら確認するとともに、作業の安全な実施に支障を及ぼすと認められる場合には必要な指導・指示を行うこと
② ①の服装や装備、所持品について、作業の安全な実施の観点から自らが用意したものを関係作業者に無償又は割引価格で提供又は貸与すること
などを行うことがあるが、これらの場合においては、以下(ア)及び(イ)に留意する必要があること。

(ア) 業務委託等を受けた個人事業者等の場合(労働者性)
例えば、①については、関係作業者の服装や装備、所持品等が法令等の定めにより求められており、それらの着用等の状況を単に確認する場合や、当該確認の結果、安全であることが確認できない場合に必要な指導・指示をする場合は、直ちに、労働者性を肯定する方向に働く事情とはならないと考えられること。
また、作業者の服装や装備、所持品等の着用等が法令等の定めにより求められたものではない場合においても、専ら安全衛生確保の観点から同種の対応が行われる場合は、直ちに、労働者性を肯定する方向に働く事情とはならないと考えられること。
②については、注文者・事業者等が用意した物品を単に提供又は貸与することをのみをもって、直ちに、労働者性を肯定する方向に働く事情とはならないと考えられること。
他方で、上記の範囲を超えて、例えば安全衛生確保の方法が複数ある中で、業務上の災害を防止する観点からの合理的な理由がないにもかかわらず、注文者・事業者等が指定したものに限定する、提供又は貸与した物の使用を義務付けて不使用には制裁を科す等の対応を行っている場合は、指揮監督関係を肯定する方向に働く事情となり、労働者性を肯定する要素となり得るものと考えられること。

(イ) 関係請負人の労働者等(偽装請負への該当性)
安衛法令等の定めにより求められる服装や装備、所持品等の着用等の状況を単に確認する場合や、当該確認の結果、安全が確認できない場合に必要な指導・指示をする場合には、直ちに、偽装請負と判断されることはないと考えられること。
他方で、例えば、業務上の災害を防止する観点からの合理的な理由がないにもかかわらず、注文者・事業者等が請負契約とは別途の双務契約を結ぶことなく業務上必要な装備等(業務上必要な簡易な工具を除く。)を提供又は貸与するような場合などは、区分基準告示に照らし、偽装請負と判断される要素となり得るものと考えられるため、留意する必要があること。

ウ 各種保護具・安全用品に関する事項

注文者・事業者等が、関係作業者の安全衛生確保の観点から、
① 関係作業者が作業時に使用する保護具や安全用品(防寒具や安全靴、ヘルメット、反射ベスト、熱中症対策用品、車両安全のための車載装置、作業時に手を塞ぐことなく運搬可能な物入れ等)について、作業の安全な実施の観点から一定のルールを設け、その使用状況を作業中に自ら確認するとともに作業の安全な実施に支障を及ぼすと認められる場合には必要な指導・指示を行うこと
② ①の保護具や安全用品について、作業の安全な実施の観点から自らが用意したものを関係作業者に無償又は割引価格で提供又は貸与すること
などを行うことがあるが、これらの場合については、以下(ア)及び(イ)に留意する必要があること。

(ア) 業務委託等を受けた個人事業者等の場合(労働者性)
例えば、①については、
・ 保護具や安全用品が法令等の定めにより求められるものであり、それらの着用等の状況を単に確認する場合や、当該確認の結果、法令等で定める基準を満たさない物を使用していること等により安全が確認できない場合に必要な指導・指示をする場合
・ 安衛法第22条に基づき、保護具の着用等を周知したにもかかわらず、周知された内容が実施されていないことを確認した場合に必要な指導・指示をする場合
は、直ちに、労働者性を肯定する方向に働く事情とはならないと考えられること。
また、法令等の定めにより求められる保護具等でない場合や安衛法第22条に基づかない指導・指示である場合においても、専ら安全衛生確保の観点から同種の対応が行われる場合は、直ちに、労働者性を肯定する方向に働く事情とはならないと考えられること。
②については、注文者・事業者等が用意した物品を単に提供又は貸与することをのみをもって、直ちに、労働者性を肯定する方向に働く事情とはならないと考えられること。
他方で、上記の範囲を超えて、例えば安全衛生確保の方法が複数ある中で、業務上の災害を防止する観点からの合理的な理由なく、注文者・事業者等が指定したものに限定する、提供又は貸与した物の使用を義務付けて不使用には制裁を科す等の対応を行っている場合は、指揮監督関係を肯定する方向に働く事情となり、労働者性を肯定する要素となり得るものと考えられること。

