2012年 石綿(アスベスト)全面禁止を達成、ノンアス社会実現に一歩-既存石綿・履行確保・分析方法等が課題

※違法な石綿(アスベスト)含有品の流通・輸入は珪藻土バスマットだけの問題ではない、全面禁止の履行確保は未解決の課題(2020.12.20)を別途まとめています。

厚生労働省は2020年11月27日12月4日12月15日に、石綿(アスベスト)含有品の流通と回収について公表した。今回は、堀木工所(大阪)のCARACOバスマット(LARGE、SLIM、COMPACT)及びエコ・ホリン(消臭・調湿材)、カインズの珪藻土バスマット等であった。これらはまさに違法な 石綿(アスベスト)含有品の流通であって、今回が初めてのことではなく、禁止の履行確保が過去の問題ではないこと提起している。あらためて、わが国のアスベスト禁止の状況と課題について認識してもらうために、バックナンバーから掲載する。なお、上記の最初の事例については、関西労働者安全センターが詳しい情報を提供しているので参照していただきたい。

厚生労働省は2012年1月25日付けで、300余の団体に宛てて、「石綿等の製造等の禁止に係る猶予措置の終了について」と題した、基発第0125第8号労働基準局長通達を発した。禁止の適用が猶予(除外)されていた最後の品目を削除する労働安全衛生法施行令等の一部を改正する省令(平成24年政令第13号)が同日公布され、3月1日に施行されることを知らせたものである。
これによってわが国は、法令上、全面禁止を達成したことになる。ここに至る経過を簡単にふりかえっておこう。

わが国の禁止導入経過

① 最初の禁止措置は1975年、石綿吹き付け作業を原則禁止とした、特定化学物質等障害予防規則の改正によるもので、同年10月1日から施行された。規制の対象は、石綿をその重量の5%を超えて含有するものであった。

② 1987年に石綿対策全国連絡会議が設立され、段階的全面禁止をめざす「石綿製品の規制等に関する法律案」が1992年に国会に提出されたが、廃案とされた。旧労働省は、「法案そのものについては、特段賛否の意を表明していない(…が…代替品の)安全性が確認されていない中では、慎重であるべきとの立場であった」(2005年8月26日「アスベスト問題に関する厚生労働省の過去の対応の検証」)。

③ 労働安全衛生法第55条の「製造等禁止」規定による禁止は1995年がはじめてで、「製造等禁止」物質を列挙した労働安全衛生法施行令第16条に、クロシドライト及びアモサイトを追加する改正が、同年4月1日から施行された。同時に、規制対象が、石綿をその重量の1%を超えて含有するものに拡大された。これは、業界がすでに禁止している実態を追認したものだった。

③ 2002年6月に当時の坂口力厚生労働大臣が「原則禁止」導入の方針を表明したことを受けて、同年12月12日の「石綿及び同含有製品の代替化等の調査結果の概要」(2002年12月号参照)公表に続いて、「石綿の代替化等検討委員会」を設置(2003年4月4日に報告書公表-2003年5月号)。前記調査により市場に存在していることがわかった石綿含有製品のうち、3種類(耐熱・電気絶縁板、ジョイントシート・シール材、石綿布・石綿糸等)を除き禁止するという趣旨で、①石綿セメント円筒、②押出成形セメント板、③住宅屋根用化粧スレート、④繊維強化セメント板、⑤窯業系サイディング、⑥クラッチフェーシング、⑦クラッチライニング、⑧ブレーキパッド、⑨ブレーキライニング、⑩接着剤を禁止する労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令(平成15年政令第457号)が2003年10月16日に公布され、2004年10月1日から施行された(2003年12月号等)。禁止するものを列挙したネガティブ・リストである。

