二倍多い『体内毒性』・・・・移住労働者が更に苦しむ 2021年3月30日 韓国の労災・安全衛生
ウクライナ出身の移住労働者A(34)さんは、一般のゴム手袋だけを使って臭いが鼻を刺す有機溶剤に触らなければならない。2013年の末から、楊州のある車両部品工場で働いてきたAさんは、この有機溶剤に自動車の部品を漬ける業務を行っている。Aさんはこの物質が何か、キチンとした説明を聞いたことはないが、危険は体で感じている。触れた時に火傷をしたことがあり、手と足は皮膚病になった。社長は会社内の移住労働者にだけ、この有機溶剤扱う業務を指示している。Aさんは保護装備を支給して欲しいと社長に要求したが、拒否された。
Aさんのように移住労働者が現場で内国人の労働者より二倍以上も深刻に有害物質に曝露しているという研究結果が出た。
産業安全保健研究院が最近公開した『有害物質曝露事業場の外国人労働者の健康脆弱性評価』(パク・カヨン、イ・ギョンウン)報告書を見ると、特殊健康診断の結果を基に、年齢・業種・性別などが同じ条件の移住労働者と内国人労働者の、ジメチルホルムアミド(DMF)への曝露レベルを比較した分析結果が報告されている。DMFは急性中毒を呼ぶ代表的な有機溶剤で、2006年に釜山のある皮革業者で働く中国出身の労働者が、DMFを扱う業務で、電撃性肝炎によって死亡した事例もある。
移住労働者の有害物質曝露濃度
資料:産業安全保健研究院
黒:内国人労働者(703人対象)
赤:移住労働者(220人対象)
*体内の有害物質・ジメチルホルムアミドのレベルを測定する尿中NMF濃度の平均
分析の結果、2016年基準で、DMFを使う事業場で働く移住労働者(772人)のDMF曝露レベルを測定する尿中NMF濃度の平均は6.85㎎/lで、内国人労働者(1502人)の平均2.79㎎/lの2.5倍に達した。検出された数値が危険基準値を超過する比率も、内国人労働者は2.98%であったのに比べて移住労働者は10.28%で、三倍を越える。
2016年と2018年に特殊健康診断を受けた全員を対象に行った追跡調査でも、同様な結果が出た。移住労働者220人の尿中NMF濃度の平均は、2016年は7.93㎎/l、2018年は7.82㎎/lを現わし、内国人労働者703人の2016年の平均3.56㎎/l、2018年の平均2.44㎎/lに比べて、2年とも二~三倍高い数値が出た。韓国労働安全保健研究所のキム・ジョンス職業環境医学専門医は、「移住労働者は有害物質と直接に接触する業務を主に担当しているので、全般的に内国人よりも有害物質に多く曝露していると推定される」と話した。
健康診断を受けにくい事業場で働く移住労働者など、集計されない有害物質曝露事例が多いとも指摘された。抱川のある野菜農場で約6年間、農薬の散布作業をしてきたネパール出身の労働者が、昨年、不妊の判定を受けた例もあった。抱川移住労働者相談センターのキム・タルソン代表(牧師)は「有害物質に備えて、マスクだけを支給したり、それさえしない所が多い。」「政府が移住労働者の疾病の産業災害申請を援助し、有害物質取り扱いに関する管理・監督にも積極的にも取り組むべきだ」と話した。
2021年3月30日 ハンギョレ新聞 パク・ジュンヨン記者