労災から生き残っても苦痛は続く 2021年5月24日 韓国の労災・安全衛生
22日は、光州の廃棄物総合リサイクル処理工場で、一人で仕事をしていて破砕機に吸い込まれて亡くなった故キム・ジェスン(当時26才)さんの1周忌だ。父親のキム・ソニャンさんは、真相究明を要求して断食座り込みをしなければならなかったし、加害者の産業安全保健法違反裁判は、28日に宣告公判が開かれる。この1年間で現場はどれくらい変わっただろうか。生き残った被災労働者は、苦しさから抜け出せないと訴える。産災の後遺症で二次疾病を病んでいる労働者は、追加の傷病療養給付が不承認とされ、自費で治療を受けなければならない境遇に陥った。「重大災害処罰などに関する法律」(重大災害処罰法)の施行を前にして、ある製鉄所は安全担当部署を拡充したが、現場の人員はむしろ減っている。監視者は改善を訴えているが、その履行責任は完全に現場労働者の負担だ。現場の声を反映して耳を傾ける労災予防・補償制度が必要だという声が大きくなっている。
労働者の生命は自ら守ろう
光州・全南労働安全保健守り(準)は21日、光州市庁で「労働者の健康が危険だ」をテーマに、現場労働者証言大会を開催した。キム・ソニャンさんを始め、光州・全南地域で働く被災労働者・労組活動家が参加した。
バスの労働者が事故の被害者になることは珍しい。交通事故を起こしたり事故に遭っても、直接的な身体の被害に繋がるケースは多くない。それでは、産災の被害とは距離が遠い労働環境で働いているのか。証言大会に参加したキム・グァンソクさんによれば、全南のある地方自治体は、三日働いて一日休む勤務体系を採用している。バス労働者は一日に10~11時間運転する。キムさんは、「週52時間上限制を破ることはないが、労働がきつく、非常に疲れた状態で運転する。」「乗客の安全を脅かすこのような労働環境は、重大災害処罰法が施行され、産業安全保健法が強化されても改善されていない」と話した。バスの現場に適合した労災予防対策が必要だというのが彼の考えだ。
チョン・ウォンチャンさんは現代三湖重工業で26年間働いた。彼のからだは動く総合病院だ。昨年3月に腰椎椎間板脱出症で産災を申請したが、退行性という理由で不承認とされた。再び、腰椎捻挫の診断で申請し、3ヶ月間休養した。今年の初めに尺骨衝突症候群で再び手術して、4ヶ月目の療養をしている。最近、勤労福祉公団が療養期間を打ち切ろうとしたため、直ぐに療養決定期間の延長を申請した。彼は「なにも回復していないのに、公団が療養期間を打ち切ろうとしている。」「被災労働者は正しく十分な治療受けるべきなのに、公団は療養期間を短くすることだけに血眼になっているようだ」と話した。同じ会社で働くKさんは、「身体の具合が悪くても、痛くても、産災とは知らずにずっと働いて、筋骨格系疾患で、手首・腕・肩を3ヶ月置きに手術して療養中」なのに、「担当の医師と公団は、痛いというのを『仮病』扱いして職場に復帰しろと言い、大学病院で再度診断を受けて、延長を承認された」と話した。彼は「労働者の味方だと思った公団と、療養期間延長のために争う方が、治療を受ける期間よりも苦しかった」と話した。
労災予防対策を企業に任せたのに「被災者を懲戒するポスコ、産災申請をするなと」
ポスコの労働者・ムン・ヒョンチャンさんは、重大災害処罰法の施行を前に現場で起こっている状況を説明して、ため息をついた。ポスコでは重大災害が絶えず、今年の国会・環境労働委員会の産災聴聞会で叱責された。安全費用1兆ウォンを投じて、専門担当組織を新設するという予防対策を明らかにしたことがある。対策はどのように履行されたか。ムンさんは、「別途の予算を使ったのではなく、今の予算で設備や施設を改善をする時に、『安全』という言葉を入れて執行するやり方」で、「現場は作業員が足りず、危険作業に二人一組も組めない状況なのに、安全担当部署の人員を増員して、現場の人員を引き抜いている」と耳打ちした。彼は「安全担当者は、現場の問題点を指摘して自分たちが改善するのではなく、その責任を現場の労働者に押し付ける。」「災害が発生すれば、被災者と上級者を懲戒するシステムを運用するが、これは産災の申請をするなという意味だ」と主張した。
2万2900ボルトの電線を扱う配電電気員は、韓国電力の協力業者で働く間接雇用の労働者だ。これらは筋骨格系疾患の他にも、最近、脳心血管疾患・皮膚癌・白血病などの新しい疾病に次々と罹っている。昨年の国政監査でこの問題が俎上に上がり、来月、韓電と労働者が協議体を設けて、配電労働者の実態調査をする。電気員労働者のイ・ヨンチョルさんは、「特殊健康検診を受けられたら良いし、電磁気波の発生と労働者の健康不安の関連性などが明らかになれば良い。」「政府と与党が、危険な現場を必ず変えるという覚悟で、現場労働者の被害の声を心に刻んでくれたら良いのに」と話した。
2018年に、鎮海-巨済の海底ガス管工事に投入されたアルゴン溶接労働者が、集団でヒ素に中毒して問題になった。当時の被害者二人が証言大会に出てきた。ヒ素中毒の治療をして、うつ病と適応障害まで経験することになって、追加の傷病承認を受けながら3年目の治療を受けている。最近、痒みとじんましんの症状が深刻化して、追加の傷病を申請したが、公団は不承認とした。「昔、足の爪の水虫で皮膚科の診療を三回程受けたことがあることを理由に、過去に類似の症状があったとして不承認とした。」「うつ病と痒みなどで夜もまともに寝られないほどの苦痛を受けているのに、治療を打ち切れと言われて腹が立つ」と訴えた。
証言大会を参観した故キム・ジェスンさんの父親のキム・ソニャンさんは、「皆さんと同僚の安全を守るために、危険な現場が改善されるように強く闘って欲しい。」「安全な職場のためには、労働者が頑張らなければならない」と、繰り返し訴えた。
光州・全南地域の労働・市民・社会団体は、産業現場の労働実態を点検・監視し、予防対策を提案する目的で、労働安全保健守り(準)の設立を準備している。7月に公式にスタートする予定だ。
2021年5月24日 毎日労働ニュース チェ・ジョンナム記者
http://www.labortoday.co.kr/news/articleView.html?idxno=202953