韓国政府はコロナ19ワクチンと治療薬を、全世界の市民が 差別なく利用できるように『TRIPS猶予案』を支持しなければならない 2021年2月3日 韓国の労災・安全衛生
[共同声明]
健康と対案、健康権実現のための保健医療団体連合
私たちは2月4日に開催される世界貿易機構(WTO)のTRIPS理事会で、韓国政府が『貿易関連知的財産権に関する協定(Agreement on Trade-RelatedIntellectual Property Rights、以下TRIPS)に特定した条項の猶予案』を支持することを強く求める。
コロナ19パンデミックで全世界の人々が苦痛を受けている。この1年間で既に1億人以上の人々がコロナ19に感染し、200万人以上がコロナ19で死亡した。幸い、いくつかの医薬品が開発され、コロナ19を予防したり治療するのに使われるようになったが、開発された治療薬とワクチンは特許の独占のために封鎖され、国別に極めて不公平に使われる心配が大きくなっている。既に昨年、アメリカは自国の製薬会社・キリオドゥが生産したコロナ19の臨時治療薬・レムデシベルの3ヶ月分の生産量をほとんど独占している。特許によって、特定の会社だけがこれを生産・供給できるからだ。最近、ヨーロッパ連合(EU)も、ヨーロッパで生産されたコロナ19ワクチンに対して、輸出規制ができるように措置した。ワクチンもまた、特許の適用を受けるために可能だった。特許の独占によってワクチンの購買契約も民間製薬会社の優位に、非常に不公平に進行している。高所得の国は、既に自国民の2~5倍にもなるワクチンの購買契約をしているが、低所得国はただ一件の直接契約も結ぶことができていない。
世界保健機構(WHO)事務総長はこれについて、『破滅的な道徳的失敗の直前にあり、結局パンデミックを長引かせるだけ』と批判した。高所得国家は、2021年までに集団免疫水準のワクチン接種を受けることができるワクチンの購買契約に成功したが、低所得国は2023年にワクチン接種を始めることができると見通されている。これは決して低所得国だけに問題を発生させるのではない。国別のワクチン接種の不平等は、ウイルスの変異の危険が残っている状況で、感染病の危機を長期化させるものである。結局、先進国は自国優先主義でワクチンの購買競争を行ってはいるが、ワクチンを接種しても、感染病の危機に引き続き曝されるということである。このように差別と不平等、そしてパンデミックの実質的な解決を妨げる特許独占の問題を解決することが重要だ。コロナ19の医薬品に関する技術とノウハウを全世界が共有しなければならない。
このために昨年10月2日、南アフリカ共和国とインド政府がTRIPSの一部条項の適用と履行の猶予を提案した。この猶予案は、コロナ19関連の医療技術に限って、TRIPS協定の第2部の第1節(著作権)、第4節(産業デザイン)、第5節(特許)、第7節(未公開情報の保護)と、第3部による執行の一時的な猶予を提案している。もし、国際社会がWTOの段階でこの猶予案を採択すれば、コロナ19の予防、抑制、治療に関して、上の条項に関する義務は猶予され、特許の独占が大幅に緩和される。
この猶予案に対し、エジプト、ケニア、ボリビア、パキスタンをはじめとする100余ヶ国と世界保健機構(WHO)、国連エイズ計画(UNAIDS)、国際医薬品購買機構(UNITAID)などの国際機構と数百の市民社会団体が支持する意志を明らかにした。しかしコロナ19関連の技術開発の独占に有利な、アメリカ、イギリス、EUをはじめとする高所得国などが、猶予案に反対の意志を明らかにしたり、沈黙して、昨年10月と12月の二回のWTO・TRIPS理事会では、猶予案採択の合意に至ることができなかった。
私たちは、韓国政府もずっと沈黙しているということは、大きな問題だと考える。文在寅大統領は言葉では、国際舞台で数回、『ワクチンと治療薬開発のための国境を越えた協力』と『開発されたワクチンと治療薬の、人類のための公共財としての公平な普及』を主張した。しかし実際には、こうした重要な決定について沈黙することによって、コロナ19の医療技術が公共財として扱われず、自国優先主義と国際不平等を深化させることを幇助している。市民社会は、韓国政府が2月4日のTRIPS理事会において、TRIPS猶予案に対する支持の立場を明確にし、危機の前では各自の自助でなく、連帯と協力のための方法を市民社会と共に模索することを求める。守らない約束を濫発する大統領は、国民と全世界の市民からも不信と冷笑を招くだけだ。コロナ19ワクチンと治療薬が本当に公共財になれるように、文在寅大統領はTRIPS猶予案を支持し、ワクチン配分の正義についての意志を実践しなければならない。
2021年2月3日
健康と対案、健康権実現のための保健医療団体連合
健康社会のための薬剤師会、健康な世の中ネットワーク、民主労総、公共輸送労組、社会進歩連帯、市民健康研究所、医療民営化阻止と無償医療実現のための運動本部、人権運動ネットワーク「風」、知識研究所工房、進歩3.0、参与連帯、青年正義党、韓国YMCA全国連盟、韓国民衆健康運動
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