企業による嫌がらせ:石綿製造業者が活動家を提訴/Union Aid Abroad APHEDA, 2024.9.30
今年初めにインドネシア・アスベスト禁止ネットワーク[INA-BAN]はインドネシア最高裁で歴史的な勝利を収め[下の記事参照]、その結果、すべてのアスベスト製品に健康警告ラベル表示を義務付ける判決が下されたが、インドネシアのアスベスト屋根材メーカーは、最高裁に訴訟を起こした人々全員を損害賠償で裁判にかけようとしている。
LION[労働安全衛生地域イニシアティブ・ネットワーク]インドネシアは、労働者の健康と安全の権利を擁護し、インドネシアにおけるアスベスト禁止を求める主要なキャンペーン団体である。
繊維セメント製造業者協会(FICMA)が消費者保護団体LPKSM Yasa Nata Budiの管理陣及びアスベスト禁止ネットワークを相手取って起こした不法行為訴訟は、すべてのアスベスト屋根材に危険警告ラベル表示を義務付ける、5月に下された画期的な最高裁判決を覆そうとする試みである。
FICMAは、白石綿は有害化学物質の貿易に関する情報交換を規定する国際条約であるロッテルダム条約のもとでリストに搭載されていないことから、危険なものとしてラベル表示する必要はないと主張している。
ロッテルダム条約のもとでの白石綿(クリソタイル)のリスト搭載は、これまで主にロシアなどの主要輸出国である少数の国々によって、20年近く阻止されてきた。同条約へのリスト搭載には、現在、全締約国の合意を必要としている。条約締約国167か国の大多数がクリソタイルのリスト搭載を支持しているにもかかわらず、2006年以降、わずか1か国から10か国によってリスト搭載が妨害され続けている。
オーストラリア及び、アメリカ合衆国、EU、日本、韓国など69の国と地域では、すべての種類のアスベストが禁止されているが、アジアの多くの地域では依然として広く使用されている。インドネシアは世界第3位の輸入国であり、東南アジアでは最大である。
FICMAは、警告ラベルは彼らの収益の「機会損失」をもたらすと主張する。彼らは多額の金銭的損害賠償を求めて提訴している。
LIONインドネシアのディレクター、スルヤ・フェルディアンは、自分たちはこの訴訟に勝つと確信していると述べた。しかし、FICMAの訴訟提起が、インドネシアのアスベスト製造業者がLIONインドネシアのアスベスト関連疾患撲滅キャンペーンを阻止するために展開する戦略のひとつにすぎないことを認識している。
「FICMAによるYasa Nata Budiに対する訴訟は、われわれが規制を制定していないため、不当な標的となっている。これは最高裁判所の命令の実施を遅らせるためのもうひとつの時間稼ぎの戦略である」。
「われわれは最高裁で勝利した」とフェルディアン氏は語る。「しかし、裁判所の命令はまだ実行されていない。判決が効力を発揮するにはまだ時間がかかりそうだ」。
オーストラリアの法律事務所、モーリス・ブラックバーンは、ジェームズ・ハーディー社がノン・アスベスト製品に移行する以前から、同社のようなアスベスト企業と闘う経験を豊富に積んでおり、5月の最高裁判決を勝ち取るためにインドネシアの弁護団に助言を行い、追加の証拠も提供することができた。モーリス・ブラックバーンの代表であるジョナサン・ウォルシュは、今回の訴訟でもLIONインドネシアの弁護団を支援している。
フェルディアンは、インドネシアにおけるアスベストの使用を中止させるための闘いは、アスベスト業界からの挑戦にますます直面するようになっていると述べた。
「インドネシアの公衆衛生と安全のために行っていることが妨害される可能性があることを警戒している」。
フェルディアンは、LIONインドネシアが他のインドネシアの団体やAPHEDAとともに、地域及び国際的にすでにアスベストを禁止している国々と広大なネットワークを構築していることの重要性を訴えた。
「われわれは、自分たちだけで活動できるとは思っていない。FICMAは資金とリソースを豊富に持つ巨大な組織だ。彼らに対抗するには、地域及び国際的なネットワークが必要である。人間性には、人間性の喪失に対抗する力がある」。
インドネシアの地元弁護士が主導した最高裁での勝利は、Union Aid Abroad APHEDAの支援とモーリス・ブラックバーン法律事務所による無償の支援を受けた。LIONの訴訟は、ムハマッド・ダリスマンがコーディネートするインドネシア・アスベスト禁止ネットワーク(INA-BAN)、独立した市民団体である消費者保護研究所及びAysa Nata Budi財団からも支援されている。
裁判所の勝利を受けて、ジャカルタ保健局は住宅でのアスベスト使用を禁止した[次の記事参照]。
LIONインドネシアはまた、ウエストジャワ州の地元バンドンで、新しい商業用及び住宅用建築物におけるアスベスト使用を禁止させることにも成功している。
安全センター情報2024年11月号