アスベスト[石綿]被害(建設・工場・公害など)全国一斉ホットライン実施<12/17-18>0120-117-554~過去公表の石綿労災認定事業場検索できます

中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会が主催して毎年12月に実施されている全国一斉無料のアスベスト被害ホットラインが、12月17、18日実施される。

当全国安全センターと加盟する関係地域安全衛生センターが全面的に協力する。

一方、厚生労働省は、2019年度にアスベスト(石綿)による労災認定のあった事業場の情報を、12月16日付で公表した。公表情報によると、あらたに749事業場で石綿疾病の労災認定があった。全体では992事業場。公表事業場については、建設業以外(第1表として公表)は393事業場、建設業(第2表として公表)は599事業場だった。事業場公表はクボタショック直後の2017年7月から始まり、今回で16回目となる。近年は12月中旬に前年度の情報が公表されている。

全国一斉ホットライン実施(全国5拠点)

各地域別の相談ポイントは次の通り(面談相談対応。予約不要)で、フリーダイヤルからの相談は、各担当地域のポイントにつながる。

東日本(下記記載地域除く)

中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会本部 東京都江東区亀戸7-10-1 Zビル5F

北海道

北海道支部 かでる2・7(札幌市中央区北2条西7丁目)10階110会議室

中部、北陸、新潟、長野

東海支部 名古屋市昭和区山手通5-33-1 杉浦医院4階

関西、中国

関西支部 大阪市西区土佐堀1-6-3 JAM西日本会館5階

四国、九州

福岡支部 福岡市博多区博多駅前1-18-16 博多駅前1丁目ビル202号室

相談には、アスベスト・労災問題の専門スタッフ、弁護士があたりる。また、患者・家族をはじめ当事者も参加する。相談内容に応じて、医師、弁護士、環境測定機関なども紹介。

ホットラインの意義などについて以下、中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会によるプレスリリースより引用。

今回のホットライン開催の意義

(1)石綿ばく露作業による労災認定事業場の公表時期に合わせた全国一斉ホットライン(無料)

私たちは、毎年、厚労省の労災認定事業場情報公表の時期に合わせ、いまだに増え続けているアスベスト被害者の救済とアスベスト問題を世の中によく知ってもらうために、ホットラインを行ってきました。

昨年は、報道各社の皆様のご協力により、全国で約200件(2日間)の相談があり、その後のフォローで多くの労災認定(厚労省)、救済認定(労災以外。環境再生保全機構)も実現しました。改めて、アスベスト被害の広がりを実感するとともに、まだまだ、情報が患者と家族に届いていない現実を思い知らされました。実際に、関係機関の認定数などを検証すれば、2018年度までの死亡者では中皮腫で65.5%、石綿肺がん(国際的なコンセンサスが得られている中皮腫の2倍発生と推計)で11.1%の被害者しか公的制度の網に捕捉されていないことがわかります。

労災認定事業場公表は、同一事業場や類似事業場に働いていた被害者、遺族に、労災申請など補償、救済の大きなきっかけとなります。また、事業場の周辺に居住、通勤、通学していた人、労働者の家族に、自分や家族の病気がアスベストが原因ではないか知る大事な契機となります。

日常的に私たちに寄せられる対応の中には、「監督署で労災は難しいと言われた」、「救済給付を受給しているが労災の話は何もされなかった」というものが少なからずあり、そのような相談を労災認定に結びつける事案を積み重ねてきています。「被害者の立場に立ったホットライン」へのご協力をどうかよろしくお願いいたします。

(2)「患者・家族」の団体による電話相談

当会は2004年に設立された全国ネットワークを有する患者・家族の団体です。会員数は900名を越え、  全国に22の支部を置き、今後も会員数の増加に伴って新たな支部が設立される予定です。全国的に相談で確認された問題などを共有できるため、関係省庁などへの要請などに迅速につなげられます。一例を言えば、中皮腫患者は労災で支給される医療機関への交通費の支給が一定範囲に制限されるものでした、しかし、本会の要望を通じて現在では国内であれば制限なく、患者は治療実施医療機関を選択し、交通費が支給されることとなっています。また、再雇用後に発病した被災者の労災給付額が不当に下げられる仕組みを、昨年6月に通達を発出させて改善を図りました。
   私たちは相談対応の経験上、公的制度への救済支援に加え、「治療の選択」や「同じ境遇にある方との 交流」を求められる方が多くいることを知っています。当会は患者・家族だけでなく、医師や看護師をは じめとした医療関係者との連携を図っております。また、当初からの会員も多くおられ、これまでにさま ざまな患者・家族の皆様と交流をする中で培ってきたピア・サポートも行っています。当日の相談には中 皮腫患者本人も参加します。
   被災者救済や被害者支援に取り組む弁護士、医師と連携をしますので、相談内容によっては迅速に専 門家を含めて対応を検討できる体制もあります。

(3)企業別訴訟や国賠訴訟、建設訴訟で新たな成果

2014年10月に泉南国賠訴訟において最高裁が国の責任を認定する判決を出しました。その判決を基準に厚生労働省は全国の石綿製造業の元労働者を対象とした和解基準を発表し、2017年10月には和解の可能性がある労災認定者等に個別周知が開始され、提訴が続いています。また、建設アスベスト訴訟では10月に最高裁での弁論が開かれ、遠くない時期に国と建材メーカーの責任が判断されます。そのような状況のなか、広く関係のある被災者へ具体的かつ確実な補償と救済につなげていく必要があります。

(4)あきらめないで相談を!埋もれる被害の掘り起こしを!

