非難されるジョンソン・エンド・ジョンソン-International Ban Asbestos Secretariat(IBAS), 2022.5.9
「ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)は、アスベストに汚染されたタルクを原料とするベビーパウダーを販売し、その製品のメーケティングにおいて意図的に黒人女性をターゲットにし、不正行為を認めようとせず、そのタルク製ベビーパウダーを世界中で販売し続けることによって、消費者と投資家の信頼を裏切り、数百万の人々の権利を侵害している。」
4月に、ジョンソン・エンド・ジョンソンの大株主であるアメリカの投資顧問会社バンガード・グループのCEOに対して、アメリカのアドボカシー団体を代表する活動家たちがそう書き送った。この4頁の手紙は、J&Jが使用している人種差別的で偽善的なマーケティング方針に対する認識を高めるためのいくつかの取り組みのひとつであり、同社は2020年にアメリカとカナダでアスベスト含有タルクを原料とするベビーパウダーの販売を中止した後も、他の地域では販売を続けている。
2022年4月28日に開催されたJ&Jの年次総会の議題には、株主に認識することを求めた決議案があった。
「複数の団体や機関から社会的公正と公衆衛生上の問題が提起されていることから、J&Jがタルクを原料とするベビーパウダーの世界的な販売を中止するよう提案する」。
決議案10を議題にすることは、J&Jの弁護士が証券取引委員会[SEC]に「会社の議決権行使からこの提案を除外するよう」何度も異議を申し立てたため、手ごわい挑戦となった。幸い、SECは同社の主張を退け、アクティビスト・インベスター・プラットフォーム「Tulipshare」による、同社のダブルスタンダードに関する株主投票の要求を承認した。
株主に決議案10を説明するために「Tulip-share」が提出した2分間のビデオは、会社の仕様明細をすべて満たしているという事実にもかかわらず、J&Jによって拒否された。その代わりに年次総会の場では、音楽もなく、顔もない、簡素化された録音が示されただけだった。
この決議案に対する支持は、「株主はこの問題による世界的な潜在的継続的リスクを認識すべきである」と指摘した議決権行使助言会社「Institutional Shareholder Services」と、J&Jが「タルクを原料としたベビーパウダーの販売をすべてやめることは、会社の評判へのダメージをある程度修復するのに役立ち、北米以外の市場での訴訟、罰金や刑罰の可能性を回避できるだろう」とコメントした別の助言会社「Glass Lewis」から表明された。
株主の15%の投票しか得られず、決議案10は採択されなかった。この結果について、この決議案を提出したイギリスの活動家投資家プラットフォームの創設者であるアントワーヌ・アルグージュは、「これはもはや政治や法律、消費者の問題ではなく、株主の問題だ」と述べた。
彼の意見に、メゾテリオーマUKのCEOで[イギリス]国民保健サービス[NHS]の中皮腫看護士コンサルタントのリズ・ダーリソンも共鳴した。
「株主が、彼らのタルク製パウダーに消費者保護の普遍的基準を設けなくても問題ないと考えているように見えるのは、信じがたいことである。ジョンソン・エンド・ジョンソンのタルク製ベビーパウダーは、危険か危険でないかどちらかであり、われわれの理解とこれまでの証拠に基づいて、誰もアスベストに汚染されている可能性が少しでもあるボディパウダーを使うべきではない。私たち看護師は、(とくに女性の)中皮腫患者に、タルクやタルクを原料にした化粧品を使ったことがあるかどうかを定期的に尋ねるようになっている。私たちは、患者がこの問題について弁護団に相談することをお勧めする」。
イギリスでは20年以上前にすべての種類のアスベストが禁止されているという事実にもかかわらず、毎年5千人のイギリス人が中皮腫、肺がん、卵巣がん、石綿肺などのアスベスト関連疾患で亡くなっている。アスベスト被害者支援団体フォーラムUK会長のジョアン・ゴードンは、世界的なブランドが21世紀のいまなお、顧客の命を弄んでいることに愕然としている。
「忙しいイギリスの家族が、アスベスト繊維を含む可能性のある製品を使用することによってもたらされるリスクについて、十分に情報を得たうえで選択する立場にあるだろうか? ジョンソン・エンド・ジョンソンは、多くの人々が信頼する老舗企業だが、北米の人々の健康を優先し、海外の人々の健康をないがしろにするという嘆かわしい行動をとっている。人命は聖なるものだ。もし、同社がすべての顧客の健康を守ることができない、あるいは守ろうとしないのであれば、政府の行動が求められる」。
アメリカの非営利運動団体である「Until Justice Data Partners」の創設者/事務局長であるモニカ・アンセル博士は、2022年5月4日に「Tulipshare」のツイッターで流された映像で、ジョンソン・エンド・ジョンソンを強く非難した。
「彼らは文字どおり私たちの命に値段をつけ、私たちががんになることが費用対効果に優れていると判断した。また、人種差別がビジネスに悪いことを彼らに示すために、ある種の現金評価額を示さなければならないという事実が腹立たしい…このことで誰も同社に激怒しないのは非常に憂慮すべきことだ。株主がこれに激怒しないこと。よくもまあ私の命に値段をつけてくれたものだ…」。
「Environics Trust」(インド)のスリーダー・ラマムルチは、株主投票の結果に激怒した。
「10億人を超えるインド人のいのちは、このアメリカの巨大企業の利益と比べれば、何の価値もない。アメリカ企業が南半球の人々の命にどのような価値を置いているかを示す、きわめて明確なシグナルである。ジョンソン・エンド・ジョンソンのタルク製ベビーパウダーに使用による死亡を非白人に外注するというダブルスタンダードを、株主が容認していることは明らかである。インドの公衆衛生・消費者運動家は、この侵略を前にして受け身でいるわけにはいかない」。
[一部省略]タルク製ベビーパウダーの世界的リコールは、個々人の命を尊重することを、消費者にも株主にも強くアピールすることになるだろう。
http://www.ibasecretariat.org/lka-johnson-and-johnson-condemned.php