(イ) 関係請負人の労働者等の場合(偽装請負への該当性)
例えば、
・ 安衛法令等の定めにより求められる保護具や安全用品の着用等の状況を単に確認する場合や、当該確認の結果、安衛法令で定める基準を満たさない物を使用していること等により安全が確認できない場合に必要な指導・指示をする場合
・ 安衛法第22条に基づき、保護具の着用等を周知したにもかかわらず、周知された内容が実施されていないことを確認した場合に必要な指導・指示をする場合
は、直ちに、偽装請負と判断されることはないと考えられること。
他方で、例えば、業務上の災害を防止する観点からの合理的な理由がないにもかかわらず、注文者・事業者等が請負契約とは別途の双務契約を結ぶことなく業務上必要な保護具や安全用品等(業務上必要な簡易な工具を除く。)を提供又は貸与するような場合などは、区分基準告示に照らし、偽装請負と判断される要素となり得るものと考えられるため、留意する必要があること。

(4) 場所に関すること

ア 構内における安全衛生のルールに関する事項

注文者・事業者等が、関係作業者の安全衛生確保の観点から、
① 自らが業務を行う作業場所における安全衛生を確保する観点から、当該作業場所において使用する車両等に関するルールを定める又は、当該場所で行う作業内容や現場の作業環境から必要となる安全器具、保護具、保護衣等を具体的に指定し、当該作業場所で作業を行う全ての関係作業者に対してその遵守を求めること
② 当該作業場所で作業を行う全ての関係作業者の安全衛生確保の観点から、①のルール等を遵守しない関係作業者に対し、改善を指導・指示し、又は当該指導・指示に従わない者に当該作業場所への入場を禁止すること
などを行うことがあるが、これらの場合においては、以下(ア)及び(イ)に留意する必要があること。

(ア) 業務委託等を受けた個人事業者等の場合(労働者性)
前記(3)ア~ウと同様の考え方が妥当すると考えられること。

(イ) 関係請負人の労働者等の場合(偽装請負への該当性)
前記(3)ア~ウと同様の考え方が妥当すると考えられること。

イ 構内における安全衛生のルールを遵守するための支援に関する事項

注文者・事業者等が、関係作業者の安全衛生確保の観点から、
① 構内における安全衛生上のルールとして関係作業者に使用することを求めている安全器具等について、関係作業者に提供・貸与すること。
② 作業に使用する機械について、特殊な仕様であったり、その現場に応じた調整がなされたりしており、関係作業者が自ら調達することが効率的でない場合において、関係作業者に対して当該機械を提供・貸与すること。
などを行うことがあるが、これらの場合においては、以下(ア)及び(イ)に留意する必要があること。

(ア) 業務委託等を受けた個人事業者等の場合(労働者性)
注文者・事業者等が用意した物品を単に提供又は貸与することをのみをもって、直ちに、労働者性を肯定する方向に働く事情とはならないと考えられること。
他方で、上記の範囲を超えて、例えば安全衛生確保の方法が複数ある中で、業務上の災害を防止する観点からの合理的な理由なく、注文者・事業者等が指定したものに限定する、提供又は貸与したものの使用を義務付けて不使用には制裁を科す等の対応を行っている場合は、指揮監督関係を肯定する方向に働く事情となり、労働者性を肯定する要素となり得るものと考えられること。

(イ) 関係請負人の労働者等の場合(偽装請負への該当性)
安衛法令等の定めに基づいて安全器具等の使用の指示を行う場合は、直ちに、偽装請負と判断されることはないと考えられること。
他方で、例えば、業務上の災害を防止する観点からの合理的な理由がないにもかかわらず、注文者・事業者等が請負契約とは別途の双務契約を結ぶことなく業務上必要な物品等(業務上必要な簡易な工具を除く。)を提供するような場合などは、区分基準告示に照らし、偽装請負と判断される要素となり得るものと考えられるため、留意する必要があること。

