今の災害調査報告書では労災(産災)は予防できない 2021年4月16日 韓国の労災・安全衛生

安全保健公団主催で15日に韓国労総会館で行われた重大災害予防のための政策討論会で、共に民主党のイ・スジン議員が挨拶をしている。/チョン・キフン記者

スクリーンドアの修理・点検労働者の産業災害死亡事故を止めたのは、2016年のソウル地下鉄・九宜駅でのキム君の死だった。ソウル市は「九宜駅事故真相究明委員会」を設け、「地下鉄非正規職の死亡災害の解決と安全社会のための市民対策委員会真相調査団」は、構造的な事故原因を明らかにした。不良施工と経営効率化、安全業務の外注化といった構造的な原因が明らかになり、安全要員がソウルメトロに直接雇用された後、事故は徐々になくなった。2013年の聖水駅、2015年の江南駅と、既に二人のスクリーンドアの修理・点検労働者が、業務中の災害で死を迎えた後のことだ。

これに関して民主労総のチェ・ミョンソン労働安全保健室長は、「江南駅事故の当時、公団の災害調査報告書に示された再発防止対策は、スクリーンドアの整備・修理のためのマスターキーを別の箱を作って駅事務所に備え付けるということで、ソウルメトロはマスターキーの箱の管理を誰がするのかを巡って揉めていて、実質的な管理は死角地帯に置かれていた」と話した。一方、九宜駅の事故に関しては、「市民参加方式で、災害調査報告書を公開し、再発防止対策も総合的に提示した」と比較して見せた。それだけ災害調査報告書の内容と質が、事故予防に少なくない役割をするということだ。

「重大災害処罰などに関する法律」(重大災害処罰法)の制定で、労災予防に関する議論が拡大する中で、重大災害調査報告書が労災予防という本来の趣旨を達成するには、災害調査期間の拡大と調査機関の専門性向上、災害調査報告書の全面公開など、様々な措置が必要だという主張が出てきた。

災害調査の90%が3日以内

共に民主党のイ・スジン、チャン・チョルミン議員の主管で、重大災害予防のための政策討論会が開催された。討論会は安全保健公団が主催し、韓国労総が後援した。

2020年に安全保健公団・産業安全保健研究院が発注した『災害調査報告書の質的向上のための方案研究』を共同で実施した仁済大のチョ・フマク教授(保健安全工学と)は、「災害の調査期間が7日以内なので、事故の発生後の単純な現場調査だけが行われ、災害原因と予防対策は、単純に作らざるを得ないという意見が多かった」として、災害調査期間の延長を注文した。この研究報告書によれば、2019年の重大災害調査報告書の740件を分析した結果、災害調査期間が3日以内のケースが90.2%(668件)を占めた。

チョ教授は、安全保健公団が作成した災害調査報告書が労働部の事業主の処罰資料として利用され、災害原因と対策といった法的な争点になりそうな事案は最大限に排除されるという構造的な原因も指摘した。安全保健公団の研究委託の結果、技術的な管理原因を挙げた調査は、621件中の1.6%(10件)に止まった。

重大災害処罰法の実効性は、災害報告書の公開と共に

労働界と専門家たちは、透明な災害事実と重大災害調査報告書の公開に声を合わせた。

セミョン大のカン・テソン教授(保健安全工学科)は、「重大災害を含む産業災害を減らすために、今までの災害原因に関する深層的な分析と対策に関する情報は切実だ」とし、「災害原因が公開されて初めて、現場で利用できる」と強調した。

韓国労総産業安全保健本部のイム・ジェボム室長は、「重大災害処罰法による重大産業災害の発生事実を公表することは、社会的な警戒心を呼び起こすための措置」で、「『公表することができる』という曖昧な表現の代わりに、施行令の制定過程では、必ず公表する方向で制定されるべきだ」と主張した。重大災害処罰法の13条には、雇用労働部長官は重大産業災害に関して、その発生事実を『公表することができる』とされている。

経総のイム・ウテク安全保健本部長は、「公団レベルで調査権限を持つのか、十分な調査期間、人材を持つのかについては異議はない。」「但し、勤労監督官の専門性の確保、質的な向上については言及がないようだ」と指摘した。

2021年4月16日 毎日労働ニュース カン・イェスル記者

https://www.labortoday.co.kr/news/articleView.html?idxno=202369