④ 2005年夏のクボタショック直後の7月8日に当時の尾辻秀久厚生労働大臣が「(遅くとも)2008年までに全面禁止」方針を表明。経済産業省とともに関係業界を集めた「石綿の代替化に関する緊急会議」を招集するとともに、「石綿製品の全面禁止に向けた石綿代替化等検討会」を設置。同年12月27日に関係閣僚会合がまとめた「アスベスト問題に係る総合対策」では、「全面禁止を前倒しして、関係法令の整備を行い2006年度中に措置する」と記載。2006年1月18日に公表された前出の検討会報告を踏まえた労働安全衛生法施行令の一部改正(平成18年政令第257号、同年8月2日公布)が同年9月1日から施行された。禁止措置の適用が除外されるものを列挙したポジティブ・リストである。同時に、規制対象が、石綿をその重量の0.1%を超えて含有するものに拡大された。列挙されたもの以外はすべて禁止されるという意味で字義どおりの「原則禁止」であったが、厚生労働省はこれを「全面禁止」と称した。(2006年9・10月号等)

5年半かけて猶予措置を終了

しかし、厚生労働省がその後も適用除外製品等をなくしていくためのフォローアップを継続的に行ってきたことは大いに評価できる。2008年4月28日に公表された「石綿等の全面禁止に係る適用除外製品等の代替化等検討会報告書」(2008年6月号)では、適用除外製品等毎の「代替化等可能時期」が示され、結果的におおむねここに示された見込みに沿って、ポジティブ・リストから削除された。

2006年労働安全衛生法施行令改正時の適用除外製品等(ポジティブ・リスト)とそれらが禁止されてきた経過を、次頁表にまとめてみた。この間に行われた労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令及び施行通達は以下のとおりである。ここにあげた施行通達は関係団体宛てのもので、①~④は「石綿等の全面禁止に係る労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令の制定等についてというタイトルであった。それが、⑤では、「石綿等の製造等の禁止に係る猶予措置の終了について」に変わったわけである。

① 平成19年政令第281号、2007年9月7日公布。平成19年9月26日付け基発第0926008号。
② 平成20年政令第349号、2008年11月12日公布。平成20年11月26日付け基発第1126002号。
③ 平成21年政令第295号、2009年12月24日公布。
④ 平成23年政令第4号、2011年1月14日公布。平成23年2月4日付け基発0204第8号。
⑤ 平成24年政令第13号、2012年1月25公布。平成24年1月25日付け基発0125第8号。

残される既存石綿対策

しかし、この全面禁止の達成が、「アスベストのない社会」の実現を意味しているわけではない。

労働安全衛生法による禁止は、禁止施行の時点で「現に使用されているものについては…使用されている間」は禁止規定が適用されない。

残念ながら現在のわが国の法令で、所有者、事業者あるいは自治体や国、いずれに対してであっても、既存アスベストの除去・廃棄を義務付けたものはない。それどころか、既存アスベストがどこに、どのような状態で、どれだけ存在しているのかを、誰が、いつ(までに)把握するのか。また、何らかのかたちで既存アスベストの存在が把握されていたとしても、いつ(までに)どのように除去・廃棄するかの計画を立て、それまでの間安全に管理する計画を立て、実行するということを指示した法令も存在していない。

したがって、新たな輸入や使用が禁止されたとしても、過去わが国に約1千万トン輸入されたとされるアスベストは、その多くがまだ私たちの身のまわりに存在していて、新たな曝露とそれによる健康被害発生の可能性が残っていることを、決して忘れてはならないのである。

禁止の履行確保も重要

さらに、法令上の禁止措置は、その完全な履行が重要な課題であることも言うまでもない。この点では、とくに以下のことを指摘しておきたい。

① 近年わが国で問題になっている「再生砕石」へのアスベスト混入の問題は、不適切な建築物の解体等、不適切なアスベスト含有廃棄物の処理(分別)、不適切な「再生砕石」の製造という、いくつかのレベルにまたがる根深い諸問題の結果である。厚生労働省、国土交通省、環境省は、2010年に解体現場及び破砕施設にパトロール及び立入検査を実施するとともに、関係団体等に法令遵守を指示したが、現実にはいまもなお「再生砕石」へのアスベスト混入は続いていると考えられる。いずれにせよ継続的多面的な対策が必要とされるものの、0.1%を超えてアスベストを含有する「再生砕石」の流通は法違反であるという毅然とした姿勢を示す必要がある。

