事業場における労働者の健康保持増進のための指針一部改正-コラボヘルスの推進明示などマイナーな改訂、2020年末改正の方が重要(2021年2月8日)
2021年2月8日に事業場における労働者の健康保持増進のための指針が一部改正された(同日付け健康保持増進のための指針公示第8号)。改正後の指針全文は別に示した。
今回の改正のポイントは、2月1日に開催された労働政策審議会第136回安全衛生分科会に提出された資料によると、以下のとおり。配布された資料には、新旧対照表も含まれている。
○事業者と医療保険者とが連携した健康保持増進対策がより推されるよう、基本的考え方に、コラボヘルスの推進が求められていることを記載した。
○健康保持増進措置の検討に当たって、法に基づく定期健康診断の結果等を医療保険者に提供する必要があること及びそのデータを医療保険者と連携して事業場内外の複数の集団間のデータと比較して取組の決定等に活用することが望ましいすることを記載した。
〇個人情報の取扱いについて、医療保険者から定期健康診断に関する記録の写しの提供の求めがあった場合に、事業者が当該記録の写しを医療保険者に提供することは、高齢者の医療の確保に関する法律(昭和57年法律第80号)に基づく義務であるため、第三者提供に係る本人の同意が不要であることを記載した。
具体的には、以下のとおりである。
①「1 趣旨」の事業場外支援の活用の例の記載を、「必要に応じて労働衛生機関、医療保険者又は地域資源等」から、「積極的に労働衛生機関、中央労働災害防止協会、スポーツクラブ、医療保険者、地域の医師会や歯科医師会、地方公共団体又は産業保健総合支援センター等」に改訂。
②「2 基本的考え方」の第2段落の末尾に、「生活習慣病の発症や重症化の予防のために保健事業を実施している医療保険者と連携したコラボヘルスの推進も求められている。」を追加。
③「4 事業場ごとに定める事項」の「(2)イ(イ)労働者の健康状態の把握」に、「また、データヘルスやコラボヘルス等の労働者の健康保持増進対策を推進するため、労働安全衛生法に基づく定期健康診断の結果の記録等、労働者の健康状態等が把握できる客観的な数値等を医療保険者に共有することが必要であり、そのデータを医療保険者と連携して、事業場内外の複数の集団間のデータと比較し、事業場における労働者の健康状態の改善や健康保持増進に係る取組の決定等に活用することが望ましい。」を追加。
④「5 留意事項」の「(1)客観的な数値の活用」の末尾の「情報等」を「事業場内外の複数の集団間の健康状態を比較したデータ等」に改訂。
⑤「5 留意事項」の「(3)個人情報の保護への配慮」の末尾に、「なお、高齢者の医療の確保に関する法律(昭和57年法律第80号)第27条第2項及び第3項の規定に基づき、医療保険者から定期健康診断に関する記録の写しの提供の求めがあった場合に、事業者は当該記録の写しを医療保険者に提供しなげればならないこととされていることに留意が必要であり、当該規定に基づく提供は個人情報の保護に関する法律第23条第1項第1号に規定する「法令に基づく場合」に該当するため、第三者提供に係る本人の同意は不要である。」
概してマイナーにとどまっており、前回-2020年3月31日の改正の方が重要だったと言えよう。前回の改正内容を含めて、「OSH-MS(労働安全衛生マネジメントシステム)・RA(リスクアセスメント)の活用促進/労働安全衛生対策の原則に-第13次労働災害防止計画実際の状況、一層の推進に期待」も参考にしていただきたい。