任祥赫(イムサンヒョク)院長インタビュー「職場で健康な権利が必要」 2021年5月5日 韓国の労災・安全衛生

労働者と医療によって連帯する緑色病院の任祥赫院長

「全国民医療保険になり、労働者も病院に来ることがそれほど難しくありません。問題は、職場の中で自分の健康を守ることができる権利があるのに、これがよく守られていません。週52時間働く権利、健康診断を受ける権利、有害化学物質について教育を受ける権利などです。病院に行けずに健康権がないのではなく、職場での健康な権利が弱いということです。」

先月28日、ソウルの中浪区の緑色病院で会った職業環境医学専門のイム・サンヒョク緑色病院院長(写真)の話だ。民主化運動が真っ盛りだった1984年に医大に入学した彼は、自分だけのやり方で社会と出会った。職場の労働者と『医療』で連帯するということだった。九老医院院長、労働環境健康研究所所長などをしながら、30年を超えて労働者と会ってきた。

イム院長は、昔に較べて大規模事業場の労働者の健康権への認識は、非常に高くなったと言った。彼は「1980~1990年代だけ見ても、大企業でも中小企業でも、安全にはみな鈍感だった。造船所に行くと、溶接の労働者が80度の高温で働いて、安全靴が鉄板で焦げ付くのに、半ズボンにランニングシャツで働いていた。」「今は安全服を与えなければ働かない。現場は似ているが、文化が変わった。事業主も、昔のようにすれば問題になるということを知り、大きな労組があって問題の解決もする」と話した。

問題は小規模の事業場だと言った。下請けと派遣で行われる仕事、外注化の過程で危険まで外注化される。イム院長は「安全問題がアウトソーシングされて、零細な事業場に産業災害が多く、病気も多いのが現在の特徴」と言った。

イム院長は、自身が経験した自動車鋳物工場の事例を紹介した。「鋳物工場にはホコリが一杯です。換気施設を上側に付けておくと、ホコリが舞い上がって鼻に入るので、その工場は換気施設も下にしたので良かったんですよ。ところが、そのホコリが拡がって降りて行った下の階では、非正規職の労働者が、ゴム手袋に一般のマスクを使ってホコリを箒で掃いています。本当に労働者のためなら、そこにも措置をするべきのなのに、していません。このように危険を外注化させるのです。」

昨年末からポスコ製鉄の労働者の職業性癌が問題になった。これを契機に職業性癌119が結成され、製鉄所とプラント労働者を始めとして、3Dコンピュータ、ジュエリー労働者など、色々な職種の労働者の職業性癌の発病の事実に光を当てた。イム院長は「韓国は1970年代から重化学工業が発展し、この時、記録されていない、とても多くの発癌物質が使われたと推定される。」「癌というのは40年程の時間を置いて現れるので、最近になって問題になる」と言った。

有害化学物質の吸入による肺癌と診断される者が多いが、一部の企業は『喫煙など不規則な生活習慣が原因』だと主張する。イム院長は「産業災害の申請者がタバコを吸ったとしても、長時間有害物質を吸入した作業環境で肺疾患が発生したという事実はひっくり返せない。」「喫煙などの生活習慣は、病気を加速化させる要因に過ぎず、それが病気のすべての原因だとは見られない」と言った。続けて「それでも多くの企業が産業災害が発生すれば、労働者のせいにする」とし、「これは産災保険という相互扶助の性格にも合わない。(病気になったことを労働者のせいにするのなら)企業は産災保険料を出す必要もない」と話した。

一部の労働者は職場で病気になっても、不利益を心配して産災申請を敬遠する。イム院長は「これ迄に彼らが事業主と結んできた関係が、とても垂直的であったことを端的に見せてくれる」として、「産災を申請しも不利益はないと予想はしても、まだ恐れがあるようだ」と言った。

イム院長は、小さな事業場に対する行政指導が活発でなければならないと指摘した。彼は「零細な事業場には労働部がほとんど関与していない。したとしても、行政力が及ぼす影響がとても弱い。」「死亡事故が起きたり病気になることが明らかなのに、そのままだ。例えば、日を決めて、鍾路でもどこでも、零細事業場が密集している所に行って、教育もして、指導することもできるはずなのに、残念だ」と話した。

緑色病院は最近、ジュエリー業界をはじめとする都心の製造業労働組合と了解覚書(MOU)を結んで、労働者の健康診断を実施している。イム院長は「実際、これらの労働の現実はよく知らなかった。労働者でもなく、事業主でもない状況で、月給も現金で受け取って働くなど、勤労基準法の外側にあるという事実を知って、びっくりした。」「働く人の傍にある病院として、今は大企業の労働者よりも、零細労働者や下請け労働者、プラットホーム労働者とどのように連帯するのかを考えている。これは源進レーヨン被害労働者が闘って作った緑色病院の使命だ」と言った。

2021年5月5日 京郷新聞 コ・ヒジン記者

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