重大災害企業処罰法、財界と政界のみじめな主張 2020年12月18日 韓国の労災・安全衛生

4月21日の重大災害企業処罰法制定摸索のための討論会で提案するキム・ヘジン全国不安定労働撤廃連帯常任活動家/ペク・スンホ記者

重大災害企業処罰法に対して財界と政界が三つの争点を提起している。義務規定が包括的だという点、因果関係推定条項、そして50人未満の事業場の施行猶予だ。実にみじめなだけだ。

重大災害企業処罰法を作る時、多くの人が色々な惨事を几帳面に検討した。「これがなければダメだろう」と考えられる内容だけを入れようとした。本当は必要だが今回はあきらめた内容もある。しかし、そのような過程は考えもせず、何とか企業の責任を軽くしようとする試みが本当に残念だ。

経営責任者の義務規定が包括的だ? そうではない。産安法と勤基法、製造物責任法などに具体的に指摘された義務条項が入っているだけだ。しかし、これでは解決されないことが余りにも多い。キム・ヨンギュン労働者が働いていた時に二人一組だったとすれば、たとえ身体がコンベヤーに巻き込まれたとしても、誰かが非常線を引かなかったのだろうか? しかし、それは産安法には具体的に規定されていない。

サムソン重工業は船の設計図を修正して、ジブクレーンと巨人クレーンの二つを危険な状態で稼働させた。そのクレーンに労働者数十人がぶつかって死んだりケガした時、そのクレーンの運営に関連する義務は、具体的に規定されていただろうか?

設計図を変えたのも、最高責任者として人員を少なく配置して二人一組ができないように請負金額を決めたのも、最高経営責任者だ。しかし、具体的に規定された条項だけではこれらに責任を問うことができないことがもっとある。最高責任者に対する義務を包括的に規定して、やっと多くの人が安全なこともある。むしろ、もっと包括的に規定できずに、産安法と製造物責任法などの具体的な義務条項を援用したことが残念なくらいだ。

これが包括的だと問題にするのなら、経営責任者の経営上の判断によって誰かが危険に直面する時、これをどのように防止するのかが話されなければならない。それに対する回答がないのなら、財界と政界の主張には何の意味もない。

因果関係推定条項が違憲だ? 九宜駅でキム君が死亡する前に同様な事故が二回も起きていた。そして、どれもが『作業者の過失』だった。今でも作業者の過失という理由で数多くの労働者が責任を抱え込んで死んでいく。九宜駅のキム君のように、キム・ヨンギュン労働者のように、遺族が立ち上がって真相を糾明して、社会的な力を集めて原因を明らかにしない限り、労働者は『作業者の過失』という理由を抱えて死んでいく。

今でも日常的な産災の隠蔽が蔓延している。麗水の大林産業団地の爆発事故やサムソン電子の二酸化フッ素漏出事故などでも、作業許可書を操作して、事故調査を妨害する行為が確認された。それなのに、産災や惨事で死亡した人たちの遺族が立ち上がって闘って、事業主の責任を明らかにしなければ処罰できないようにしておくのか? すべての情報を企業が独占しているのに?

『環境犯罪などの取り締まりおよび加重処罰に関する法律』にも、既に因果関係を推定する条項がある。あらゆる死に対して因果関係推定条項を適用しろというのではない。5年間に法違反の事実が3回以上確認されたり、事故に関する証拠隠滅と調査妨害などに対して、推定条項を適用しろというのだ。しかしこれもできないという。

違憲だけを言うのでなく、企業による産災と惨事隠蔽をどのように防止するのか、与党と財界は答えなければならない。

50人未満の事業場を猶予する? ほとんどの産災が50人未満の事業場で起こっている。50人未満の事業場の産災を減らすために、これまで、政府は何をしたのか問い糾したい。該当の事業場に金がないという理由で、産安法のあらゆる義務を免除してやり、そのまま放っておいた。そのために小さな事業場の労働者がずっと死に、ずっとケガをした。これはいったい誰の罪か。

本当に50人以下の事業場が心配なら、それに対する代案を出さなければならない。今のように何もせずに放っておくのなら、小さな事業場で働いているからという理由で、死んでも仕方ないと言っているのと同じだ。

光州の朝鮮ウッドのキム・ジェスン労働者が死亡した時、既にその事業場では、別の死亡事故があった。しかし雇用労働部は管理監督をキチンとしなかった。依然として使用者は大声で、遺族の涙を絞り出している。

誰がこれらに『死んでも良い』という信号を送るのか。50人未満の事業場にも施行し、企業が正しく危険要素を管理できるように、政府が支援策を出すことが道利だ。

重大災害企業処罰法を作った人たちは、色々な産災と災難、惨事を見て、ひょっとしてこんな目に遭うこともあるかと心配した。人の生命は大切だ。誰でも、企業の規模が小さかったり、下請けやまたは規定された内容がないという理由で死ぬようなことがあってはならない。法案条項の一つ一つが遺族と同僚たちの血の涙だ。財界と政治圏が一緒になって『違憲』だとか『包括的』だとか言えるような条項ではない。

10万人が請願した重大災害企業処罰法が、原案のまま通過することを切実に望む。本当に切実に望む。法案の通過が遅くなって、今も死んでいく誰かを考えると、とても苦しい。

2020年12月18日 労働と世界 キム・ヘジン全国不安定労働撤廃連帯活動家

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