アスベスト疾患(石綿肺、肺がん、中皮腫、良性石綿胸水、びまん性胸膜肥厚)の労災認定(労働者対象、厚労省)や救済認定(非労働者対象、環境再生保全機構・環境省)の認定件数は、明らかに、頭打ちとなっています。

アスベストに特有な悪性のがんである「中皮腫」による死亡者数は、毎年、徐々に増えているにもかかわらずです。
これは、補償、救済制度に問題があることを示しています。

第一に、肺がんの認定が少なすぎることです。そのことは、中皮腫の約2倍あるといわれる石綿肺がんの認定件数が、中皮腫以下であることに端的に表れています。認定基準が、石綿ばく露歴よりも、肺の中に残った石綿小体数などの医学所見に偏重した基準になっていることも大きな原因です。医学的所見を得るために必要な検査や病理解剖しなかったために認定が受けられないといった、被害者にとっては不当な悲劇が続いています。医療現場で、安易に、喫煙のせいにされたり、石綿による医学所見(胸膜プラークなど)が見過ごされるケースがあとを絶ちません。

第二に、石綿によるじん肺=石綿肺が、間質性肺炎など別の病名で片付けられているケースがあり、なかなか、労災申請に至らないケースがあります。

第三に、アスベスト特有の中皮腫が、労災認定よりはるかに低額の救済認定ですまされているケースが多いことです。救済認定では、遺族給付がなかったり、療養手当は非常に少額であるなど、経済的には労災認定よりはるかに不利です。ただ、中皮腫であればすぐに認定されるため、ばく露原因の調査が難しい場合など、労災認定までいきつかないケースが多いのです。実際、中皮腫の8割以上は職業ばく露によるとされているのですが、救済認定と労災認定の件数が、ほぼ同数になっているのです。

とにかく、アスベスト被害にかかわる疑問や質問がある方の相談をお待ちしています。
対象は、被害原因を問いません。労働現場、公害、家族ばく露などすべての石綿被害が対象です。

(相談例)

「病院や役所で相談しても、よくわからない」
「石綿を扱ったのがあまりに昔のことなので、なにをどう調べていいのか途方にくれている」
「労災申請したけれども、十分な調査がされず不支給処分を受けてしまった」
「建設業で働いていて肺がんになったため申請をしようとしたが、医者に石綿とは関係ないと言われた」
「同じ病気で治療している人の話をきいてみたい」
「夫が中皮腫の苦しさから自殺を図ってしまった。どうしたらいいかわからない。」
「被害の原因をつくった企業を訴えることはできないか」
「仕事でなったのに、労災が適用できないと言われている」
「環境再生保全機構によって、石綿健康被害救済法でとりあえず認定されたが、原因をもっと明確にしたいし、できるなら労災補償を受けたい」
などなど・・・・

過去すべての認定事業場の公表情報が検索可能

過去の石綿ばく露作業による労災認定事業場の情報を容易に検索出来るサイトを設置しています。

<代表的な石綿関連疾患>

・中皮腫

中皮腫は、アスベストが唯一の原因として発症する悪性腫瘍で、予後が厳しい疾病です。胸膜、腹膜、心膜、精巣漿膜に出現します。2015年以降、毎年1500名前後の死亡者が出ています。中皮腫の確定診断と、アスベストにばく露する作業に従事していた期間(アスベストばく露作業従事歴)が1年以上あれば、労災として認定されます。

・肺がん

アスベストが原因の肺がんは、中皮腫の2倍にあたる被害者がいるとされています。近年の国際的な動向では、4~6倍ほどになるという調査結果も出されています。一方で、中皮腫の死亡者数をもとに被害者数を推計した場合、2割程度の被害者しか公的な補償を受けられていません。医療関係者の認識不足や安易に「タバコが原因」とされてしまいがちです。肺がんの労災認定には、「喫煙の有無」は関係がありません。今年は医学的資料がない平成元年や平成4年の死亡者で、労災時効救済による認定もありました。

近年、患者や遺族が労災認定を求めて起こした多数の行政裁判で、国側が敗訴し労災と認められるケースが相次いでいます。私たち患者と家族の会では、国に対して、判決で示された内容に沿って認定基準を改正するよう強く求めています。

・石綿肺(アスベスト肺)

粉じんに長期間ばく露すると、肺に線維性の病変が起こり、呼吸困難などの症状が起こります。これを「じん肺」と言いますが、アスベストの粉じんを原因とするものについて、「石綿肺」と言います。この石綿肺は、しばしば肺気腫や間質性肺炎、肺線維症、COPD(慢性閉塞性肺疾患)などと診断され、見逃されているケースがあります。

・良性石綿胸水(石綿胸膜炎)、びまん性胸膜肥厚

良性石綿胸水は、アスベストのばく露により胸膜炎が起こり、胸腔に水がたまった状態を言います。場合によっては、胸水によって呼吸機能が低下します。診断が難しい疾病のため、労災の認定基準は設定されておらず、個別のケースごとに判断されます。

びまん性胸膜肥厚は、肺側と胸壁側の胸膜が癒着して厚くなっている状態を指し、癒着が広範囲で起こるため、呼吸困難を引き起こします。

これまでの石綿労災事業場公表の経緯

1)2005年7月29日
2)2005年8月26日
 ※被害者団体、マスコミから公表中断について厳しい批判の声
3)2008年3月28日<公表再開>
4)2008年6月12日
5)2008年10月31日
6)2009年12月3日
7)2010年11月24日
8)2011年11月29日
9)2012年11月28日
10)2013年12月10日 
11)2014年12月17日
12)2015年12月16日
13)2016年12月20日
15)2017年12月20日
16)2018年12月19日
17) 2019年12月18日
      
18)2020年12月16日<今回>「 平成17年7月の第1回公表以来、今回の令和元年度分で、延べ15,123事業場を公表」(厚生労働省)