『日雇いの百貨店』港湾、労働災害頻発の理由は別にある 2021年5月26日 韓国の労災・安全衛生

仁川北港の薄暗い船舶中で日雇い労働者が働いている。/仁川一般労組港湾支部

23日に、釜山港湾運送労組所属の組合員Aさんが、釜山新港での業務を終えて退勤中に42トン・リフト車に敷かれて亡くなった。23歳の青年非正規労働者のイ・ソノさんが、先月22日に平澤港で業務中の災害で亡くなって一ヶ月目だ。

政府はイ・ソノさんの慌ただしい死で批判の世論が起きると、17日に五大港湾合同点検を行ったが、現場の労働者は点検方法と範囲で、実効性に疑問を提起している。論議に背中を押されて行われる一回だけの点検でなく、根本的な対策が急がれるという指摘だ。

大多数の労働者が日雇いで雇われ、安全教育もまともに受けられずに業務に投入される状況を改善するのが先だということだ。

「14年目の日雇い、日当10万ウォン」白熱灯を頼りに真っ暗な船の中で働く

仁川港で働く民主労総所属の組合員が集まって作った仁川港民主労組協議会が25日、仁川港3埠頭の入り口で記者会見を行い、港湾労働者の安全のための根本対策作りを要求した。ヤードトレーラー(YT)技師として働く仁川地域一般労組YT支部のイ・テギョン支部長は、「問題は無分別な日雇い使用」で、「事故は起きるしかない構造」と主張した。YT技師は韓進・ソンクヮンのような荷役会社の下請け業者に所属する労働者で、船舶からコンテナを降ろして、野積場に移動する業務を行なう。イ・テギョン支部長は「38人の人員が必要だと言うと、業者は31人を使って、残りは日雇いで補充する」が、「日雇い労働者には安全教育をしない」と話した。

仁川新港で日雇いとして14年目の仁川一般労組港湾支部のチョン・チャンファン支部長にとって、退職金は考えることもできないことだ。毎日毎日、違う荷役会社と一日契約を結んで働いた後、10万ウォン程の日当を手にする。チョン支部長は「危険なところで働くので事故率が高くならざるを得ないが、荷役会社は産災保険料率が上がるとして産災を申請せず、公傷で処理する」と話した。チョン支部長は原木・屑鉄・石炭・セメントなど、船が積んできた品物をコンテナから取り出す仕事をする。フォーククレーン、リフト車といった大型重機がいつも動いている真っ暗な船内で、重機の電気と高いところでかすかに光る白熱灯を頼りに働くことが多いという。ヘッドライトや懐中電灯は支給されない。

労働者は政府の合同点検の実効性に疑問を表わす。仁川港の労使政共同人材管理委員会の事務局は、14日に「海洋水産部が港湾の覆面巡回査察を強化し、現場では安全チョッキ・安全靴・安全帽を着用し、職員の統制に協力するようにお願いする」という文書を日雇い労働者に配った。

公共輸送労組貨物連帯本部のチョ・チョンジェ仁川地域本部事務局長は「覆面査察と言っているが、既に全部知っているようだった。」「事前にすべての準備をして、ワゴン車に乗って港湾を一回り、さっと廻って行った」と言った。彼は「安全の死角地帯に置かれた非正規労働者、社内下請け労働者、それにも組み込まれない特殊雇用労働者がどんな環境で働いているか、どんな困難に直面しているかを尋ねるべきだった」と皮肉った。

仁川北港の薄暗い船舶中で日雇い労働者が働いている。/仁川一般労組港湾支部

重大災害が発生した釜山新港の背後団地は政府の点検対象に含まれない

政府の五大港湾点検計画を批判する声が出てきた。貨物連帯本部のキム・クンヨン仁川地域本部長は、「政府は現在の港湾を中心に点検をするが、港湾だけを点検しても事故を防ぐことはできない。」「釜山新港の事故は、埠頭から離れたコンテナの野積場で起きた」と話した。

政府の点検対象は五大港湾(釜山港・仁川港、麗水・光陽港、蔚山港、平澤港)と、そこでコンテナ荷役作業をする23の運営会社だ。23日に釜山新港でリフト車に敷かれて亡くなった釜山港湾運送労組のAさんが働いていた場所は、政府の合同点検の対象ではない。Aさんは事故当日、釜山新港の熊東背後団地にあるペンスター新港物流センターで働いた。Aさんはコンテナの中の品物を取り出す作業をしていたが、港湾内の日雇い労働者がしている業務と同じだ。危険な作業空間であることは明らかなのに、釜山新港熊東地区にあったために今回の点検対象には含まれない。残りの港湾の状況にも違いはない。

背後団地の物流業者の雇用構造は、日雇い労働者が溢れる港湾と同じだ。釜山港湾運送労組の関係者は、「事故が起きた背後団地の物流業者のほとんどが、正規職の人数を最小化し、70~80%の人員を日雇いで使っている」と説明した。この関係者は「本来、物流業者が背後団地に入ってくるためには入札を経なければならないのに、入札当時に計画した雇用創出計画は全く実行されていないと見るべきだ」と主張した。

背後団地の物流・製造業者の場合、港湾公社に賃貸料を出して該当の敷地を利用するが、入住するには、建設期間と全体運営期間中の正規職・非正規職の雇用創出計画を作成して提出しなければならない。今回、災害が発生したペンスター新港物流センターは、2012年5月から釜山新港熊東地区に入ってきた。

釜山港湾運送労組の関係者は「釜山港のような場合は、労使政が共同で運営する安全常設協議体があって、現場点検をするのに、背後団地にはこのようなシステムも構築されていない」と指摘した。

雇用労働部の関係者は「重大災害発生事業場(ペンスター新港物流センター)に対しては、該当支庁が重大災害発生による監督を別途に実施する。」「点検人員の限界もあって、先ず点検をして、結果によって(追加点検などを)する予定」とした。

2021.05.26 毎日労働ニュース カン・イェスル記者

http://www.labortoday.co.kr/news/articleView.html?idxno=202989