外国産鉱物-2009年に韓国で中国からの輸入タルクのアスベスト汚染が明らかになり、それが使用されたベビーパウダー、化粧品、医薬品の店頭からの撤去が命じられるなど大問題になって、他のアジア諸国でも社会問題になった。わが国では、1987年にベビーパウダーへの混入が社会問題となり、以降、化粧品等メーカーにおいて自主的にチェックされていると言われてきたが、本当に実効性が確保されているかどうか、この機会に確認することは重要であろう。タルクに限らず、セピオライト、ブルサイト等の鉱物にもアスベスト汚染の実例があり、外国では、バーミキュライトを原料にしたクレヨンや、中国から輸入した玩具(指紋検出キット等)のアスベスト汚染が社会問題になったことがある。

国内産鉱物-輸入されるものだけではなく、国内産鉱物にもアスベスト汚染はありうる。現在も大量に採掘されている蛇紋岩の事例は、一部の研究者の間ではよく知られ、報告もされているが、メディア等で取り上げられたことはほとんどない。おとなりの韓国では、蛇紋岩について2010年以降、橄欖(カンラン)石が2011年以降社会問題となり、それらが使用された学校の校庭やプロ野球球場の使用中止問題にもなっている。つい最近、苦灰岩(ドロマイト)のアスベスト汚染も取り上げられた。採掘場の労働者、周辺住民への健康影響も気がかりである。

汚染土壌・地域-採掘中止された後のアスベスト鉱山の操業により汚染された土壌・地域の除染対策は、鉱山があった国に共通の課題のひとつである。また、欧米ではアスベスト製品製造工場から出た廃棄物が捨てられた土壌・地域の(再開発等の)問題や、会社が無料で労働者や住民に提供したクズ製品等により汚染された土壌・地域もしばしば問題になっている。わが国でも同様の事例の報告はあるが、対策や除染がしっかりなされているかはこころもとない。
⑤ アスベストが捨てられた廃棄物処分場が住宅地等に再開発されることがあってはならないことは当然であるが、アスベスト含有廃棄物処理については、現状を正しく把握したうえで、一層安全を確保する対策の確立が以前から求められているところである。

石綿含有率の分析方法

履行確保ともかかわりもうひとつ重要なのが、石綿含有率の分析方法の問題である。厚生労働省はこれまでに、以下のような通達を示してきた。

① 昭和62年11月6日付け薬審2第1589号別紙「ベビーパウダーに用いられるタルク中のアスベスト試験法」
② 平成8年3月29日付け基発第188号「建築物の耐火等吹付け材の石綿含有率の判定方法について」
③ 平成16年7月2日付け基発第0702003号「蛇紋岩系左官用モルタル混和材による石綿ばく露の防止について」
④ 平成17年6月22日付け基発第0622001号「建材中の石綿含有率の分析方法について」
⑤ 平成18年8月21日付け基発第0821002号「建材中の石綿含有率の分析方法について」
⑥ 平成18年8月21日付け基安化発第0821001号「建材中の石綿含有率の分析方法に係る留意事項について」
⑦ 平成18年8月28日付け基発第0828001号「天然鉱物中の石綿含有率の分析方法について」
⑧ 平成20年2月6日付け基安化発第0206003号「石綿障害予防規則第3条第2項の規定による石綿等の使用の有無の分析調査の徹底等について」
⑨ 平成20年7月17日付け基安化発第0717003号「建材中の石綿含有率の分析方法に係る留意事項について」

しかし、これらの通達の内容及びそのバックボーンになっているJIS(日本工業規格)が、ISO(国際標準化機構)で準備されている国際規格と乖離しているという指摘がこの間なされてきたのである。

厚生労働省は重い腰をあげようとしてこなかったが、別件のような記事も出るにいたって、ようやく経済産業省が検討を開始するものと思われるので、注視していきたい。

法令上の全面禁止実現を、アスベスト対策基本法の制定、ノンアス社会実現への大きなステップにしていかなければならないだろう。

安全センター情報2012年4月号

本ウエブサイト上のアスベスト関連情報