(5) 作業内容に関すること

ア 作業に影響を及ぼす安全衛生上の指導・指示に関すること

注文者・事業者等が、関係作業者の安全衛生確保の観点から、
① 関係作業者が不安全な行動をとっていたことから、当該関係作業者に対して注意喚起と不安全な行動の是正を指導・指示すること
② そのまま作業を継続した場合には業務上の災害につながる切迫した危険があるため、作業の一時中断等の措置を関係作業者に指導・指示すること
③ 作業の安全衛生に影響を与える工程の変更がなされていることを関係作業者が認識しておらず、そのまま作業を継続した場合には業務上の災害につながる切迫した危険があるため、作業の一時中断等の措置を当該関係作業者に指導・指示すること
④ 関係作業者に遵守することを求めている構内における安全衛生のルールを関係作業者が逸脱したため、ルールを遵守するように指導・指示することや、改善されるまでは構内での作業を行わせないこと
⑤ 自らの都合で、急遽、作業の安全衛生に影響を与える工程の変更を行う場合において、工程の変更に伴って新たに生じる危険を踏まえた対処方法等を関係作業者に検討させ実施させる時間的余裕がないときに、自ら当該関係作業者に対して対処方法等を指導・指示すること
などを行うことがあるが、これらの場合においては、以下(ア)及び(イ)に留意する必要があること。

(ア) 業務委託等を受けた個人事業者等の場合(労働者性)
専ら安全衛生確保の観点から、業務上の災害を防止するために必要な注意喚起や指導・指示の範囲にとどまる場合は、直ちに、労働者性を肯定する方向に働く事情とはならないと考えられること。
他方で、いずれの場合においても、業務上の災害を防止するために必要な範囲を超えて、作業の内容や遂行方法について具体的な指示を行う場合は、指揮監督関係を肯定する方向に働く事情となり、労働者性を肯定する要素となり得るものと考えられること。

(イ) 関係請負人の労働者等の場合(偽装請負への該当性)
専ら安全衛生確保の観点から、業務上の災害を防止するために必要な注意喚起や指導・指示の範囲にとどまる場合は、直ちに、偽装請負と判断されることはないと考えられること。
他方で、例えば、上記④で安全衛生上の観点で行わせなかった作業を、関係請負人の了解なく当該関係請負人の労働者である他の関係作業者に行わせることや、上記⑤の注文者・事業者等から関係作業者に対する指導・指示が恒常的に行われている場合などは、区分基準告示に照らし、偽装請負と判断される要素となり得るものと考えられるため、留意する必要があること。

イ 作業状況の監視・管理に関すること

注文者・事業者等が、関係作業者の安全衛生確保の観点から、
① 関係作業者の協力を得て、関係作業者の活動状況をリアルタイムで監視し、不安全な行動をとった場合や、不安全な状態で作業が行われている場合に注意喚起を行うこと
② 疲労の蓄積により業務上の災害を誘発したり、健康を害したりすることのないように、稼働時間の上限を設定し、当該上限を超えた場合に関係作業者に注意喚起を行うこと
などを行うことがあるが、これらの場合においては、以下(ア)及び(イ)に留意する必要があること。

(ア)業務委託等を受けた個人事業者等の場合(労働者性)
例えば、①について、監視及び注意喚起が専ら業務上の災害を防止するために必要な範囲内で行われるものである場合や、②について、稼働時間の上限があくまでも目安であって、関係作業者本人の自己管理を促すための注意喚起にとどまり、これを超えないよう積極的に管理することまでは行わない場合は、直ちに、労働者性を肯定する方向に働く事情とはならないと考えられること。
他方で、①において業務上の災害を防止するために必要な範囲を超えて、個々の作業に係る作業方法や作業手順について監視や注意喚起が行われる、②において、関係作業者の業務上の災害や健康障害を防止するために必要な範囲を超えて稼働時間の上限管理を行っている等の対応を行っている場合は、指揮監督関係を肯定する方向に働く事情となり、労働者性を肯定する要素となり得るものと考えられること。

