船舶の溶接中に墜落、機械に挟まれ、父母の日を飲み込む産業災害 2021年5月9日 韓国の労災・安全衛生

父母の日だった8日、チャン・某さんが墜落事故にあって亡くなった現代重工業蔚山造船所の作業現場に、チャンさんの靴などが置かれている。/金属労現代重工業支部提供

父母の日と子供の日を前後して、40代の労働者三人が相次いで事故で亡くなった。安全装備がなかったり、キチンと作動しないなど、安全管理が不十分だった結果だ。これらはいずれも小学生などの幼い子供がいたり、高齢の両親を抱えていて、周辺の悲しみが大きかった。

金属労組現代重工業支部と現代重工業社の説明を総合すると、父母の日だった8日の午前8時40分頃、現代重工業の下請け業者の職員のチャン・某(40)さんが、蔚山9ドックの原油運搬船の床に倒れているのを別の労働者が発見して知らせた。チャンさんは夫人との間に7才の息子がいる。25才だった2006年から現代重工業の社内下請け業者に入って働き、K社には今年2月に入社した。彼は原油運搬船の原油貯蔵庫の上層部で作業をしていて墜落し
たと推定される。チャンさんは救急隊によって近くの病院で護送されたが、午前9時30分頃に死亡した。

金属労組現代重工業支部は、墜落位置と目撃者の説明などを総合すると、Aさんが溶接をしている間に、新しい溶接棒を取りに行って墜落したと推定される。チャンさんが作業をしていた原油貯蔵庫のタンクの高さは13mで、溶接棒がある船の甲板はこれより高い位置にある。チャンさんが溶接棒を取りに行くには、原油貯蔵庫の上から降りて、階段を登っては降りる垂直の梯子を使わなければならない。垂直の梯子に安全設備は特になかった。

労組はチャンさんの死亡が、複雑な元・下請け構造とも関連があると主張した。下請け業者のK社は、先月28日から今月31日までの一ヶ月間、船舶建造の『溶接・取り付け』作業をすることで現代重工業と下請け契約を結んだ。金属労組現代重工業支部のキム・ヒョンギュン政策企画室長は、「仕事中心に短期契約をするせいで、形式的には元請けが提供する安全教育などを受けることになっているが、実際には元請けが定めた期間内に仕事を終えようとすれば随時に出勤しなければならず、安全も後回しにされやすい。」「重大災害が発生する度に、複雑な下請けの雇用構造を変えることを要求しているが、相変らず改善されていない」と指摘した。チャンさんは現代重工業の工程計画によって、その時その時に指示を受けて働き、父母の日の土曜日に出勤をしたのも、これと無関係ではない。現代重工業側は「安全管理の強化に最善を尽くしたが、不慮の事故が発生して非常に残念だ。事故の収拾に万全を期す一方、関係機関の調査に積極的に協力し、再発防止に最善を尽くす」と話した。

同じ日の夜、現代製鉄唐津製鉄所で、15年目の正規職職員のキム・某(44)さんが、加熱炉の設備機械を点検する過程で亡くなった。彼には9才と11才の二人の子供がいて、両親も健在だ。会社と金属労組側の説明を総合すると、現代製鉄で管理者の業務を担当するキムさんは、『機械から異音が出ている』という午前の勤務組からの報告を伝えられて、夜9時30分頃、安全保護具を着用して単独で現場に行って、戻ってこなかった。キムさんの同僚が彼を探しに現場に行って、既に死亡していると想われるキムさんを発見した。上下に動く機械の固定ビームと稼働ビームの間に、キムさんの頭が挟まれて死亡したものと見ている。

金属労組のパク・セミン労働安全保健室長は「二人一組でしなければならないのに、人員不足などの理由で一人で出て行き、機械を停めないまま点検して事故が起きた。」「安全確保用の鉄条網(防護網)を設置しにくい場所ではないのに設置されておらず、事故現場と同じような別の工場の類似の設備でも、慣行的に機械を停めないまま点検をしていたと想われる」と話した。現行の規定では、建設機械などを整備したり清掃・検査する時は、労働者に危険が及ぶおそれがあれば機械の運転を停止しなければならない。金属労組は作業指示書とは違って、点検の時に問題発生の場所を確認するには、作動中の機械に入らざるを得ない状況に置かれるケースがあると指摘した。現代製鉄は「事故が発生した日常点検は、設備に異常があるかを肉眼と耳で確認するので危険度は低いと判断し、単独で点検をするようにしていた。」「事故の再発防止のために最善を尽くす」とした。

6日には、始興のある自動ドアの部品工場で、自動ドアを修理しようとしていた40代の労働者のKさんが、部品製作機械に挟まれて亡くなった。人が入ると自動で停まるよう設計された機械だったが、Kさんが機械に入った時は、この機能が『手動』になっていて、機械が停まらなかった。彼も夫人との間に息子三人と娘一人の四人がいる父親だったが、終に職場から家族の元に帰ることができなかった。

2021年5月9日 ハンギョレ新聞 シン・ダウン、オ・ユンジュ、キム・グァンス、キム・キソン記者

https://www.hani.co.kr/arti/society/labor/994458.html