礼儀が呼んだ悲劇・・・・これでも重大災害法をためらうのか 2021年1月5日 韓国の労災・安全衛生
新年早々から現代自動車の非正規職労働者が『二人一組』が守られていない状況で、元請けの許可が必要なA等級危険作業に投入され、機械に挟まれて亡くなるという事故が発生した。特に現場では、現代車の役員が訪問するために突然指示された『礼儀用清掃』が惨事に繋がったと主張されている。清掃作業時には稼動を止めなければならない危険な設備が動いている中で、労働者にいつもしていない仕事をさせるなど、会社の無理な作業指示があったということだ。
4日、金属労組・現代車社内下請け支会と現代自動車などの説明によれば、蔚山一工場で働く協力業者の職員A(54)さんが、前日の午後1時半頃、屑鉄圧搾マシン周辺のスクラップの除去作業中に、機械に挟まれて亡くなる事故が発生した。Aさんたちはこの日、屑鉄圧搾マシン周辺の清掃作業を指示されたが、機械から落ちたスクラップを圧縮するリードシリンダーが垂直に動いた時、逃げることができずに挟まれて、事故が起きたと推定される。
雇用労働部・蔚山支庁はこの日、現代自動車と協力業者に『安全上の措置未履行』によって事故が発生した屑鉄圧搾マシン2号機などに、部分作業中止命令を出した。事故原因について現代自動車は「Aさんが、(元請けが)作業の許可を出した床以外の、安全フェンスで仕切られた設備の内側にまで入って清掃をして、事故が起きた」と主張した。しかし、労組は「作業者たちは、業務引継の時から設備の内側まで清掃することを会社(協力業者)から指示され、実際、設備周辺のフェンスには40~50㎝ほどの隙間があって、今までも作業が行われてきた」と反論した。現場を調査した蔚山支庁は、安全フェンス設置の問題については「未だ調査中」とした。
A等級の危険なのに『二人一組』ではなかった
Aさんが行った床のスクラップ除去作業は『単純清掃』ではなく、元請け(現代車)の許可が必要な危険作業だった。2020年12月11日に現代車が決裁した『安全作業許可書』を見ると、会社は、該当作業には挟まれ・一般安全事故などの危険要因があるとして、危険等級を『A』に分類していた。
しかし、事故当日、屑鉄圧搾マシン3台のスクラップの清掃をする作業は、亡くなったAさんと組長のBさんら三人が行った。屑鉄圧搾マシン一台当り一人ずつしか投入されなければ、二人一組作業さえできない。更に、正月の連休で一部の社員しか出勤していないため、設備点検担当者であるAさんも、普段したことがない清掃作業に投入された。現代車蔚山社内下請け支会のキム・ヒョンジェ前支会長は「現代車の作業規則上、二人一組作業が原則だが、正規職と違って非正規職は、この間も一人で作業をしてきた。」「作業時の安全を管理・監督をしなければならない元請けの安全チームの職員も現場にはいなかった」と話した。これに対して現代自動車は「二人一組作業の原則は、協力業者の業務標準書に明示されたもの」と、元請けの責任論に一線を引いた。
「現場役員が来る」と、前日に終わらせた作業を再度指示?
該当作業は、事故の前日に、既に二人の職員が終わらせた状況だった。しかし協力業者は事故発生の50分ほど前に、突然、再作業を指示した。現代自動車の重役が当日午後、工場を訪問することにしたというのが理由だった。
<ハンギョレ>が入手した協力業者の部長と組長Bさんの通話の内容を聴くと、この日の昼間12時42分、協力業者の部長は「今日2時頃、安全(部署)と重役が出てくるという。屑鉄圧搾マシンの所にスクラップが落ちて汚らしいから、ちょっと整理して欲しいと(現代車から)要請があった」と、作業を指示した。これにAさんは「昨日、(スクラップを)きれいに片付けておいた」と説明したが、部長はもう一度「2時頃に人が来る。その前に整理をお願いする」と指示した。これによって午後1時頃、同僚と作業に出かけたAさんは、30分後に、屑鉄圧搾マシンに胸を挟まれて倒れているのが同僚によって発見され、病院に運ばれたが息をひきとった。労組は「元請けの役員が訪問するという理由で、1時間前に急に作業指示がされ、安全規則を守るのはかなり難しかった」と指摘した。
これに、現代自動車の関係者は「3日には外部役員の蔚山工場訪問の日程はなかった。ただし、工事のために半月間中断されていた操業が、翌日(4日)に再開されるので、蔚山工場の役員が現場を点検しようとする状況だった」と話した。
連休の最終日にラインは稼動したが放置された安全
Aさんの命を奪った屑鉄圧搾マシンは、前日の清掃作業の時には作動していなかった。しかし、新年の連休最後の日だった事故当日は、現代車の次世代電気自動車(プロジェクト名『NE』)生産設備の導入のために稼動させた。現代自動車は来月発売予定の新しい電気自動車モデル『アイオニク5』の生産のために、先月19日から事故当日までの2週間、設備改善工事を施工したが、4日の操業再開を前に、この日は試験生産の段階でライン全体を稼動させた。
その過程で無理な作業指示が行われたが、Aさんの安全を守るものはなかったものと見られる。キム前支会長は「協力業者が安全な清掃作業のために、現代車の工場の中の屑鉄圧搾マシンの作動を中止する権限はない。現代車のスケジュールによって生産ラインは動くのに、下請け業者にどんな力があって、(清掃作業のために)現代車のラインを止めることができるか」と訴えた。
2021年1月5日 ハンギョレ新聞 専任/イ・ジェヨン記者、蔚山/シン・ドンミョン記者