(イ) 関係請負人の労働者等の場合(偽装請負への該当性)
監視及び注意喚起が専ら業務上の災害を防止するために必要な範囲内で行われるものである場合や、あくまで関係作業者本人の自己管理を促すための注意喚起にとどまる場合は、直ちに、偽装請負と判断されることはないと考えられること。
他方で、例えば、上記の注文者・事業者等から関係作業者への注意喚起が、業務上の災害を防止するために必要な範囲を超え、労働者に対する業務の遂行方法に関する指示に当たるようなものである場合などは、区分基準告示に照らし、偽装請負と判断される要素となり得るものと考えられるため、留意する必要があること。

ウ 技術的な指導に関する事項に関すること

注文者・事業者等が、関係作業者の安全衛生確保の観点から、
① 自らが所有又は管理している機械装置の操作方法について関係作業者に技術指導を行うこと
② 注文した仕事の遂行途中で、新しい機械装置の導入があったため、当該装置の操作方法について関係作業者に技術指導を行うこと
③ 注文した仕事の遂行途中で、関係作業者の機械装置の操作が不適切であったため、技術指導を行うこと
などを行うことがあるが、これらの場合においては、以下(ア)及び(イ)に留意する必要があること。

(ア) 業務委託等を受けた個人事業者等の場合(労働者性)
専ら安全衛生確保の観点から、業務上の災害を防止するために必要な技術指導の範囲にとどまる場合は、直ちに、労働者性を肯定する方向に働く事情とはならないと考えられること。
他方で、いずれの場合においても、業務上の災害を防止するために必要な範囲を超えて、作業の内容や遂行方法について具体的な指示を行う場合は、指揮監督関係を肯定する方向に働く事情となり、労働者性を肯定する要素となり得るものと考えられること。

(イ) 関係請負人の労働者等の場合(偽装請負への該当性)
専ら安全衛生確保の観点から、業務上の災害を防止するために必要な技術指導の範囲にとどまる場合は、直ちに、偽装請負と判断されることはないと考えられること。
他方で、例えば、上記の注文者・事業者等から関係作業者への技術指導が、業務上の災害を防止するために必要な範囲を超え、労働者に対する業務の遂行方法に関する指示に当たるようなものである場合などは、区分基準告示に照らし、偽装請負と判断される要素となり得るものと考えられるため、留意する必要があること。

(6) 情報共有、情報伝達に関すること

ア 教育・研修、ミーティングに関する事項

注文者・事業者等が、関係作業者の安全衛生確保の観点から、
① 危険・有害な作業を開始する前に、一定の教育・研修を受講することを関係作業者に求め、当該教育・研修を修了するまで作業場所に入構させない又は作業を行わせないこととするルールを設けること
② ①の教育・研修の対象者を選定等するために、関係作業者の職務経歴や業務遂行能力等について情報提供を求めることや、関係作業者と面談を行うこと
③ 作業の安全な遂行に必要な情報を共有するため、関係作業者に対して、朝礼、作業開始前のミーティング等に参加することや安全関連情報を共有するためのアプリの利用を求めること
④ ③の情報共有を行うに当たって、必要に応じて、関係作業者等に対して助言、指導等を行うこと
などを行うことがあるが、これらの場合においては、以下(ア)及び(イ)に留意する必要があること。

(ア) 業務委託等を受けた個人事業者等の場合(労働者性)
例えば、教育・研修の受講が業務上の災害を防止する観点から業務委託契約等の締結のために必要な要件又は前提となっており、契約締結後においても、業務上の災害を防止するために必要な範囲を超えて、教育・研修に沿った個別具体的な作業方法を強制するものではない場合や、専ら安全衛生確保の観点から、朝礼、ミーティング等への参加を求める場合は、直ちに、労働者性を肯定する方向に働く事情とはならないと考えられること。
他方で、上記の範囲を超えて、業務を遂行する上で特定の教育・研修の受講を義務付けて不参加に制裁を科す、専ら安全衛生確保の観点であるとはいえない朝礼・ミーティング等への参加を義務付けて不参加に制裁を科す等の対応を行っている場合は、指揮監督関係を肯定する方向に働く事情となり、労働者性を肯定する要素となり得るものと考えられること。

(イ) 関係請負人の労働者等の場合(偽装請負への該当性)
教育・研修の受講が業務上の災害を防止する観点から請負契約締結のために必要な要件となっており、業務上の災害を防止するために必要な範囲を超えて、教育・研修に沿った個別具体的な作業方法を強制するものではない場合や、朝礼、ミーティング等への参加が事実上の強制ではない場合は、直ちに、偽装請負と判断されることはないと考えられること。
他方で、例えば、上記のミーティング等が、関係作業者の所定労働時間外に実施され、注文者・事業者等により請負事業主の了解なく関係作業者の業務時間が延長されている場合などは、区分基準告示に照らし、偽装請負と判断される要素となり得るものと考えられるため、留意する必要があること。

イ 注意喚起に関する事項

注文者・事業者等が、関係作業者の安全衛生確保の観点から、
① 交通安全の啓発を行うなど、作業時の不安全行動を防止するための注意喚起を行うこと
② 交通事故を防止するため、アプリ等を活用して、関係作業者に対して交通事故多発場所や天候に係る情報を発信することや、関係作業者の運行状況をリアルタイムで監視して速度超過や高速道路誤進入などが疑われる場合などに注意喚起を行うこと
などを行うことがあるが、これらの場合においては、以下(ア)及び(イ)に留意する必要があること。

(ア) 業務委託等を受けた個人事業者等の場合(労働者性)
これらについては、単に情報発信や注意喚起にとどまるものである場合は、直ちに、労働者性を肯定する方向に働く事情とはならないと考えられること。
他方で、上記の範囲を超えて、運行経路等について具体的な指示を行う等の対応を行っている場合は、指揮監督関係を肯定する方向に働く事情となり、労働者性を肯定する要素となり得るものと考えられること。

(イ) 関係請負人の労働者等の場合(偽装請負への該当性)
単に情報発信や注意喚起にとどまるものである場合は、直ちに、偽装請負と判断されることはないと考えられること。
他方で、例えば、上記の注文者・事業者等から関係作業者への注意喚起が、業務上の災害を防止するために必要な範囲を超え、労働者に対する業務の遂行方法に関する指示に当たるようなものである場合などは、区分基準告示に照らし、偽装請負と判断される要素となり得るものと考えられるため、留意する必要があること。

(7) その他の支援に関する事項

注文者・事業者等が、関係作業者の安全衛生確保の観点から、
① 関係作業者が業務上の災害に被災した場合に備え、自らが保険料を負担の上、関係作業者を損害保険に加入させること
② 関係作業者が第三者に損害を与えた場合に備え、対人・対物の保険契約を準備し、関係作業者に対して活用を推奨すること
③ 請け負った作業に伴い、関係作業者が第三者に損害を与えた場合における第三者との代理対応、緊急の救済措置等を行うこと
などを行うことがあるが、これらの場合においては、以下(ア)及び(イ)に留意する必要があること。

(ア) 業務委託等を受けた個人事業者等の場合(労働者性)
一般的には①~③に掲げる対応を行ったことのみをもって、直ちに、労働者性を肯定する方向に働く事情とはならないと考えられること。
他方で、関係作業者に注文者・事業者等自らが指定する損害保険や対人・対物保険に入らない場合に制裁を科す等の対応を行っている場合は、指揮監督関係を肯定する方向に働く事情となり、労働者性を肯定する要素となり得るものと考えられること。

(イ) 関係請負人の労働者等の場合(偽装請負への該当性)
注文者・事業者等が対人・対物の保険契約を準備し、関係請負人に対して活用を推奨する場合は、直ちに、偽装請負と判断されることはないと考えられること。
他方で、例えば、民法(明治29年法律第89号)、商法(明治32年法律第48号)その他法律に規定された事業主が負うべき責任を注文者・事業者等が負う場合などは、区分基準告示に照らし、偽装請負と判断される要素となり得るものと考えられるため、留意する必要があること。

安全センター情報2025年8月号